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運命のCM: ストーリーテリングへの目覚め

20年以上前のある日、私は自宅のワンルームでぼんやりとテレビを眺めていました。画面に映し出されたのは、ナイキの最新テレビCM。当時のナイキは世界中のスーパースターを起用し、壮大なスケールでスペクタクルなサッカーを描き続け、若者の心を虜にしていました。もちろん私もそんなナイキの世界観の虜でした。今度のテレビCMは、中田英寿、ティエリ・アンリ、ルイス・フィーゴの3人の超スーパースターがヒーローに扮し、抑圧され画一的で退屈なプレーを強いられる「高校のサッカー部員」達の個性と創造に満ちた自由なプレーを取り戻すために戦うという内容でした。

このCMを見て、私は驚きと興奮を覚えました。遡ること数ヶ月前、ナイキの広告制作を担っていた広告代理店ワイデン+ケネディ東京に呼ばれ、高校のサッカー部時代の友人数名と一緒に座談会のような場所で当時のクリエイティブ・ディレクターに高校時代のリアルについて語っていたのでした。内容はまさに「高校時代の抑圧されたサッカー体験」。「自由がなかった事」「サッカーの楽しさを忘れてしまっていた事」「スーパースターの創造性豊かなプレーに憧れていた事」まさにこのテレビCMで描かれているストーリーそのままの話を自分と友人が語っていたのです。私と友人の個人的な話が、世界的なブランドの大胆なストーリーとして画面に現れたのです。それは私にとって、もはやただのCMを超えて、私のちっぽけな世界観を180度変えるほどのインパクトを持って私の心を大きく揺さぶりました。

その日から、私の人生は新たな方向へと進み始めました。私は「ストーリー作り」に魅了され、それに関わる事を自分のキャリアの中心に据えることを決意しました。ストーリーを通じて他人の心を動かす力に、私は深い魅力を感じ、その制作に携わりたい。いつか自分が作ったストーリーで多くの人の心を動かしてみたい。今でも色褪せる事なく自分の心の中心にあるこの衝動が、この日のこの瞬間に自分の中に芽生えたのです。

このテレビCMは、私にとっての転換点であり、私のキャリアの始まりでした。あの日の体験がなければ、今の私は存在しなかったでしょう。私はストーリーテラーとしての道を歩むことを決め、それ以来、ストーリーを作り続けています。


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