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並行読者のなれのはて(おれの場合)

並行読書というものがある。

大学の友達と本の話をするときに、自分が並行読者であると話すと、たいてい分かってもらえなかった。

頭がこんがらがるじゃん、と。

しかしおれは本を読むとき、よそはよそうちはうち、といういわゆるヒョウ柄母ちゃんスタイルを崩さない。
並行読書は朝飯前である、ことにしていたが、この間とあることに気が付いた。

大学に入って、加藤シゲちゃんの影響で本を読むようになった。
活字から逃げたくて理系に進んだおれは、小中高と読書経験があまりなかった。そして蓋を開ければ一冊に集中することができないタイプだった。

読んでいる途中で興味があっちゃこっちゃにいってしまうのだ。
小中高で達成しなかった興味と、日常のストレス解消のための物欲がここにきて爆発し、暇さえあれば目的無くブックオフへ赴き、何冊か買って本棚にしまう。

こうして積み重なるストックにビビる一方、ストックしたことへの達成感から本棚をウットリ見つめ、一冊すら読み終わっていないのに並行読書を始める。
物語の中盤に差し掛かり、次は何を読もうかと考え、気持ち逸り、読み始める。

こうして生まれた並行読者は、精神的にも経済的にも、やがて自滅する。
いま成立していても、知らず知らずのうちに情報に攻め込まれているかもしれない。

先日、ストックと並行読みの本数がどちらもピークに達した。
・なれのはて     加藤シゲアキ
・傲慢と善良     辻村深月
・自分の中に毒を持て 岡本太郎
・死神の精度     伊坂幸太郎   
・スマホ脳      アンデシュ・ハンセン
・キャッチャー・イン・ザ・ライ J・D・サリンジャー/村上春樹訳
                     ストック残り31冊

小説がほぼミステリーはきつい。

登場人物が物語の世界を超えて錯綜した。読了作品からもオールスター参上。

「誰がどうやって殺したのか?あの人?あの人と被害者との接点って…いや!ちがう話だわ。」
「あの時のこの言葉ってもしかして…!?ハッ!?そうするとこうでこうでああでこうなんじゃないか!?…まてよ!ちがう話だわ。」
「この人たち婚約してるのになんかよそよそしいのなんでなんだろう?いやちがう話だわ。」

こうしたことがままある。
今思えばこの時点で既に並行読書は破綻しているのだが、すぐに修正できそうだったので気にも留めていなかった。
おれは、身体が情報への拒否反応を示しているにも拘わらず、ブラック企業のお仕事ばりに新たに情報を送り込んだ寝る間も惜しんで!

「喜ばれる人になりなさい」(著 永松茂久)という、著者自身の体験を記した本がある。
深夜にいいところまで読んで、両親の教えを受けながら努力するのに感動しながら寝たのだが、翌日起きてぼんやり内容を思い出そうとしたとき、
あぁ、でもこの人も死ぬんだよな、あそこからどうやって死に持っていくんだ?でもここで殺しちまったらあまりに酷じゃない?ていうか今のところ死神まだ出てきてないけど、今回は話者を死神じゃなくしたのかな?
あ!ちがう話だわ!

嘘でしょーとびっくりした、そして安心した。ハートフルな物語に勝手に死神を降臨させてしまっていたが、死神はいなかった。

こうしたことが徐々に増えていき、ある時ついにパンクした。
ストックを消費するために徹夜で読書をし、そのほかの時間で課題、バイトの料理の調理手順を習得、授業、実験レポート、就活、そしてなぜかnoteも始め…

……!爆発!

何も思考できない。

荒れた頭の中には音楽が流れている(♪everyday~ I listen to my heart~ ^^♪)だけだった。こんな時に流れてくる「Jupiter」に対して、そして「惑星」に歌詞をつけたやつに対して、腹が立っていた。

読書を一時ストップし、忙しい中でやるもんじゃないなと思った。そして改めてストックの多さにビビった。買いすぎだと。落ち着けよと。気づけばドロップアウトしている本もたくさんあった。
生き急いだ結果がこれなのかと思うと、不甲斐なかった。

情報を求めて情報が拒否される。
本末転倒である。

人間、情報が飽和量に達すると狂う。
回復に時間がかかった。時間を少しおいて読書を再開しようとしても、まともに頭が働かなかった。情報がするすると抜け落ちていった。
情報科学を専攻しておきながら情報もまともに扱えないなんて、なんとも情けない。

今は8割くらい回復してきたので、北野武の「全思考」に対抗して「無思考」の出版を考えている。
もちろん考えているだけである。

目の前のことに集中する。
最近、昔から擦られまくっている教えの意味がわかることが多くなってきた。
わかったよーと言いながらわかっていなかったのだ。
そしてなぜかおれは、そういう教えをあたかもわかったようにまた教えてしまっていた。

言う人によって言葉の重みが違うのに、薄っぺらいことをいけしゃあしゃあと。
先人は偉大です。。

でもおれも経験したからもう堂々と言える。
目の前のこと集中しろよー

経験は言葉の重み付けなんだなということで。

何の話してたっけ??????
あ、並行読書はほどほどに!おやすみ!

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