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強い画を撮る!! MV撮影のテクニック  外ロケ, 被写体1人, リップシンクの場合

https://www.youtube.com/playlist?list=PL4021E8DB925B4A69


MV撮影を仕事で多くしてきました。
映像の撮り方コンテンツではあまり紹介されていない、MVでの ”強い画”の撮り方について自分なりに解説してみようと思います。
これが正解という訳では有りません、自分流の経験値の中での話ですので、あくまで、1つの例として受け取ってくださいます様お願いします。

”強い画”(つよいえ)とは、MVを引っ張る中心的な撮影素材(テイク)で、MV全体の軸になります。
ここでは、アーティスト,楽曲,MVのテーマ、企画がすでに決まっていて、ロケーションを探すところからの話になります。
今回は、1人のアーティスト、Vo,リップシンクのロケーションの場合を想定します。

その条件、まずは、

1、楽曲のテーマに合う、魅力的な背景を探しにロケハン

アーティストのVo(ヴォーカル)やミュージシャンが立った時、カッコよく見える背景を探します。楽曲と MVのテーマに合う事、必須です。
形が良い構造物、奥行きの気持ち良いもの、色合いが美しいもの、自然、絶景、海、街、建物、壁、道、橋、など、楽曲のイメージから、世界観にマッチしているものを絞ります。

条件としては、

◎ 映像の縦横比(16:9など)に上手くおさまる形をしている事、
ロケハン時にスマホカメラか、撮影用カメラで検証しましょう。

◎ 空いている部分に、人物を入れ易い風景を探す。
センター付近が空いていると使い易くなります。道の真ん中、アーチ、柱の間、トンネル状、両脇の壁に挟まれた所、橋の上、

◎ ヌケの良い所。空が広い所。
地平線、水平線、遠くまで見通せる所、高い所、山頂、屋上、水辺、など、

◎ 変わった所。非日常空間。
険しい自然、雪景色、廃墟、港など倉庫街、レトロな建物、コンクリ打ちっぱなし(スケルトン)のビルのフロア、など

◎ 余裕のある大きさが有る所。
壁や構造物ならば、身長の2倍くらい有る高さが有り、
背景と人物との距離を調整してバランスを選べ、
人物とカメラの距離も調整してバランスを選べる所。

2、光が良いところで探す!!

陽当たりが良い方が良いですが、曇っても成立する場所が一番です。
背景と立ち位置が適当な明るさのバランスで、カメラを通してフェイストーン(顔色)と背景が両立する所は使い易い場所です。
とても魅力的な場所でも、立ち位置が物陰で、背景が明るかったり、
撮影時刻に逆光では、勝ち目がありません。
晴れた日にロケハンして良くても、当日、晴れかどうか分かりませんし、
晴れ続けても陽の周りが有るので、ベストな時間は2〜3時間くらいです。
または、常に日陰で安定している(立ち位置と背景が両方とも)場所というのも有りです。雲の動きに左右されません。

3、サイズのバリエーションを幾つ撮るか決める

魅力的な背景が見つかったら、MVのリップシンクの素材のヴァリエーションとして、引き、ミドル、より、など、このシチュエーションで幾つのバリエーションを撮るか考えます。

引きサイズの背景の役割、

16:9の画面に1人の全身をおさめると、画面の8割は背景になります。
引きサイズの背景は、印象が強く、曲の世界観のシンボルであり、
アーティストがこのMVで背負う事で、強い意味を持ちます。
楽曲内容にリンクして、明るさ、暗さ、楽しさ、寂しさ、爽快感、重厚感など、感情的なものを誘い、
楽曲内容によっては、社会的なメッセージや、問題意識を表します。
楽曲の歌詞の内容や、アーティストのバックグラウンドと重なる、MVの方向性を決める世界観になります。
また、パフォーマンスでの役割では、全身の動きを捉えているので、たたずまいにはじまり、大きなアクションや、全身を使っての表現はこのサイズで存分にパフォーマンスしてもらう事も重量です。

ミドルサイズの役割、

ミドルサイスは、アーティスト(ミュージシャン)の躍動感、パフォーマンスの激しさ、静かさ、身体表現のキレの良さ、ボディーランゲージなどが際立つサイズです。
両手を広げたり、手を差し伸べたり、時にかがんだりをカメラワークで上手くおさめつつ、丁度いい余白を保つ事で強い画の素材になります。
画面余白の大きさはパフォーマンスの大きさによって変わりますが、
このサイズから、フルサイズ1眼カメラを使って被写界深度を浅く設定すれば、
背景のボケを意識的に演出出来るので、効果的に本人のパフォーマンス主体のサイズになります。

よりサイズの役割

よりサイズは顔の表情がメインです。
カメラ目線が基本となる事が多いですが、カメラ目線を外している時と、合わせてる時のバランスは、MVの演出と本人の演技力次第で変わります。
視線の合わせ方、外し方、その間の取り方、眼力、発声をしてリアルに歌っている感じにしたり、また、あえてつぶやく様にしてリアルに歌って無い感じなど、表現方法は様々です。
表現力の引き出しの有るアーティストほど、小さい表情の変化でもとても効果的に表現可能なサイズです。
したがって、引きサイズ、ミドルサイズとパフォーマンス(動き)のつながり(生合成)が合わなくても良い場合が有ります。
よりサイズは、表情の詳細を捉える事で、画の強さが保たれます。

