座位姿勢を3Dに捉えよう!:姿勢分析を今より速くするために明日からできること 座位編その4
座位編第4弾です。
今回は座位を絵で描けるか?です。
絵で描くってすごく大事なんですよ。他人に伝わりやすいから。
絵で姿勢を描けることのメリット
絵で描くことで、ぼくが一番大事だと思ったことは
「自分が見逃している所に気づける」
ことです。
絵を描いていく時に、
「背骨ってどっちにカーブしてたっけ?」
「肩峰の高さは見たけど、肩甲骨でどうなってるっけ?上方回旋だった?」
など、曖昧な所は「自分の見てないところ」なんです。
絵が描けない所=見てない所。
そこに気づくためにも絵が描けるって大切。
あともう1つのメリット。
まずクイズにお答えください。
言葉で、
右肩甲骨下方回旋・外転、脊柱右側屈、頭部左回旋・左側屈、骨盤後傾・左下制・右回旋、股関節右外転・外旋
って書いてあった時に、どんな姿勢がイメージできます?
一度、イメージして見てください。
できる人は、一度絵で描いてみてください。
イメージができたら(絵が描けたら)、下へ進んでください。
*上記で使用している骨のモデルは購入することで自由に使うことができます!(購入ページはこちら)使い方の例として活用しておりますので、面白そうだななんて方はご購入くださいね★
ということで本題です。まー回旋は置いときまして、前額面上で表せる部分をだけを表現しても上図の2パターンは描けてしまいます。
上の左右の座位ではどちらが楽そうでしょうか?
どちらかというと左のホネホネさんの方が骨盤・胸郭・頭部の位置は傾きはあれど、支持基底面上には載っているので、大きな筋活動は必要なさそうですよね。
でも右のホネホネさんはどうでしょう。左に倒れそうなのを頑張って上半身を右へと傾けているように感じます。
体幹筋で見ると、
左のホネホネさんは左側腹部の収縮:遠心性〜等尺性収縮
右のホネホネさんは右側腹部の収縮:求心性〜等尺性収縮
が、どちらかというと必要そうに見えます。
支持基底面と重心線からの身体部位の位置で、必要な筋や収縮様式は変わります。
第一弾(姿勢分析を今より速くするために明日からできること:座位編その1)の記事で、
「C」の形を見つけよう!とお伝えしました。今回も上の図で青色で2つの「C」を描いていますが、右のホネホネさんの方がCが支持基底面上の中心線(赤の点線)より、大きく張り出した「C」になっていますね。
そしてこのCの線の上端と下端に注目してください!
左のホネホネさんはCの上端と下端が中心線に近い位置にあります。
(骨盤〜胸郭の濃い青い線の方が、理解しやすいかと思います)
これは骨盤が左へ傾こうとしている力と胸郭が右へ傾こうとする力を打ち消して釣り合いが取れている、と見ることができます。
クラインフォーゲルバッハの運動学でいうカウンターウエイトってやつです。
左のホネホネさんは筋肉がなくても、上手く床におけばそのまま倒れずに座っていそうですね。
対して、右のホネホネさんの骨盤〜胸郭で作る「C」の上端と下端はどうでしょうか?
