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焼肉部位解説⑩ 人気の牛タン、ハラミ、サガリ、ハツなど 

牛内臓には赤と白がある

その昔、年配の食肉卸の取引先と焼肉を食べに行くと必ずオーダーするのが、「特上タン塩、特上カルビ、上ミノ」この3つと「レバ刺し」「キムチなど」であった。彼は「肉のプロがオーダーするのはこれに限る」と言ったものだ。 筆者としては、これ以外にロースやハラミ、トントロ、マルチョウ、シマチョウなどもたまには食べる。その後、諸般の事情によりレバ刺しの提供は禁止された。残念なことである。
さて、内臓の赤と白についてだが、焼肉好きの読者であればご存じの事と思う。 赤は、主として筋肉系のタン、ハラミ、サガリ、ハツなどで、白は、主として消化器系のミノ、センマイ、ハチノス、マルチョウ、シマチョウなどである。
内臓は、副産物や副生物、ホルモンと呼ばれる他、バラエティミート(Variety meat)、ファンシーミート(Fancy meat)やオファル(Offal)とも呼ばれている。
今回は「赤」の主なものについて解説したい。

14 牛内臓

14-1 牛タン
【別名】
【英語】 Swiss cut tongue(骨なし) Short cut tongue(骨付き)(北米 豪NZ)
【中国語】牛舌(niu2she2)
【牛の部分】 牛の舌。最もよく動く先端部分をタン先、真ん中の部分をタン中、根元の部分をタン元と呼ぶ。タン中とタン元の下部はタンサガリ、タン下と呼ばれる。
【特徴】シコシコした食感で焼肉やタン焼きで人気がある。タン先は赤身で硬く、タン中は若干硬めで多少霜降り、タン元は柔らかく霜降りになりやすい。 有名な仙台の牛タン焼は、元々は豪州産の骨(Hyoid Bone)付き皮つきのショートカットを使っていたが、80年代中頃から米国産のスイスカットやムキタンが使われるようになった。タン先、タン下(タンサガリ)は、硬かったりスジっぽかったりするのでスープや挽き材として使われることが多い。
【用途】焼肉、タン焼き、シチュー、牛タンつくね(挽いたタン先)、スープの具
 

写真:ショートカットタン


写真:スイスカットタン

14-2 ハラミ
【別名】アウトサイドスカート、アウト
【英語】 Outside skirt(北米)Thin skirt (豪NZ) Diaphragm(北米 豪NZ)
【中国語】薄裙肉(bo2qun2rou4)
【牛の部分】横隔膜の赤身肉。海外のと場では枝肉の肋骨の内側に付属して出荷される場合が多いため、海外では内臓には分類されないこともある。
【特徴】長さ50~60cmで厚みが2~3cmの扁平な肉で、外側の皮をむいて使用する。霜降りになりやすく柔らかい。焼肉では人気の部位であるが、変色や鮮度落ちが早い。アメリカではメキシコ料理のファヒータ(スペイン語 Fajita)の食材として近年になって人気が上がり高値で取引されている。
【用途】焼肉、ステーキ、炒め物(ファヒータ)



写真: ハラミ 皮むき


ファヒータ ©Zankopedia (Wikipedia)


14-3 サガリ
【別名】ハンギングテンダー、ハンテン
【英語】 Hanging tender(北米)Thick skirt (豪NZ)
【中国語】厚裙肉(hou4qun2rou4)
【牛の部分】 背側の腰椎に接する横隔膜の赤身肉。食肉処理の過程で内臓とともに枝肉から除去されるため、海外でも内臓に分類されるケースが多い。
【特徴】 柔らかく若干霜降りになりやすい。中央部に縦にスジがありスジ引きをすると食べ易いが、スジ引きをせずにそのままスライスしてタレ付けし、ソフト焼肉の名称で食べ放題の定番ともなっている。スジ引きをすれば、ステーキなどにも良い。ハラミ同様に変色や鮮度落ちが早い。
【用途】焼肉、ステーキ、肉炒め

写真:サガリ(中心部にスジが走っている)

14-4 ウィーザンド ミート
【別名】食道、ウィザンド
【英語】 Weasand meat(北米 豪NZ)
【中国語】食道(shi2 dao4)、食管(shi2 guan3)
【牛の部分】 牛の咽喉から第一胃(ルーメン トライプ)にかけての食道の管
【特徴】 赤身だが筋肉が緻密でかなり硬いため、ひき材として利用されて来た。米国では、食用以外にジャーキー状に加工してドッグフード(犬の歯の健康食)にも使用されている。
【用途】ひき材

写真: ウィーザンドミート

14-4 ハツ
【別名】シンゾウ、ココロ
【英語】 Heart(北米 豪NZ)
【中国語】牛心(niu2xin1)
【牛の部分】 心臓。心膜、動脈、静脈を除去する。
【特徴】コリコリした食感のある赤身肉である。鉄分やビタミン類が豊富だが独特の臭いがあるため人気があまり無く価格は安い。ハツの名称は英語のハートが語源である。
【用途】焼肉、串焼き

写真:ハツ

14-5 ハツモト
【別名】コリコリ、タケノコ、シロスジ
【英語】aorta (北米 豪NZ)
【中国語】大动脉(da4dong4mai4)、主動脈(zhu3dong4mai4)
【牛の部分】 心臓に接続する大動脈。厚さは3mm程度
【特徴】白いやや厚みのあるスジ。コリコリした食感が特徴。過去にはほとんど見向きもされなかったが、最近になって焼肉店で人気が出て来た。
【用途】焼肉

写真:ハツモト

14-6 レバー
【別名】キモ、レバ
【英語】 Liver(北米 豪NZ)
【中国語】牛肝(niu2gan1)
【牛の部分】 肝臓
【特徴】鉄分、ミネラル、ビタミン類が豊富で栄養価は高いが、特有の臭いがあるため好き嫌いが分かれる。レバ刺しが禁止された以降は安価になった。過去に発生したO157によってマスコミの標的にされたためレバ刺しが禁止されたが、他の食品と比較して、レバ刺しによって飛びぬけて食中毒が発生の原因になったわけではなく、レバ刺し禁止は納得できない事と筆者は思っている。 政府の専門委員会の学者先生方に「胆管を通じてレバーがO157やカンピロバクターなどの食中毒菌に汚染される可能性はありますか?」と問えば、当然「可能性はゼロとは言えません」という答えが返ってくるはずである。いくら可能性が限りなくゼロに近いとしても「ゼロとは言えない」との答えは変わらないのである。このようなことでレバ刺し禁止となり、「一つの食文化が消えてしまった」残念なことである。
【用途】焼肉、串焼き

写真:牛レバー


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