見出し画像

百万円と“矯正”女 〜双極性障害の頭の中 28

みなさん、こんにちは。
双極性障害2型(双極症)のフツーの会社員、パピヨンです。

私は1年のほとんどを“抑うつ状態”の波の中で過ごしていますが、年に1回から2回、躁転しているようです。ほぼ自覚はありません。

遡ること約3年前、記憶に残っている躁転の話を記します。




2020年の12月のことです。
明らかに私は躁転していました。

世の中は新型コロナウィルス第3波の只中。
その時たまたま観ていたテレビの中の学者がこう語ったのです。

「このマスク生活はあと2年は続くでしょう」

世界中の人々が、あと2年もマスクをつけているらしい。

“こんなチャンスは2度と来ない!世界中だぞ?何かやらなくては!!”

ザ・双極性障害(笑)
何をとち狂ったのか、“このチャンスを活かさない手はない”という使命感がフツフツと湧き上がってきてしまったのです。

全世界マスクで口元が見えない。
美容整形か?
いやいや、メスはちょっとね。
でも、こんなチャンスだぞ?!
そして閃いたのです。

そうだ!!歯列矯正だ!!!!

私の歯並びは『八重歯』の上に並びもガタガタ。以前からコンプレックスでした。
特に海外出張の時、歯並びの悪さが恥ずかしくて。笑う時は口元を隠していました。

『八重歯』が可愛いなんてもてはやされるのは日本だけ。欧米では『ドラキュラ・トゥース』と呼ばれるほど忌み嫌われています。

この憎き『八重歯』を抹殺する時が来た!!

それに、自殺した双極性障害の患者が歯列矯正してたらマジウケる!
数年先まで生きる気満々じゃん!死ねない理由になるわ!!

完全に思考がクレイジーです。
躁転の波に乗った私は怒涛の勢いで歯科医院を調べまくり、YouTubeで『歯列矯正』の動画を探しては何時間も見まくりました。

そしてあっという間に3軒の歯科医院を予約し、カウンセリングに向かったのです。




躁転しながらも、ちゃんと下調べしたところは褒めてあげたいです(笑)
なにしろ、もう思い立ってしまったので、1日も早くあの“装置”を付けたくてしょうがない。

毎週休みのたびに歯科医院を訪れては数万円ほどかかるカウンセリングを受け、見立てをしてもらいました。

カウンセリングに10万円ほどかけて1番感じの良さそうな矯正専門の歯医者を選びました。

その歯科医院はトータルフィー(定額制)という支払い方法で、前払いする代わりに治療期間が長引いても追加料金がかからない(逆に言えば早く治療が終わる人には高くつく)システムでした。

12回、24回と、分割で払う方法ももちろんありました。
しかし、そこは双極性障害ですから。

どうせ払うんだし、分けても一括でも同じじゃね?!

ポン!と100万円を一括で振り込みました。
今思い出すと恐ろしいです。
イマイチな歯医者だったらどうするつもりだったんでしょうか?
もう頭の中は“八重歯を抜きたい(後で知りましたが八重歯は抜きません)装置を付けたい”でワクワクです。

躁転って恐ろしい…。

その後、上の歯を2本抜歯したのですが、血みどろの口の中を鏡で見て、嬉しくて笑いが止まらないのです。
ほとんどホラー(笑)





早いものであれから2年半が経ちました。
幸い、先生はとても腕の良い方で、牙のようだった私の八重歯は跡形もなくスペースに収まり、綺麗に並びました。
8月にブラケット装置も外れ、今はリテーナーという保定装置を付けています。

躁転の勢いで始めてしまった歯列矯正ですが、結果として良い方向へ終結したので、まぁ良かったです。

しかし、昨日部下の女の子に
「パピヨンさんの八重歯なくなっちゃったの、ちょっと淋しいです〜チャームポイントだったのにぃ〜」と言われて、苦笑いでした。




上記の通り、躁転の波に乗ってしまった双極性障害はブレーキが効きません。

私は一人暮らしのため、誰にも気づかれず、誰にも止められず、突っ走ってしまいました。
たまたま結果オーライだったので良かったですが、ご家族やパートナーが双極性障害の方はどうか躁転の時にも気にかけてあげてください。
ウツは分かりやすいかと思いますが、2型の躁転に気づくには余程注意深く観察してあげないと難しいと思います。

そして、双極性障害の躁転は1日で終わるようなものではありません。DSMー5でも“少なくとも4日間”と定義されている通り、数日から数週間は続いてしまいます。

私は歯列矯正の治療を始めてしまった後に精神科の主治医にウキウキで「歯列矯正始めました!」と報告したところ、

「うーん…」

と主治医は頭を抱えておられました。
恐らく当時のカルテには『躁状態がみられる』と記載されていたはずです。


私は“抑うつ状態”よりも“躁状態”の方が厄介だと思っています。
有り余る行動力と制御不能な発想力は、次のウツの波に大きなダメージとなって返ってきます。

まずは躁転を起こさないこと。
これが一番大切です。
だから私は主治医の指示通り、薬を飲み続けます。

私には止めてくれる人がいないので(笑)
次回の“躁転の私”のために、この記事を残します。


※今回のタイトルはタナダユキ監督の名作『百万円と苦虫女』からいただきました。
だいぶ前に観たので内容はうろ覚えですが…蒼井優ちゃんが可愛いかったです。

この記事が参加している募集

この経験に学べ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?