上端は中心線に近づこうとしてはいますが、中心線まで届いていないですね。では右のホネホネさんをそのまま床に置いたらどうなるでしょう。ホネホネさんは左に倒れていくはずです。
その状態で倒れないようにするためには、右の手か足を外に広げてカウンターウエイトを利用するか、筋収縮を使って左に倒れないように右へと引っ張る力を作る必要があります。
これがカウンターアクティビティーってゆうやつです。
普段私たちも、自然とカウンターウエイトやアクティビティーを利用してバランスを取っているんですね。どちらか一方だけではなく、それらを組み合わせて、そして目的に応じて切り替えています。
でも患者さんは、筋力の低下があればカウンターアクティビティーを十分に使えず、カウンターウエイトを優位に使ったりして姿勢制御をしたりします。筋肉の収縮によっての制御をしない戦略を日常的に行えば、長い目で見ればさらなる筋力低下につながる可能性もありますよね。
話を戻しますが、姿勢を言葉だけで表現をすることは聞き手のイメージのズレを生みやすいし、中心線とCの形の位置関係によっては、使う筋の部位やカウンターウエイト/アクティビティーの戦略かどうかの仮説が根本から間違ってしまう可能性があります。
絵で描くことで、イメージのズレは回避できますよ。
【絵を描くことのメリット】
①絵を描くことで、自分が見逃している場所に気づける
②絵を描くことで、他人とイメージを共有しやすい。
③Cの位置やカーブの大きさで、姿勢制御戦略の仮説が正確に立てやすい
後輩教育でも、後輩に絵を描いてもらうことで、どこを見ているのか?どこまで見ているのか?を把握しやすいですよ★
では座位姿勢の観察〜絵を描くためのプロセスを説明します!!
キーワードは
「3Dで考えよう!!!」
です!
座位姿勢を描く:STEP1
まずは下の少年A(うちの息子)の座位姿勢を絵で描いてみてください!
今回は前額面でいきましょう。
ちゃんと描きましょう。(ぼくなりの)答えを見て、「そーそーそうなるよね」ってゆうのと、まず自分で描いてから答えを比べるのは全然意味が違いますよ。
「分かる」と「できる」は別物です。
まず自分で描いてみて、自分の今の観察能力を知ってください。
分かったつもりで、できるつもりになるのが一番よろしくないと思います。
では、自分なりに描いたら、下へ進んでみてください。
ここから、ぼくはどんな流れで姿勢を評価していくのかを説明していきます。
もちろん写真だけでは奥行きや服の問題もあって十分評価しきれないとは思います。実際には触診も合わせて把握していくことになるので、骨のランドマーク[第一弾(姿勢分析を今より速くするために明日からできること:座位編その1)の記事参照]の触診はできるように!!!
触診なんていつもある自分の体を触ればいつでも練習できますから。
ぼくは、いきなりランドマーク触りません。臨床場面でもいきなり身体触り出さないですよね。車椅子や病棟の食堂などで座っている時から評価は始まっています。車椅子でリハ室に行くまでは「移動の時間」ではなく「臨床時間」です。後ろから車椅子を押していく間にも上から水平面の姿勢観察はできますよ。
また車椅子に移った後に、患者さんに今日の状態や問診をしている間にも前額面の評価はできますよね。
前額面でみる場合、
・顔の中心から下ろした垂線がどの辺に落ちるか?(緑色の点線)
・上半身の流れのイメージ(赤い四角)
をみます。頭部も回旋や側屈があるので、大体の中心です。上図のようなイメージは伝わりますかね?
そうすると上半身全体に左に流れているなー
骨盤の方が左に崩れていて、それを頭部の方で直そうとしているのかなー
みたいに大雑把な全体像をつかみます。
座位姿勢を描く:STEP2
そしたら、そのイメージが合っているかを骨のランドマークを取りながら確認していきます。
今回は外耳孔(耳の穴)、肩峰、肋骨下端、上前腸骨棘を取っています。
(*顔の向きは下顎や鼻筋で取ろうとすると誤差が出やすくなります。下顎は噛む筋肉の左右差でどちらかに傾きやすいですし、鼻も軟骨で頭蓋骨の中心をキレイに真っ直ぐ通るわけじゃないので)
STEP1のイメージを信じすぎたらダメです。実際に触ってみるとイメージと違う!なんてことは度々あります。「自分の観察能力が正しいに決まっている!」と思わずに、現実をそのまま受け入れることが大事です。
ではランドマークが取れたらSTEP3へいきましょう!!
座位姿勢を描く:STEP3
左右のランドマークをつないで傾きをみていきます。
少年Aくんは頭部が右下がりで、肩峰・肋骨・骨盤は左下がりですね。
ではこの時、肩甲骨はどうなっていると言えますか?
