ねこラーメン

田舎に住んでいる考古学徒。日々読んでいる本や論文。博物館展示やトピック的調査成果を紹介…

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田舎に住んでいる考古学徒。日々読んでいる本や論文。博物館展示やトピック的調査成果を紹介していきたいと思います。

最近の記事

NO.020 文献を集める

最近、仕事の関係で論文を読むことが増えています。 市販されているものは、図書館で借りるなり、本屋さんで購入するなり方法はあるのですが、難しいのが一般に流通していないものです。 いわゆる灰色文献が多いのが考古学の特徴?かもしれません。 300~500部程度しか刊行されない遺跡の調査報告書は、近年、遺跡報告総覧というサイトで公開される傾向にあって入手しやすくなりましたが、現状でも難しいのが研究会の資料集や同人誌的雑誌です。 これらの中には査読がないものもありますが、重要な論

    • NO.019 読んだ論文を記録する

       年度末年度初めのバタバタ期に突入し、なかなか自分の時間が取れませんが、元気に過ごしています。    さて、タイトルの読んだ論文の記録です。  僕は仕事柄わりと本や論文を読んでいるのですが、なかなか頭に定着しないのが厳しいところと感じています。  そこで10年ほど前から読んだ論文はPDFにして、処分するというスタイルをとっていますが、これはなかなかいい感じです。職場と家に論文のデータを入れた外付けHDDを置いていて、常に10,000本以上の論文に囲まれていることになります(活

      • NO.018 講演を依頼する

         長期出張などでばたついていて、久しぶりの更新。もう年度末ですね。  今回は講演会について。    仕事柄、講演を頼まれることも時々ありますが、実態としては講演を依頼することのほうが多いですね。  難しいのは誰に頼み、何を話してもらうのかです。  講演をお願いしたい人が何を研究し、どんな論文を書いているのかを簡単に調べ、人選と演題を考えます。    あと、謝金や旅費など。あまりに遠いと旅費がかさむので、なるべく近くで、普段聴けない話をしてくれる方がベストですが、その様な方は一

        • NO.017 冊子はどのくらい刷るべきか

           考古学関係の印刷物として、大きく分けると ①市販される単行本 ②定価がついていない冊子 に分かれます。また、②は論集・雑誌・資料集とともに報告書があります。  昔は②は灰色文献とも呼ばれ、なかなか入手しにくいものも多くありましたが、最近は、全国遺跡報告総覧というサイトに文化財調査報告書のPDFが公開されることが増え、大分入手しやすくなっています。ただ、これは任意?であるため、積極性の有無によって公開の度合いが違うようです。  報告書はこのように公開される傾向になりつつありま

        NO.020 文献を集める

          NO.016 淺湫毅・時枝務編2021『季刊考古学・別冊』33 美術史と考古学

           2021年に刊行された本書。  表紙を見た感じ、僕には縁遠い本だと思っていましたが、遅まきながら実物にあたってみるとかなり面白いものでした。  目次はこんな感じ。 Ⅰ 総 論  仏像のアーケオロジー 仏像から「文化の痕跡」を読み取る(長岡 龍作) Ⅱ 学史のなかの美術と考古学 美術考古学からの発展(星野 達雄) 濱田耕作の美術史と考古学(時枝 務) Ⅲ 美術史と考古学の方法論 日本仏教彫刻史における編年(井上 一稔) 考古学における様式と型式(佐藤由紀男) 埴輪はどのよ

          NO.016 淺湫毅・時枝務編2021『季刊考古学・別冊』33 美術史と考古学

          NO.015 読んだ本をどうするか

           考古学に限らず勉強していると、どうしても本が増えてきます。とくに歴史系は研究史を丁寧にたどる傾向があるので蔵書が多い傾向にあるのではないでしょうか?  また、本はコレクションを誘発しやすい性格をもち、自然消滅しないので、持ち主が処分を決断しないと決して減りません。  ですが、本を置く場所には限りがあります・・・。  そこで本を読んだらどうするかという課題が出てきます。  ぱっと思いつくことを並べると  ①保存する  ②捨てる・売る・人にあげるなど手放す のほかに②の派生です

          NO.015 読んだ本をどうするか

          NO.014 〈新刊紹介〉坂靖さん追悼論文集刊行会2024『古代学と遺跡学ー坂靖さん追悼論文集ー』

           昨年亡くなられた坂靖さんの一周忌に合わせて、追悼論文集が出されました。  僕は一度しかお会いしたことがないのですが、それぞれの論文の末尾には坂さんとの思い出が記され、どのような方であったのか知ることができます。  この論集。某考古系書店にアップされた瞬間に品切れとなってしまいましたが、これから多くの方に読み継がれていくものとなりそうです。  僕もこれから読んでいきたいと思います。合掌。 以下、参考までに目次を掲載しておきます。 坂 靖 寺口千塚古墳群(平石谷川地区)第1

          NO.014 〈新刊紹介〉坂靖さん追悼論文集刊行会2024『古代学と遺跡学ー坂靖さん追悼論文集ー』

          NO.013 図録を買うか買わないか

           今日は図録のおはなし。博物館や美術館に行くことが比較的多いですが、いつも迷うのが図録の購入です。  図録は展示会の目録的な位置づけになろうかと思います。昔は館内の撮影が禁止されていたため、博物館を訪問するたびに図録を購入していました。ただ、最近は写真撮影がOKのところが増え、図録を買うことに迷いが出てきました。  もちろん、専門とするところの図録は迷いなく購入ですが、すでに本棚一竿程度が図録に占められていることから、すこし量を減らそうとしているところです。また、結構いい値段

          NO.013 図録を買うか買わないか

          NO.012 調査対応 

           先日、他機関での資料調査の話をしましたが、今回は資料調査の対応のおはなし。  昔は捺印必須だった調査申請書も、最近は捺印不要のメール対応の期間も増えてきました。うちもおなじ。  ただ、調査対象資料の探し出しは大仕事。メジャーな資料(たとえばレアなものや有名なもの)だと探しやすいのですが、結構捜索しないといけないものもあって、すこしでも早く申請してもらえると嬉しいですね(これはどこも同じと思います)。  ちなみに僕はなるべく資料調査の途中に顔を出して少し話をするように心がけて

          NO.012 調査対応 

          NO.011 抜刷つくる?

