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70 細胞のひとつひとつがスパイシー (タイ、インドネシア、ミャンマー)

 というわけで。
 父さん母さん丈夫なカラダに産んでくれてありがとう、と安穏に旅していた今は昔、三年ほど前から消化器官に持病を携える身となった。毎日めっちゃ薬のむ。ときどき悪化する。悪化していないときも食べ物に気を遣う。高脂肪、繊維質、乳製品に要注意、そして何より悲しい刺激物の禁止・・・もう慣れたけど、宣告当初はなかなかつらかった。

               ***   

 自分が辛味に強く、また辛いのが大好きであると認識したのはアジアの旅人になってからである。いやもう食べた食べた辛いの食べた。いろいろ食べた。で、今回は、今や禁忌となった辛いもの、スパイシーの思い出をつれづれに書こうかな、と。

【 タイ 】
 ケーンキャオワーン
 初めての東南アジア、バンコクの屋台で食べた白っぽいケーン、いわゆるグリーンカレー。それは辛いのに甘い。甘いのに辛い。そしてご飯に合う。衝撃だった。辛くなければ美味しくないという嗜好の始まりは、ここだと思う。

 ソムタム
 
青パパイヤのサラダ、ソムタム。売り子さんがソムタム甕(?)の中で具材をトントンと混ぜながら唐辛子をつまんで、”入れる?” みたいに尋ねる顔をするので、3本入れてもらう。辛くて甘酸っぱくておいし〜い。 ピーナッツ多め、沢蟹入りが好みです。

これはウボンラチャターニーの祭会場で。
ベンチにて。

 カノムチーン
 
ざっくり言うと、つけ麺。先述のケーン(2、3種類用意されている)に細い米の麺を浸しながらいただく。たいてい大きな笊に生野菜・・・青葱、パクチー、もやし、いんげん等々・・・が盛られてあって自由にトッピングできる。加えて、揚げた赤唐辛子。最初から辛いケーンにさらに揚げ唐辛子を入れて、鼻水垂らしながら食べる。旨い旨いアロ〜イ。市場の屋台で、周りのおばちゃん達に「あらまー このガイジンこんなに唐辛子入れてるよ」って感じでウケるのだけど、ウケ狙いではなく本当に辛いのが好きなのである。

スリンの市場で。

【 インドネシア 】
 ロテック
 ジャワ島はジョグジャカルタ、路地の屋台で”ガドガド"に似たひと皿を見つけた。ガドガドは、バリ料理としてたぶん知られている温野菜のピーナッツソース和え。甘口。 
 さて、屋台のテント屋根には LOTEK とある。さっそくオーダー。タイのソムタムのようにすり鉢状の器に調味料、ピーナッツやスパイスを潰して混ぜて、おお!唐辛子もぽんぽんと放り込まれた!
 茹でたキャベツ、じゃがいも、もやし等々具材はガドガドと同じだけどピーナッツソースが辛い!めちゃくちゃ辛い!いやあガドガドより俄然ロテックのほうが好みだわと通いつめた。(ここでも)鼻水垂らしながら「エナッ、エナッ」と食べてウケる。いやウケ狙いじゃないんですってば。

ロテックの写真は撮っておらず、これは別の店のアボカドチョコシェイク。全然違うやん。すみません。甘いものも好きです。

 ABCサンバル 
 おしなべて料理自体が辛いわけではないインドネシアであり、辛くしたい人は個人的に味を足す(知らんけど)。そのために存在するサンバル。唐辛子をベースにした、何ていうか、味噌っていうか 和えタレ っていうか、家庭ごとに、店ごとに、手作りのサンバルがある。 
 手作りサンバルは、それはそれは辛くて奥深い美味しさなのだけど、市販のサンバルも無数にある。有名メーカーのひとつ ABC は小ぶりのプラ容器瓶のを出していて、インドネシアに着いたらまずスーパーで購入し、常に持ち歩いていた。手作りサンバルとは別物だけど、ものすごく辛いケチャップ、という味でそれなりに美味しく、宿でバナナチップやアボカドを食べるとき、重宝した。

これまた写真がない。ココナッツパイの左にある赤いやつがABCサンバル。パイにかけるわけではない。
テーブルに3本立ってるABC味足しシリーズ。こんなふうに店に常備されてある。

 しかしながら、インドネシアの料理は辛味のあとに甘味が残る。
 なんだろう、なんか、後味が甘いのである。それで、サンバルをどばどばかけながら、ああ〜タイのキレのある辛さが欲しいなあ バンコク行きチケット買おうかな〜・・・などと思うのであった。

【 ミャンマー 】
 唐辛子ふりかけ
 名前はあるのだろうけど、知らない。今の世、検索すればわかるのだろうけど面倒だからしない。泣くほど辛いミャンマー唐辛子ふりかけ。
 屋台や食堂のテーブルに置いてあって、麺に、炒めご飯に、はらはらふりかければ、あああ辛旨し辛旨し。タイの唐辛子よりカケラが大きくて、他にも何か入っているのかな、うまみ、も感じるような。

右のボケてるのは汁麺モヒンガ。左側がこの店の唐辛子ふりかけ様。

 スーパーマーケットで大袋を見つけたので買って帰国した。 
 いやあもう、どんなおかずも引き立つわあ。おでん、焼き魚、茹で野菜、煮物、湯豆腐、鍋物の薬味。味噌汁。白いご飯にふりかけるだけでもよろし。家族に無視されながら、大袋がカラになるまでわたしの食事は唐辛子ふりかけと共に。 
 余談だけど、ミャンマーにはもちろん唐辛子だけじゃなく美味しいものが沢山あって、心優しい人達が穏やかに暮らしていた。はやく良い国に戻ってみんなに平穏な生活が戻るよう祈るばかり。

                 ***

 胃袋の、味覚の、心の底から辛いものが好きだった。それがまさか潰瘍性大腸炎を持つ身になるとは。
 主治医に、辛いのものの食べ過ぎが一因かと尋ねると、
「いや、そういうの、ぜんぜん関係ないです」
とのことだった。よかった。よかったってのも変だが。
 まあ、もう一生分のスパイシーを享受したということか。
 インドの美味しい辛いものはまた別の機会に。

フルーツサラダにスパイシーなソースをかけるルジャック。しかしそれはちょっと・・・・
バリ、ウブドにて。

 次のエピソードにつづく


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