すごく単純に考えれば「左肩甲骨は下制」という見方もできるかもしれません。
本当にそうでしょうか?
では下に左肩が下がっている2つのパターンの図を見てください。
一番左のホネホネさんはいわゆる左右対称なやつです。
真ん中と右のホネホネさんは肩峰の角度は同じように左に下げています。
加えて右のホネホネさんは、肋骨も同様の角度で左に下げています。
ではこの図をどう見たら良いでしょうか?
●真ん中のホネホネさん:
肋骨下端と肩峰の距離(黒い矢印)の長さが、
右>左
ということは肩甲骨は胸郭に対して、
・右肩甲骨が挙上or上方回旋
または
・左肩甲骨が下制or下方回旋
している可能性があるということですね。肩峰しかランドマークを取っていない場合、左右の肩峰の高さが違うだけで挙上or上方回旋/下制or下方回旋かどうかは分かりません(後述します)。
右のホネホネさん:
肋骨下端と肩峰の距離(黒い矢印)の長さは、
右=左
つまり、左右の肩甲骨の左右差はない
となりますよね。
ランドマークは1つだけで比較するのでなく、他の部位と相対関係で関節アライメントは決定されます。
頭部・胸郭・骨盤の傾きが決まれば、脊柱の湾曲も少しずつ見えてきますかね。慣れるまでは棘突起の触診で確認してみてください。
(ただ棘突起を追う方法は、脊柱の回旋があった場合、椎体の位置関係とは異なる場合もあるのでご注意くださいね。)
前額面上のランドマークからは上図の左のホネホネさん的な感じに座っているかなーと想像できます。
(上図では脊柱の屈曲・伸展、骨盤や胸郭の回旋など矢状面や水平面の動きは表現できませんのでご注意を。)
座位姿勢を描く:STEP4
では骨の位置や向きを前額面だけでなく、矢状面や水平面を見ながら立体的に把握していきます。
先にざっくりと全体像を描いちゃいます。
こんな感じです。
んで上の写真を上から見るとこんな感じになります↓↓↓
水平面上から見ると
・肩峰は右の方が前に出ている
・頭部を正面の基準とすると、頭部に対して胸郭(黄色)右回旋、骨盤(灰色)も右回旋。骨盤と胸郭を比較すると胸郭の方がより右回旋が大きい。
ここで肩甲骨の見方を少し詳しく。
前述した肩峰の位置が高い(上図ではそれぞれ右肩甲骨)場合、挙上か上方回旋のどちらかの可能性があります。
それは棘突起と肩甲骨間の距離で評価できます!!
どこで見ても良いですけど、今回は
❶棘突起と肩甲骨内側端との距離
❷棘突起と肩甲骨下角
の2つの比較でみてみましょう。
A 挙上:①②ともに対側肩甲骨と大きな距離の差はないまま肩峰の位置が高い
B 上方回旋:①に比べ、②の距離が大きくなり肩峰の位置が高い
となりますよね。
もう1つ間違えやすいやつを。正面から見た際に片側の肩幅が狭く見える(顔の中心と肩峰間の距離が狭い)場合、水平面からみると以下の2つが考えられます。
前額面から見た場合に肩幅が狭く見えた場合(上図では右肩甲骨)、
A:前方突出、B:内転の2つの可能性が考えられますね。
評価は簡単です。
上図の❶の棘突起と肩甲骨間の距離をみれば判断できますね。
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まとめ
今回は矢状面の図は入れていませんが、このように前から(前額面)、横から(矢状面)、上から(水平面)のランドマークの位置を比較することで、各コツのパーツの位置関係や向き・傾きがより具体的に見えてくるようになりますよ!!
【今回のまとめ】
・絵を描く癖をつける
・触って確認する癖をつける
・前・横・上の3平面から絵を描けるようにする
ことが大事ですね!!
最後までありがとうございました!
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