猫石ゆゆ

ごく普通の会社員。システムエンジニア。 名前はnoteをはじめたときに目の前の棚に陶器…

猫石ゆゆ

ごく普通の会社員。システムエンジニア。 名前はnoteをはじめたときに目の前の棚に陶器の猫と木彫りの魚があったから。ゆの形はお魚に似ている。 自分の思い出話などを書いているが、ろくなことをしていないので、ろくな思い出がない。

最近の記事

お正月の思い出の話

家で過ごす正月は特になにもない。 なにもないからこその正月で、実家に帰って家事手伝いに追われるとか、義実家に行って私をお雛様か何かと思っている親切すぎる義両親にもてなされ逆に手持ち無沙汰になるよりは、何もないほうが平和なのであろう。 しかし、子供のころ何十人もの親戚が入れ代わり立ち代わりやってくる田舎の旧家の正月を過ごしていた思い出がこれでよいのかとたまに囁いてくる。 両親の家はいずれも旧家であった。 母の家はとにかく短命で戦争がとどめをさしてしまいほとんど親族が絶えていて

    • 伝統行事で火柱を作った話

      なき祖父母の家はハイレベル田舎だった。 どれくらいかというと、全国99%以上網羅をうたったインターネット回線の残り1%未満のエリアに入っていたレベルの田舎であった。 とはいえ、日本の田舎にしては山が比較的低いエリアで畑によって分断されてはいるものの車があればスーパーの百均も15分あればいけるので、限界集落はまぬがれていたし、合併で他の村と融合して無駄に広い町になっていたため自治体としてはちゃんと維持されていた。そのため、一見すると畑の中の山際に家がいくつか寄せ集まってる場所く

      • 逃げ遅れモブ死しそうになった話

        パニック映画や特撮の冒頭で、おかしなことが起きているのにぽかんと状況を見つめていて逃げ遅れるモブがよくいる。 まあ、物語であればそういう役回りなのだが、現実でそのモブになったことがある。 コロナよりはるか前、独身時代の話。 新宿三丁目付近で友人とショッピングをしていた。 紀伊國屋書店から出て、そろそろお茶でもとなったとき、通行人の多くがざわざわと空を見上げているのに気づいた。 つられて見上げるとビルの向こうの青空が地平線の方向からじわじわと茶色とも灰色ともつかない色に変わ

        • 見知らぬ男に「捕ったどぉおお!!」された話

          十年以上前、私は深夜の歌舞伎町をひとりで足早に歩いていた。 そして、見知らぬ男にたれ耳系うさぎの耳付き帽子の両耳を掴まれて、 「うさぎ捕ったどおおおお!!」 と叫ばれていた。 ○○ 時間はしばらく遡る。 風俗街イメージが今でも強い歌舞伎町だが、当時は歌舞伎町浄化計画が始まっていたころで、ショーレストランやテーマレストランが全盛期。通る道さえ間違えなければ若い女性のひとり歩きも余裕であった。 当時は、大通り沿いに店内で手品やダンスなどのショーが見られたり、店内にピラミッ

        お正月の思い出の話

          御朱印集めでマーラを追い払った話

          コロナで旅行が下火なこともありここ最近は行っていないが、御朱印集めをしている。 旦那が高野山の御朱印集めをしていてそれを見せてもらったところ、思っていた以上に綺麗で羨ましくなったことをきっかけに、神社用とお寺用の御朱印帳をそれぞれ用意して、機会があるたびにもらってくるようになった。現在、神社は2冊目に突入している。 ここ十年くらいですっかり趣味のひとつとして御朱印集めは定着した感じがするが、御朱印集めがブームになったばかりの頃は『お参りもせずにスタンプラリー感覚でもらいにく

          御朱印集めでマーラを追い払った話

          震えるお菓子が爆誕した話

          パウンドケーキを作るのが好きだ。 趣味の一つにお菓子作りがある。社会人になってもよく作っていたため、うちにはその時に買ったパナソニックの一人暮らしには高級すぎるレベルのオーブンレンジがあり、お菓子などほとんど作らなくなった今でもたまに息子とのクッキー作りに役立っている。 パウンドケーキとクッキー以外は、スコーンかマフィン程度しか作れず、素敵なアイシングなども無理だが、妙に味は良いと家族や友人には好評である。 要するに焼菓子専門のお菓子作りの趣味なのだが、ひとつだけ何度やっても

          震えるお菓子が爆誕した話

          全力で隠れ鬼をした思い出の話

          高校2年のとき。 当時通っていた高校には2年生の学校行事として『遠足』があった。しかし、遠足とは名ばかりで実態は生徒に計画と予算組みを経験させるという謎の課外授業であった。 •遠足の日に何をするかはクラス単位で好きなことをして良い。 •予算内かつ法とマナーの範囲内であればどこでなにをしてもよい。 •ただし、遠出は県内に限る。また危険度の高いものや日没までに帰宅できないようなことは禁止(急流下りや難易度の高い登山など)。 真面目なクラスは、県内の美術館や史跡にバスで向かって

          全力で隠れ鬼をした思い出の話

          思わぬことで猫の信用をなくした話

          実家には猫が二匹いる。 一匹目は大型種であるノルウェージャンフォレストキャットにもかかわらず小柄でビビリな豆。 二匹目は、豆の二年後に『子猫のときに猫風邪になり後遺症があるため貰い手がいなくて困っているが優しくておとなしいよ』という触れ込みでやってきたものの、優しくもおとなしくもなく、図々しく食い意地がはっていて今では病弱のかけらもない8キロのデブ猫に成長した花。 これはまだ、豆が一頭飼だったころの話。 長男の出産のため里帰りした。 東京の産院はどこも満杯で、妊娠に気づい