           論文を書いて、無事に刊行されたら抜刷を作るか否かの選択に迫られます。抜刷とは、ある本や雑誌の中に含まれている自分の論文の部分だけを抜き出して綴じてもらい冊子の形態にするものです。おそらく、本文はその媒体と同じ紙質で、表紙を厚紙で巻くものが一般的だす。  昔は論文を投稿して無事に掲載されると30~50部の抜刷を無償でくれていましたが、最近はどうでしょうか。また、50部で足りないときは実費負担で追加することもできます。僕の経験では大体1部100円でしたが、100部は欲しいという

          NO.011 抜刷つくる?

          NO.010 資料調査へ

           考古学の調査は、大きく分けて①遺跡・遺構、②遺物の調査に分かれます。  ただ、①はわりと受動的な場合が多く、「この遺跡を知りたいから、発掘してみる」という主体的な調査はかなり少ないと思います。②も発掘調査報告書作成に伴うものであれば、否応なしに図化したり、写真を撮るなど整理を進めますが、これも受け身な感じですね。しかし、受け身の調査の中に自らの主体性を出していく担当者は多いと思います。  もうひとつ。他機関に各種申請手続きをして行う資料(遺物)調査がありますが、これは完全に

          NO.010 資料調査へ

          NO.009 〈新刊紹介〉田尻義了2024『青銅器の生産からみる弥生社会』雄山閣

          弥生文化研究の華といわれるのが青銅器研究。 そんな弥生時代の青銅器を研究している田尻義了さんが新しい単著を刊行されましたので、ご紹介しておきます。  田尻義了2024『青銅器の生産からみる弥生社会』雄山閣(5,400円+税)です。  弥生時代の青銅器というと、どうしても武器形青銅器や銅鐸、銅鏡研究が主流となりますが、本書ではヤリガンナ、銅釧、小型仿製鏡、銅鏃などどちらかというと非主流の青銅器に着目されています。また、鋳型の石材産出地にもアプローチするなど、研究がされつくさ

          NO.009 〈新刊紹介〉田尻義了2024『青銅器の生産からみる弥生社会』雄山閣

          NO.008 似た古墳をさがす

           昨日書いた原稿は熟成待ちに入ったので、今日は別の調べもの。  古墳の研究には築造企画論というテーマがありますが、基本、近畿の研究者がされているイメージ。そこに違う視点を取り込もうと思って、論文読みだしたのですが難しい・・・。  特に未調査で墳端が分からない古墳はさじ加減が効くというのがちょっと問題かなと。もちろん最近は3Dデータで正確なものが増えてきていますが。  ちょっとまとめて研究事例を調べてみてヒントを探したいと思います。 82. 大山真充 1991 「製塩」『古

          NO.008 似た古墳をさがす

          NO.007 文章をまとめる 

           昨日から原稿執筆していますが、その気持ちの高ぶりのまま本日も鋭意執筆。なんとか一応のかたちになりました。ここから少し熟成させて加筆等を行っていきたいと思います。  ただ、今回はページの制限有。  どれだげ文章を凝縮させられるかがカギになりそうです。 66. 蔵冨士寛2007 「九州の横穴式石室」『日本考古学協会2007』 67. 白澤崇1998 「組成から見た古墳主体部の副葬土器1」『網干善教先生古稀記念考古学論集』 68. 白澤崇1998 「組成から見た古墳主

          NO.007 文章をまとめる 

          NO.006 原稿執筆開始

           今日はすこし時間が確保できたので原稿執筆開始。  今回は前方後円墳に関することを文章化。じつは古墳だけの原稿は書いたことがないのです。  本当はすべての資料をそろえてからとも思いましたが、時間もないので見切り発車で執筆開始。  最初は参考文献を何も見ずに思うままに書き進めていましたが、いろいろと疑問点が出てきて、結果的に参考文献を確認しながらの執筆となり、思うようには進みませんでした・・・。  それでも久しぶりの原稿執筆。キツ楽しい時間を過ごすことができました。まあ、今月中

          NO.006 原稿執筆開始

          NO.005 高田貫太2019『「異形」の古墳』角川選書626

           今日は一日フリーの日。ということで、ゆっくり読書です。 こんな日があってもいいですよね。  さて、今回読んだ本は高田貫太2019『「異形」の古墳』角川選書626(定価1,800円+税)です。 構成は、 序 章 なぜ研究するのか 第1章 前方後円墳が出現するまで 第2章 前方後円墳を歩く 第3章 栄山江流域社会と前方後円墳 終 章 いま、前方後円墳からみえること となっています。  本書の特徴は、通常最初に持ってくる研究史を後回しにして、栄山江流域の遺跡の展開や日本列島

          NO.005 高田貫太2019『「異形」の古墳』角川選書626