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日本中世の百姓①

皆様、おはようございます。
今回は以前『職人歌合』で移り変わる職人像を紹介しましたが、同じ著者である網野善彦先生の『日本中世の百姓と職能民』をまずは百姓から2回に渡って紹介します。
なぜ、百姓を紹介するのか?
それは、専門家ならもしかしたらご存知なのかもしれないですが、依然として猿楽師……ここでは、それを専業のプロとして行っている者たちの全体像というものが掴みきれない。
また、今後大阪市東部や摂津国について語る上でも避けては通れない民衆の代表の一つとして認識をするからこそ、日本中世において百姓や職能民がどのような認識をされていたのか。
『職人歌合』だけでは掴めなかった、言及されていなかった部分も補強する形で語り、その後網野善彦先生は約20年前に亡くなられているので、その後の日本中世を研究している書籍などをまとめることにより、外堀から猿楽師たちの生活や経済的な面を理解していこうという試みでもあります。
もちろん、必ずしも意図した通りの結果に辿り着くとは考えられませんが、少なくとも他の地域の石碑や伝承などなど百姓に関する話を語る際の基礎知識を早い段階からまとめておくに越したことはない。
などとちょっと格好をつけた始まりとなりましたが、いつも通り自分が読んで必要そうな所をまとめたものなので、気楽に「へー、こんな考え方を昔の研究者はしていたのか」から入ってくだされば幸いです。
それでは、本編へ参りましょう!


平民について

戦後第二期の歴史学では二つの中世社会像が生み出された。
一つは、在地領主と下人・所従の関係を軸として見る「領主制説」。
もう一つは領主の支配に抵抗する百姓、一般農民と中世国家を構成する「権門」との関係を基軸にすえて、中世社会を把握しようとする「反(非)領主制説」。
しかし、網野善彦先生が存命中の2003年頃はまだ中世社会像は模索中であると指摘されている。

「平民」について戸田芳実が、古代から中世への移行期、10、11世紀における「平民百姓」の身分的特質として、「国政について中央直訴の権利をもっていること」、この権利は「本来、律令国家の政治秩序のなかにおける「公民」の地位に由来する」としている。
律令制の解体とともに農民は逆に「公民」の地位を、より自由な基盤に立ちつつ、自己の武器として苛政に対抗するに至ったと「平民百姓」の「人身的自由」を強調している。

古代の「平民」

「平民」は、「百姓」「公民」等と同様、一般の人民、庶民を意味する。また、この言葉を使うとき、他の性質・身分の人と区別を示そうとする場合が多い。
例えば、家人・奴婢を「既非平民」といったり、高麗人(つまりは今でいう外国人)との対照などに使われていた。

8・9世紀ごろの「平民」は、国家に対して定められた負担を負う者を表現する語だった。
9世紀末以降に状況が変化していく、その中で「平民」と「庄民」あるいは荘の住人との違いが、荘園側から強調されるようになる。
「方々色々雑役」を負担するか否かで区別をされている。
このため、11世紀には「平民」は、課役免除の特権をもたない身分として、社会的にマイナスなものだった。

「職人」身分の区別

平安末期、特定の職能を通じて、神社などの権門に奉仕する人々を「職人」と総称してみた人々と「平民」との区別が確定していく。
10・11世紀以降に見られるようになってきた課役免除を保証された人々との差異は、新たな身分的な違いとして確定。
「職人」と「平民」の間の矛盾・対立の中で、特権を保持する「職人」に対する「平民」の反発が、その一部に対する差別、賎視に転化することがありえた。
これは南北朝内乱期を過ぎたころから、次第に明確になってくる。
この辺りは、以前の「職人歌合」や今後紹介する日本中世の職能民で多少は紹介したあるいは紹介できるかと考えます。

「下人」身分との区別

「下人」は朝夕、地頭に「祗候」する地頭の私的な支配におかれる身分であり、その一方、「平民」は公事、公役負担の義務をもつ身分である。
そのため、「下人」と異なり、「平民」身分の特質として「自由民」としての特徴を見出すことができる。

本日のまとめ

今回は、日本中世の百姓という存在が歴史学上どう考えられていたか。
古代の平民という語の使い方には、対比する語によって微妙に異なっていたことや、職人と呼ばれる身分との区別が、現在も取り沙汰される一部への差別などの問題に繋がっていったこと、それでも下人に比べると平民もある程度は自由民だったといえるのではないか。
そんな指摘をまとめつつ、平民という存在についてまずはまとめてみた。
次回は、この平民百姓が負担していた時代劇などによくある年貢などについて触れていく。

今回はお付き合いいただきありがとうございました。
また、次回もお付き合いくださいませ。

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