失敗させない!!AIを使ったPoC【UX+AI戦略】
はじめに
AIを使ったシステム開発をする際、まずはPoCを行い、その結果を元に本開発に進むのが一般的です。
なぜなら、実用的なAIを開発できるかは「やってみないとわからない」からです。
PoCの目的はAIの実用性を確認することにあるため、失敗自体は問題ありません。
しかし、PoCの失敗がきっかけで社内のAI投資が止まってしまうこともあるため、できる限り失敗は避けたいものです。
ここでは、UXデザインと組み合わせることで、PoCを失敗させない方法をご紹介します。
PoCの失敗パターン
PoCが失敗するパターンには、以下のようなものがあります。
想定していた速度・精度が出ない
特定条件下ではうまく機能するが、それ以外では実用的な性能にならない
まだ改善の余地はあるが、PoCの期間内では実用的な性能が出なかった
これらの問題に真摯に取り組む場合、データを増やして再学習したり、アルゴリズムやモデルを変更したり、組み合わせたりする必要があります。
しかし、これらのアプローチは更なるリソースを必要とするため、承認を得るのが難しい場合もあります。
また、不確実性の高いプロジェクトでは、一定の期間内で成果が出ないと失敗とみなされ、お蔵入りになることも少なくありません。
よって、このようなPoCでは限られた期間でも明確な成果を出し、失敗させないことが求められます。
PoCを失敗させないために
ではPoCを失敗させないためにはどうすれば良いでしょうか?
ここで重要になってくるのがUXデザインです。
例を出して考えてみます。
とある顧客問い合わせChatBotを作るPoCをした結果、実用的な精度を得るためには回答に5分以上かかるChatBotが出来上がってしまいました。
これでは到底顧客に使ってもらえないため、PoCは失敗となります。
、、、本当にそうでしょうか?
このような「失敗」したPoCで作られたAIは全く使えないものなのでしょうか?
大抵の場合そうではありません。
当初の目的には遠く及ばないものの、多少は使えるものができているはずです。
前述したChatBotの場合、精度は十分に出ています。
問題は「ChatBotとしては」速度が遅すぎる点です。
ここでUXを考えてみましょう。
顧客の目的は「問い合わせに答えてもらうこと」です。
目的を達成する方法は何でも良いですが、応答が遅いとChatBotに期待される体験「リアルタイムで回答を得られる」を達成できないため、このサービスは使われなくなってしまいます。
ですが、ChatBotではなく、問い合わせフォームであればどうでしょうか?
質問をしてから5分後に回答をメールで得られれば、むしろ対応が早いサービスとして評価されそうではないですか?
このように、当初の目的を達成できなかったPoCでも、PoCの結果に合わせたUXを提案できれば、失敗ではなくなります。
そのため、AIを使ったPoCを実施する際は、事前にこのUXデザインと組み合わせた考え方を決済者に理解してもらっておくことで、失敗する確率を大幅に減らすことができます。
失敗させないPoCのその先
この「失敗させないPoC」のアプローチは決して結果を誤魔化すためのものではなく、AIを扱う上では最も合理的なアプローチです。
なぜなら、以下のような理由から、AIを扱ったサービスは性能よりもとにかく早くリリースすることが重要になってきているからです。
AI技術の民主化
AI自体よりもデータを重要視する傾向
AI技術の進化の速さ
つまり、OpenAI社をはじめとする各社が、高性能なAIをAPIとして公開しているため、AI技術自体で差別化することが難しくなってきています。
そのため、AIの性能を上げるよりも、とにかく早くリリースして顧客を獲得し、データを集め、データを元に他社に真似できないサービスを作ることが重要になります。
データや予算がないからAIを使ったサービスを作れないのではなく、作ってからデータや検証する予算・時間を作ることが重要なのです。
また、最近はAIの進化スピードが凄まじいため、最初は性能が低くても、新しいAIモデルがリリースされればそれを導入するだけで性能が上がっていきます。
これまでの話をまとめると、以下の図のようになります。
上図のサイクルをどれだけ早く回せるかが、近年におけるAIを使ったサービスを成功させるコツになります。
最後に
今回は失敗させないPoCの話と、その先のAIを使った新規サービスの戦略までまとめました。
近年のChatGPTをはじめとしたAIの進化は凄まじく、人にしかできなかった多くのことがシステム化できるようになったため、今まで考えもつかなかったサービスが多く生まれています。
AIを使ったシステム開発においては、UXデザインと組み合わせたPoCのアプローチが、失敗を避け、早期のサービスリリースを実現する上で重要な鍵となるでしょう。
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