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スピッツのような小説が書きたい

スピッツといっても犬ではなくバンドのスピッツです。
スピッツの大ファンの家人の影響もあって、スピッツの曲はよく聴いていて、ライブにも行ったことがあります。
スピッツの曲を聴いていて思うのは、歌詞の素晴らしさです。曲も素敵ですが、小説家なので歌詞に気を引かれます。
草野マサムネさんの紡ぐ歌詞は美しく儚く、よくこんな言葉が出てくるなと感心を通り越して感動するほどです。

似てない僕らは 細い糸でつながっている
よくある赤いやつじゃなく

落ち合った場所は 大きな木もざわめき やんで
二人の呼吸の音だけが浸みていく

スピッツ「夜を駆ける」より

「似てない僕らは 細い糸でつながっている よくある赤いやつじゃなく」すごくないですか? ここまで、ふたりの関係を詩情豊かに描けるなんて。凡人なら、「僕らは赤い糸につながっている」みたいに書いてしまうところを「よくある赤いやつじゃなく」とちょっと乱暴な言葉にすることで、ふたりが特別な絆で結ばれていることを表現しています。

幼い微熱を下げられないまま 神様の影を恐れて
隠したナイフが似合わない僕を おどけた歌でなぐさめた

スピッツ「空を飛べるはず」より

これもすごい。思春期のどこにも行き場のない思いをこのように表現するとは。「幼い微熱を下げられない」「隠したナイフが似合わない」とかものすごすぎて語彙が消失します。

とにかくどの歌詞も凄すぎます。読めば読むほど、聴けば聴くほど、草野さんが描く世界の凄さが伝わってきます。

この素晴らしい歌詞のように小説が書けたらどんなに良いか考えます。だけど、なかなか難しいというより、ちょっとその壁が高すぎて近寄ることすらできない感じです。
マサムネさんの歌詞のレベルにとても近づけないこともありますが、小説と歌との根本的違いも大きいです。

メロディと共に流れてくる歌と、読者が文字を目で追い読んでもらわないといけない小説とでは大きな隔たりがあります。
歌は、曲に載せることで、詩情あふれる言葉を歌詞にできます。美しいメロディが素敵な歌詞をさらに何倍も高めてくれます。
同じ言葉を小説に使っても、陳腐になってしまうし、意味がなかなか通じなくなります。

小説では物語を動かさないといけないので、どうしても説明文が必要です。歌詞のような美しい言葉だけではなく、時にはまどろっこしい表現やセリフを書かざるを得ません。

それでも、少しでもスピッツのような歌詞に近づける小説を書きたいです。そう簡単にはいかないし、ただ言葉を真似しただけではスピッツの世界観は構築できません。
詩と小説で使われる言葉には大きな違いがあります。それでも実現するためには、今まで培った小説の技法を捨てて、まったく別のやり方で書かないといけない気がします。
美しくも儚い言葉を紡ぎ世界を作り、その中で物語を動かし起伏を作る。並大抵のことではないし、草野マサムネさんの領域に到達するのは不可能かもしれません。
でも、スピッツの曲を聴きながら、その高みを目指して、日々小説に取り組んでいます。

初の商業出版です。よろしかったら。


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