受け入れられない辛い現実

話を聞いた後、
雲くんは会社に行くと言い、

「両家の両親には俺から話しとくわ。」
と言った。


私は病室に戻った。


後から聞いた話によると
雲くんは会社には行けず、
実家に帰り、
お義父さんの前で泣いていたという。


私は個室から大部屋に移ったので
カーテンで仕切られている
4人部屋の自分のベッドに戻った。


無事に産まれたのだろう、
幸せそうな声が聞こえる。


私はハンカチで口を押え、
声を押し殺して泣いた。


最初の頃は
一日の大半泣いていた。


赤ちゃんに母乳をあげる為、
最初に看護士さんにやり方を教わった後、
3時間おきに自分で母乳を出すのだけど
皆は授乳室。

私は配慮してくれたのだろう、
自分のベッドで練習した。


赤ちゃんに吸ってもらえない為、
娘の写真を見ながら
母乳を出すのだけど
なかなか上手くいかない。


少しだけ出せた母乳は容器に入れ、
NICUに看護師さんが
持って行ってくれた。


「自分で持って行ってもらっても
良いですよ。」

と言われたけど、
看護師さんにお願いした。


雲くんに赤ちゃんの様子を聞かれるので
朝と夜の2回は行っていたけど、
すすんで自分から会いに行かなかった。


我が子を見るのが辛かった。


いつどうなるか、分からない娘。

今日いなくなってもおかしくない状態。


それなら、いっその事
母性が芽生え、
娘への愛情が深くなる前に
いなくなってくれた方が
いいのかもしれない・・・。


そんな悪魔のような事を思った。

最低な母親、

いや、母親失格だ。


私は目の前に現れた
辛すぎる現実を
受け入れられずにいたのだった。

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