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肉牛体重1キロ増やすのに必要な穀物量はゼロ??? 豪州NZでは本当だ!

家畜の体重を1キロ増加に必要な穀物飼料:飼料要求率の話

雑誌などで「1キロの肉を生産するのに必要な穀物量は何キロ」とあるが、体重なのか部分肉重量なのかで大きく異なってくるはずなのに、あい昧な表現が、ちまたにあふれている。例えば、ネットなどを調べると、農水省の資料では、10年以上前から「牛肉1㎏に必要な穀物量は11kg、豚肉が7kg、鶏肉が4kg、鶏卵が3kg」(注:日本における飼養方法を基にしたとうもろこし換算による試算)となっているが、重量の条件が・・・
①生体重量:生きた家畜の体重1kgなのか
②枝肉重量:まるまる一頭、骨付き、内臓なし、皮なし1kgなのか
③部分肉の重量:卸売り用骨なし又は骨付きの塊り肉1kgなのか
それとも
④精肉の重量:スライス、ステーキ、切り落とし、ひき肉小売りパック1kgなのか
これらが①~④が全く不明のまま雑誌やウェブ上で独り歩きしている。生産歩留まりがあるため当然異なった数値になるのに・・・。

牧草肥育牛やラムには穀物飼料は与えない

もちろん家畜には個体差がある事や、肉牛や羊の場合には、もともと牧草で育つ家畜であるため、豪州・NZのように穀物を与えずに牧草だけで肥育している、すなわちグラスフェッドビーフやラムであれば、必要な穀物量は0kgになる。全ての家畜に濃厚飼料(穀物飼料)を給餌しているわけではないので、この段階ですでに「牛肉1kgに必要な穀物量は11kg」と決めつけるのは大きな間違いである。

牧草だけでも肉牛が育つ点が、牛肉1kgに必要な穀物量を試算する上で困難なところであり、我国の和牛や交雑牛・肉用乳オス牛の生産でも粗飼料(牧草、稲わら、サイレージ等)が必要であるため、農水省の注にあるように「日本における使用方法を基にした」との表現になっている。

穀物肥育牛、養豚、養鶏では穀物飼料が必要:飼料要求率とは

◎ 飼料要求率とは家畜の体重1㎏増加するために必要な飼料穀物量のこと

国産和牛の場合
以下の表は筆者が飼料要求率8.5kgから試算した国産和牛 牛肉(枝肉、部分肉、精肉)1㎏に必要な飼料穀物(トウモロコシ)の量である。もちろん飼育環境や個体差があるため参考程度と考えて頂きたい。

表1 和牛(穀物肥育)の牛肉1kg当たりの生産に要する消費飼料数
出典:生体重量 枝肉歩留り (農水省H22 畜産部会資料) 飼料要求率 (日本草地学会誌 56 (4):245−252 (2011)富山県農林水産総合技術センター畜産研究所著、表3 飼料要求率 対照区n=6 肥育全期間8.48 ±0.97より)

豚肉の場合
以下の表は、一般的な三元豚(白豚)の飼料要求率3㎏から試算した国産豚肉(枝肉、部分肉、精肉)1㎏に必要な飼料穀物(トウモロコシ)の量である。こちらも、もちろん飼育環境や個体差があるため参考程度と考えて頂きたい。
最近では優秀な肉豚の飼料要求率は2.7kgのものもあり、その場合は必要な穀物量は表の数値より1割程度少ない。また、黒豚など品種が異なる場合には飼料要求率が高くなる。

表2 豚肉1kg当りの生産に要する消費飼料数量
出典:生体重量 枝肉歩留り (農水省H22 畜産部会資料) 飼料要求率 (農水省 家畜改良増殖目標 H22 7 ランドレース種、大ヨークシャー種の飼料要求率)

食肉の生産に関する基本的な数値まとめ

表3は筆者の調べた肉用牛(和牛)、豚、鶏の生産に関係する基礎データをまとめたものである。こちらも個体差によって多少のブレがあることに留意ねがいたい。

表3 畜産(生産)に関する基本的な数値

注)
① 鶏の飼料要求率はブロイラーの値、産卵数はレイヤーの値
② 牛と豚の飼料要求率は表1,2による   
③ 個体差によって数値にブレがあるため、おおよその参考である



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