東野要郎

東野要郎

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#小説 コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・8

《第八章 知らしめる 3》 【アフターエピローグ 1】  あれから一年近い2022年5月26日、毎朝新聞の朝刊三面に 〔東京地検特捜部は、日帝工業株式会社元社長らを不正競争防止法違反の罪で在宅起訴した:ベトナムの税関や税務調査で要求された追徴金を免れるために税関職員や税務監査員に現金を渡したとして、東京地検特捜部は25日、プラスチック・アルミ製品製造会社である日帝工業(東京都北区神谷1丁目、東証一部上場会社)の山本金一・元社長(69)ら3人と法人としての同社を、不正競争防止

    • #小説 コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・7

      《第七章:エピローグ》【エピローグ 2】 「両角さんは、本日の展開は、どこまでご存知だったのでしょうか」 「本日の展開というと」 「社員持ち株会有志である流山工場長の山村氏、樹脂原料の重要仕入先である滋賀ポリマー株式会社の法務部長の出席と高梨氏の社内情報量の凄かったことについてです」 「解りましたか。やはり。でもそんなに絡んでいません」 「では『そんなに絡んでいない』程度でかまいません」 「実は、発端は、山村氏からの電話でした。エイシア・ジャパン社からの株主提案の変更通知が

      • #小説 コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・6

        《第六章:知らしめる 2》 【監査等委員会:2020年12月25日】  東野は、11時に開催を宣言した。佐藤は欠席となった。問題が発生した。訴状の最終版ドラフトが11時になっても届いていなかった。スミス・羽柴・小野寺法律事務所のアソシエイトである朝長からは、11時半頃までにという連絡は、入っていた。その間、監査等委員会では茅野から訴状ドラフトの内容解説を受けていた。待つこと40分、スミス・羽柴・小野寺法律事務所のアソシエイトの朝倉から訴状最終版を送付したと連絡あった。東野は

        • #小説 コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・5

          {第2部 2020年度} 〔主な登場人物:第1部に加えて〕  日帝工業株式会社 新体制の取締役会   代表取締役社長 :斎藤正明(サイトウ マサアキ)   取締役     :山名繁男(ヤマナ シゲオ)   非業務執行取締役:湊 優一(ミナト ユウイチ)   非常勤社外取締役:今宮寿人(イマミヤ カズト)   非常勤社外取締役:真鍋貴司(マナベ タカシ)   常勤社外取締役 :東野要郎(監査等委員)   非常勤社外取締役:両角正義(監査等委員)   非常勤社外取締役:佐藤純雄(

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          #小説 コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・4

          第1部2019年度《第四章:知らしめる 1》 【監査等委員会の調査報告 1】 「本日の調査報告は2部構成になっています。第1部は【日帝ベトナム会社、税務監査不正対応調査報告】で、第2部が【内部通報等に関する調査報告】です。報告内容に質問や異議もあるかと思いますが、いずれも全部の報告が資料に基づいて終了してからお願いします」 「始める前に、確認したいことがあります」 山本社長が出席者の顔ぶれを見回してから不審げに発言し始めた。 「何でしょうか」 「なぜ、取締役以外の人がこの

          #小説 コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・4

          #小説 コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・3

          第1部2019年度《第三章:調査する 1》【有事発覚】  監査等委員の職責の一つに重要会議出席に加えて重要書類の監査がある。会社の重要事項は、決裁規程に基づいた権限者が、合理的でかつコンプライアンスに問題なく意思決定されているか、決裁過程に問題ないかの監査を行う。会議が行われない重要事項の決裁は稟議規程に基づき決裁される。日帝工業の稟議規程では、最終閲覧者は、監査等委員となっており、東野の机上のトレイには、毎日のように稟議書起案部署からの稟議書が回付されてきている。  11

          #小説 コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・3

          #小説 コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・2

          第1部2019年度《第二章:予兆する》【社内予兆】  東野は、9月10日アポの時間に、山本社長の部屋を訪ねた。山本は電話中であり、ドアの外で少し待たされた。込み入った電話のようである。「どうぞ」と声がかかったので部屋の中に入った。 「出張お疲れ様でした。タイ会社はいかがでしたか?」 「相変わらずです。OEM供給先であるカノン事務機器が好調でしたから、生産は活発ですが、利益率が低く薄利多売っていう状況です」利益率の話を引き出せたのは好都合であった。 「今回は、タイ会社だけです

          #小説 コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・2

          #小説:コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・

          【エピローグ 1】2021年6月29日 「両角さん、お疲れ様でした。やっと終わりましたね」 「東野さんこそお疲れ様でした。今まで大奮闘でしたね。良く戦ってくれました。」  王子駅の「北とぴあ」で開催された、株主総会の後、両角は、上野公園のテラスハウスレストランにお互いの慰労会をやろうと東野を誘って、ビールで乾杯していた。 「今日の結果を踏まえると僕らの行動は、株主のため、社員のため、つまりステークホルダーの利益になったのでしょうか?」東野は両角に問うた。 「私は、我々の監査等

          #小説:コンプライアンスの番人・・・社外取締役監査等委員の正義・・・