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忘れられない食卓

夢への片道切符を手にした小僧は、意気揚々とロンドンへ。

夢の切符の内容は、、、
英語発祥の国イギリスのロンドン。
半年間。
3ヶ月のホームステイ+と残り3ヶ月はまだ未定。
現地の語学学校は6ヶ月。

夢と期待とちょびっとの不安を抱えて、ヒースロー空港へ降り立つ。

ちょびっとの不安を抱えて、、、

今考えると恐ろしいほど頭が悪い。

いくら英語の国へ英語を勉強しに行くとはいえ、当時の小僧はが扱えた単語は「ハロー。」と「サンキュー。」のみである。しかもガッツリカタカナ。

しかし、小僧は例のヤクザとイケメンのおかげで、行き当たりばったりに免疫がつき過ぎて、感覚が無視していたのだろう。

口笛を吹きながら、夢の国へ降り立った。

留学斡旋業者が手配してくれた空港リムジンが高々と小僧の名前を掲げてくれていた。全財産を注ぎ込んだだけある。

空港からリムジンに揺られること40分。
ようやく、ホームステイ先に到着。

ホストファミリーの温かい歓迎と、初日の豪華ディナーを待ち侘びていた世間知らずの小僧は、初日からサプライズの連続だった。

夢にまで見たホストファミリーの歓迎は、無表情のおばさんが、事務的な口調で、部屋と家全体を案内して終わった。英語はほぼ理解できず、一方的な会話で終了。

その家には後2人ホームステイの学生がいた。
一人は、中国人の留学生。ほとんど記憶がなく、おそらく会話すらしていない。。。
もう一人の留学生は、スペイン人、初日は出かけていたようで、顔を見なかった。
初日の歓迎ディナーはどうやら一人で参加するらしい。

そうこうしているうちに、

「Hey, KOZOU, dinner time.」
おばさんに変わって、髭面のおっさんが出てきた。マッシュルームカットでガタイの良いおっさんだ。

彼はおもむろに巨大なジャガイモをさらにのせ、電子レンジにぶち込んだ。

ブーン。

ブーーン。

ブーーーーーーーーーン。

チン。


「here you go.」


「・・・。」


「???」

困惑する小僧を尻目に、おっさんは沸騰した鍋から、ザルを上げた。
ザルに入った白いつぶつぶの物体を、湯切りもそこそこにお皿に持って出してくれた。

謎の物体の正体は米。
鍋で茹でた米である。

小僧の想像の斜め上を300万光年ほど行ったあたりの常識では存在するかもしれない概念である。

電子レンジでチンした、ジャガイモと鍋で茹でたビシャビシャの米。

「That’s your dinner.」

「ディナー?」
「リアリィ?」

「yeah.」

そしておっさんはどこかに去っていった。

夢に見たロンドン生活は、冷たいダイニングの床の上に置かれたテーブルで、素材そのものの味を堪能することから始まった。

鍋で茹でただけの米は当然芯しかない。健康な歯を持ってしてもガリガリである。スズメじゃないので、食べられず。
ジャガイモは青臭さしかないが、米の芯よりはマシだと思い、無理飲み込んだ。最後の方は、自分の頬を伝って塩気が加わり、多少マシな味になっていた。


早々と割り当てられた部屋に引っ込み、枕を抱えて寝ることにした。

その日は困惑と寂しさと空腹で、ほとんど眠れなかった。
それでも明け方には疲れて寝落ちした

明日から学校が始まる。

学校はいい日だといいな。


学校生活編へ続く。


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今までの小僧のストーリーは下記。


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