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部下がパニック障害になってしまった

昼過ぎ。
総務部長が上司となにやらコソコソ話をしている。

朝から得意先に外出していた部下が最寄駅でパニック発作を起こし、総務のスタッフが迎えに行って自宅に帰したという。

なんということだ。
部下はパニック障害になっていたらしい。

最近、少し元気が無くぼんやりしていることが気になっていた。
しかし、ここまで具合が悪くなっていることに気付いてあげられなかった。

喉の奥にドロリとした粘土が入り込んでくる。
頭の芯がビリビリ痺れる。

あぁ、まずい。
お前がグラついてどうするのだ?
具合が悪いのはお前じゃない、部下だろ。
解っていても、容赦なく心の中に泥が流れ込んで来る。

『どうして助けてあげられなかった?』

事前に気付けていたとして、お前が救えたのか?お前も精神障害者だろ。
救える立場じゃない。ナニサマだ。

『連絡をしてやらなくていいのか?』

何を伝えようと言うのだ?!
“私は双極性障害だよ。同じ精神障害者だよ”とでも言うつもりか?
狂ってる。そんな事を言うもんじゃない。

違う。違う。違う。

一番具合が悪かった時、私がして欲しかったことはそんなことじゃなかったはずだ。

思い出せ。思い出せ。思い出せ。

普通。普通だ。
そう普通の、“いつも通り”が嬉しかったはずだ。

今は頭が回らないはず。そっとしておくべきだ。
ましてや私のように不安定な人間は、一番近づいてはいけない。

お前は彼女を救えないのだ。
余計なことをするんじゃない。

あぁ、解っているけれど。
『どうして気づいてあげられなかった?』が頭の中でぐるぐるしている。

結局、私ごときの経験なんて。
なんの役にも立ちはしない。
部下すら救ってあげられなかった。

私は永遠に半端者だ。
先輩としても失格だ。

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