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本当なの? 赤身肉は腎臓に悪いという話

単純に信じずに話のウラを取る事が重要

2023年4月29日、経済関連の大手週刊誌のオンライン記事に「赤身肉は腎臓に悪く、霜降り肉の方が腎臓への負担が少ない」とのレポートが載った。著名な医学博士の著書からの抜粋・加筆との事だったので、もし本当ならば食肉の売り上げに響くかもしれないと、興味深く読んだが、これが全くの憶測記事であった。
 
その内容は、「赤身肉にはたんぱく質量の割に、リンが多い、リンの過剰摂取は、腎機能低下、慢性炎症の引き金となることがわかっている」とリンは腎臓病に悪いと結論を言った後、一応リンは重要なミネラルと説明し、「リンは、ヒトにとって必須のミネラルで、体を動かすためのエネルギーになったり、代謝などで重要な役割を担ったりしている。また、カルシウムとともに骨格を形成する働きもある」とはいうものの、その後で次のように赤身肉とリン過剰摂取の恐怖を結び付けている。 
 
「リンを過剰摂取すると血中のリン濃度が上昇する。そうするとカルシウムとリンのバランスが崩れ、骨から血液中にカルシウムが放出され骨軟化症の危険性が高まる」「また、血液中のリンが血管に入り込むため、血管が骨のように硬くなる石灰化が起こる」「それに加えて、リン、カルシウム、血中たんぱくが結合して、血管壁を傷つけて炎症を起こしたり、腎臓の毛細血管の動脈硬化を起こす。そうなると、腎臓の機能が大幅に低下する」とあたかも赤身肉が腎臓に悪いと結論付けている。
 
いったい何キロの赤身肉を食べたらリンの過剰摂取になるのか、全く科学的なデータを用いずに赤身肉を食べる事によって腎臓病になると決めつけているのである。
 
世界でどれだけの赤身肉(牛肉)を食べているかを調べると、OECD Meat consumption data 2021の統計では 年間一人当たり
アルゼンチン 36.035kg
アメリカ   25.969kg、
ブラジル   24.434kg、
日本       7.666kg
以上の消費量となっている。
アルゼンチン人は日本の4.7倍、アメリカ人は3.4倍の牛肉を消費しているので、さぞ腎臓透析患者数が多いはずなのだが、
人口100万人当たりの腎臓透析者数を調べてみると、上位5か国で、
①    台湾3,021人、
②    日本2,411人、
③    アメリカ1,482人、
④    シンガポール1,436人、
⑤    韓国1,151人となっている
(出典:ノバルティス ファーマHP US Renal Data System, 2015 USRDS Annual data report vol.2 Figure 13.15)
 赤身肉を大量に消費している南米の人達に腎臓病患者は少ないのである。
このように世の中には論理的なデータも説明もないまま赤身肉が腎臓に悪いなどというレポートが堂々と一流経済誌にも載っている。困ったもんだ。

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