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うまく言えなくてごめんね|中森明菜|Review

レビュー2022.06.04/音楽★★★★☆

先週アマプラで中森明菜ベストを聴いたので、今週の鼻歌や口笛はもっぱら明菜だった。てなわけで、以下は中森明菜評となります。

彼女はボクと同い年。デビューの頃からお互い思春期で、気にはなっていたが、特別好きだったという記憶はない。「花の82年組」のなかではキョンキョン推しだったから・・・ 特に初期の鼻にかかった歌声が好きだったのだよ。

松田聖子との比較でも、どっち派でもなかった。どちらもそれぞれの世界観のクイーンで、どちらも歌ウマで、どちらもそれなりに好きだった。ボクのなかでは、いわばレアルとバルサのように、ときどき比重は変わるけどどっちも応援している存在だった。

シングル順に聴くと、「北ウィング」から「SAND BEIGE 砂漠へ」までがMy黄金期、ただし「十戒」を除く、という感じだ。この時期は曲の題材が外国モチーフで、なんとなく無国籍な情緒が漂っててイイのだ。

珠玉は「サザン・ウインド」。来生えつこの詩を玉置浩二が曲にした、たぶん二度とないコラボ(未確認です)。なんかアレンジが素敵。シンセサイザーが疾走し、ストリングスが負けじと追走する。ときどきホーンセクションがラテンのノリで絡んでくる。ちょっと意味不明な振り付けにあわせて脱力気味に踊っている姿もキュートでした。

黄金期のなかで異質に輝く「飾りじゃないのよ涙は」は井上陽水作。ギターサウンドで、セカンドシングル「少女A」で発露した彼女の不良性を煽っているかのよう。彼女自身はヤンキーでもなんでもなく、「少女A」も最初は嫌いだったと言うけど、世間はその不良っぽい、そこはかとない暗さに惹かれているんだよね。

その「なんか翳あるなあ」感が彼女の全編をおおっている気がする。

そしてそれが現実になったのが、1989年の自殺未遂事件。彼女のコアなファンではないが、あえて言おう。「腐れ◯✕め、絶対に許さん!」

あれ以来、彼女は遁世した。あれ以来、彼女はずっとマイナーな存在だ。うまく生きたいのにうまく生きられない、そんな辛苦をボクも共有するからこそ、彼女がときどき気になる。いま幸せであってほしいなあと強く思う。

「夢に包まれた子どもに還って笑ってみたいの♬」よ、現実になれ!


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