4、ロケハンで引きのサイズのアングルを決める

良い背景が見つかったら、スタンドイン(スタッフ)に立ってもらって、背景と、立ち位置と、カメラ位置のバランスの良い所を "全身サイズ(FF・フルフィギュア)〜膝上(ニーショット)” くらいで決めます。
引きのサイズのアングルが決まれば、その中でよりのサイズはおのずと撮れます。

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撮影の当日


1、とりあえず撮る!!。

アーティスト本人に引きのサイズを説明したら、まずは1回撮ります。
この時は膝から腰くらいの低いカメラ高さで狙うと、脚が長く、スタイルが良く見えるスタンダードなアングルになります。
そしてプレイバックして本人に見せます。
本人のパフォーマンス、カメラ位置や距離や高さ等、調整してTAKE2を撮る。
で、再びプレイバックして本人に見せます。
全てが良く成るまで何TAKEでも試行錯誤します。
(撮られ慣れている人は1〜2回で決まります)

そして、FF~ニーショットくらいの引きサイズでカッコいい立ち姿のベストテイクを撮れたら、この素材が広いサイズの軸に成ります。


2、引きのサイズが、OKテイクとして撮れたら、ミドルサイズに移る。

◎ 腰上サイズ(ウエストショット)も顔よりもやや低いカメラ高で狙うと、頭が小さく、手の長い、良いスタイルにおさめやすくなります。
本人のキャラクターと、楽曲の世界観によっては、あえて高い所から見下ろす様など、変化を付ける事も有ります。

ミドルサイズでは、引きのサイズを撮った時に、思わずサイズを詰めてカッコいいアクションを切り取りたくなったアクションや、カメラに向かって強くアピールするパフォーマンスなどを、近くで、丁度良いサイズで切り取り続け、カメラワークでおさめる事で、強い画の素材となります。

3、よりのサイズを撮る


◎ 肩上サイズ(バストショット)〜顔のアップサイズでは、カメラ高さの基本は "目高"(目の高さ)ですが、背景に水平線などの画面の上下を分割する様な構図では、そのバランスを調節したり、上目使いや、見下げた感じなど、視線の意味も重量な要素として、カメラ高さを決めます。
◎ 肩上サイズ(バストショット)以上では、顔の造作が強調されるので、
カメラ目線(レンズを見てもらっている状態)のまま、微妙にカメラの高さを調整して一番魅力的な高さを見つけるという方法もあります。
◎ レンズの選択は自由なので、近い距離感を広角レンズで、中望遠でスタンダードに、望遠でシンボリックに、など、狙いや好みでチョイスする訳ですが、

要になるのは顔の造作に合ったアングルを見つける事です。

顔のパーツを良く見て、ウイークポイントが目立たない構図をみつけましょう。
顔の凹凸の中で、プラスな部分を見つけ、マイナスな部分は隠す様にします。
レンズチョイスはワイドすぎるとたいていブサイクになります。
過去に撮った一番良い写真(加工が少ないもので)が有れば、それを真似るのが
一番の近道の場合が多いです。
ただ、写真は嘘つきなので、輪郭や目鼻立ちがベストに見える角度がピンポイントしか無い場合が有ります。映像のパフォーマンスで動くと成立しない事も有ります。
その様な時は、動きの有るヴァージョンと、ベストに見える角度から出来るだけ顔を動かさない様なヴァージョンの両方を撮っておきます。

追求する要素としては、顔の造作に合わせた一番魅力的な
"広角~望遠” のレンズチョイスと、
"ベストな角度の顔の向き" と、
”ベストな照明”の組み合わせです。

4、よりのサイズは近くで丁寧な照明を作る。

照明が可能な場合の話ですが、引きのサイズよりも近くで照明出来るので、細かく手の込んだ照明が可能になります。
先に撮った広いサイズのFFやニーショットとの多少の見え方や、立ち位置の前後が違ってもかまいません。
とにかく、一番魅力的に見える条件を見つけ出します。

◎ 額と鼻筋のTゾーンが明るくなる正面の光をメインに当て、
◎ 同時に目の下のくぼみやシワが目立た無い様にします。
◎ 顎の下の丸みが気になる様で有れば、下の角度からも当てます。(女優ライト)
◎これら3種類を全て面光源(90cm角くらいのディフューザー)で柔らかい光質で作り、出来るだけ近くで組み、それぞれの光量を調整します。
余裕が有れば左右それぞれの照明も作り、色々な角度からの光量を調整してベストな状態を作ります。

顔のパーツを良く見て、ウイークポイントが目立たない構図をみつけましょう。
レンズチョイスはワイドすぎるとたいていブサイクになります。
過去に撮った一番良い写真(加工が少ないもので)が有れば、それを真似るのが
一番の近道の場合が多いです。
ただ、写真は嘘つきなので、輪郭や目鼻立ちがベストに見える角度がピンポイントしか無い場合が有ります。映像のパフォーマンスで動くと成立しない事も有ります。
その様な時は、動きの有るヴァージョンと、ベストに見える角度からの、
出来るだけ顔を動かさない様なヴァージョンの両方を撮っておきます。

撮ったらプレイバックして本人に見せ、納得がいくまで試行錯誤する。
これで各サイズの”強い画”の素材が1曲分揃った訳です。


今回はここまでです。




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