          思わぬことで猫の信用をなくした話

          祖父がストーカーだった話

          私と旦那は十歳差の歳の差婚である。 私の父と母も十歳以上離れていて、母方の祖父母も十離れている。別に歴代年上好みというわけではないのだが、見事に歳の差婚である。 もっとも、結婚の理由はまちまちだ。 私は婚活で会った人の中で、旦那がもっとも意見のすり合わせが可能そうだったのでよい父になるだろうと結婚した。顔がいいとか若いとか収入がいいとかは他にもいたので、結婚当初はあちこちから反対されたが、子供ができるとそのよい父親ぶりに一転して全肯定称賛の嵐なので、選択は正解だったと今で

          祖父がストーカーだった話

          飢えた何者かが校内を彷徨っていた話

          大学時代の話である。 大学が山の中にあったので、私は利便性と集団生活への適性のなさから、大学から離れた、しかし駅は近いアパートで一人暮らしをしていたが、地方出身者の多い私の出身大学は大学寮で暮らしている人も多かった。 金銭面の削減のため、私を寮に入れる案もあったらしいが、「この子が他人と一緒の部屋で暮らすなんて、この子も他の子も気の毒だ」という母の意見により、「不審者にあっても最後のとどめだけはささないように」という言葉とともに私の寮生活は見送りとなった。 はじめての一人暮ら

          飢えた何者かが校内を彷徨っていた話

          春画や裸婦画を巡るエトセトラを見聞きするたび思い出す言葉

          趣味の一つに芸術鑑賞がある。浮世絵も好きだし、前ラファエル派みたいな重たい西洋画も好きだ。歴史好きでもあるので遺跡や出土品レベルの古いものも好きだし、若手の日本画やイラストライターの個展にも足を運ぶ。気に入ればなんでも食べる完全な雑食である。 中には成人指定の展示もある。 そういう裸婦画やヌード写真の展示会に行ったり、春画を巡る論争を見るたびに、コミケ仲間だった写真家の友人の言が脳裏をよぎる。 『芸術目的だとしても、裸の絵や彫刻、ヌード写真を見てエロい気分になるのは全然あり

          春画や裸婦画を巡るエトセトラを見聞きするたび思い出す言葉

          追放ざまあ系主人公なエンジニアの話

          システムエンジニアをしている。 システムエンジニアというと、クリエイティブな仕事だというひともいるし、下請けのブルーカラーだというひともいる。 正解は両方。 所属会社と本人のスキルレベルと本人の適正により、かなーり仕事も給与もまちまちである。 私? 多分真ん中より少し下くらいで、代わりに割と育児関係で融通がきく方針の会社で、何でも屋をしているそこそこいるタイプのシステムエンジニアである。レア度でいうなら、都市部のリスかタヌキくらい。いるとこにはウジャウジャいるけど、全体と

          追放ざまあ系主人公なエンジニアの話

          縁切り&縁結びに行った話

          会社の新しい上司が自分の失敗を部下に押し付けるクソ野郎だと嘆く友人と、東京縁切り&縁結びツアーを開催したことがある。 クソ上司と縁が切れることと、新しい仕事の良縁を願って、豊川稲荷東京別院と高木神社にお参りしようというのだ。 上司や仕事をくそ扱いすることには賛否あろうが、個人的にはたとえいいとこがあったとしても自分には合っていない時点で互いに立派な悪縁なので、互いのためにも、ここはすぱっと切ってもらうべきだと思う。 困ったときの神頼みである。 豊川稲荷東京別院は現世ご利益、

          縁切り&縁結びに行った話

          流血の話

          ※怪我の話があります。 血が止まりにくい体質である。 別に病気ではないし、特に血液に異常があるわけでもないのだが、とても血が止まりにくい。 採血ではしっかり長く抑えないと大惨事だし、たいしたことのない怪我でも事故みたいになることがある。『動物のお医者さん』という漫画に血がとても止まりにくい女性キャラがいたので、割といる体質なのかもしれない。 大学生のときのこと。 サークル楝でおしゃべりしているうちにすっかり日が暮れてしまっていた。大学から私の家までは他の人に比べて遠く(ぼ

          流血の話

          ごはんを食べに行ったら宗教勧誘が待っていた話

          独身時代の話。 小さいアパートに住んでいた。丁度真下が大家さんの部屋で、入居時に体が弱いと聞いていたが、よくアパート前を掃除している様子からはそうは見えず、愛想の良いかわいいおばあちゃんといった感じだった。数名しかいない他の住人も物静かで、狭いけどよいところに引っ越せたと思っていた。 入居一年くらいまでは。 ある日のこと、大家さんに駅前のファミレスに誘われた。なんでもそこのパフェが食べたいので一緒にいかがかと言うのだ。 当時からあきらかに服装が不審者だった私をわざわざ指定

          ごはんを食べに行ったら宗教勧誘が待っていた話

          「私を置いて先に行ってください」と言った話 ~続「私を置いて先に行って!」と叫んだ話

          前の話で、駅で「私を置いて先に行って」と勇ましく叫んだ彼女の話を書いたが、このセリフ、似たようなことを私も言ったことがある。 ↓前の話 私は会社員なのだが、私の勤め先は自他ともに「ブラック企業ではないがホワイトとは確実に言えない薄汚れたグレー」と称される小中企業クラスのIT企業である。 開発系のIT業務というのは、IT土方と揶揄されるように、現場によって作業内容も仕事のつらさもまったく違い、同じ会社でも部署やチームによって全然違うことをしていることがよくある。 定時で帰れ

          「私を置いて先に行ってください」と言った話 ~続「私を置いて先に行って!」と叫んだ話