見出し画像

米論文から京大ALS治療薬候補「ボスチニブ」を考える、

ALSの治療薬候補「ボスチニブ」のリーダーである京都大学iPS細胞研究所の井上教授はこの論文をご存じだろうか?

アメリカの著名教授陣による論文(アメリカ神経学会 2016年)ですので恐らくご存じのはずです。

こちらの論文です:

論文の内容ですが、ALS患者の進行について一時的な進行停止や改善例の調査結果です。前回の記事の延長で検索していたら目に入り、改めて目を通した次第です。一部の内容は以前当方の記事(昨年11月28日)でも紹介させていただいています。

この論文による調査結果は次の通り:

  • 3,132 人の 25% が6 か月間の進行停止

  • 2,105 人の 16% が12 か月間、進行停止

  • 18 か月間、1,218 人の7% が進行停止

  • 少々のALS 逆転(症状回復)もあり、特に間隔が短い場合に顕著

  • 12ヵ月間 ALSFRS-R ポイントが 4 つ以上改善した患者は 1% 未満

続けます、

すべての論文には結論があります。論文の結論に目を向けることが一番大事です。

この論文の結論は次の通りでした:

Conclusion: ALS plateaus and small reversals are common, especially over brief intervals. In light of these data, stable disease, especially for a short period of time, should not be interpreted as an ALS treatment effect. Large sustained ALS reversals, on the other hand, are rare, potentially important, and warrant further study.

当方訳)

結論:ALS の進行停止と小さな逆転は、特に短い間隔で珍しくありません。 その為、特に短期間の進行停止はALS治療効果として解釈されるべきではありません。一方、持続した顕著なリバーサルの症例は稀である為、潜在的にも重要であり、更なる研究が必要です。

この論文の結論をみて、わたしは即、京大ボスチニブを思い出しました。

一昨年10月のニュース「京大、ALS患者の病気の進行停止 iPS創薬で成果」は記憶に新しいはずです。昨年世間を賑わせ、そして我々患者に希望を与えてくれました。しかし、その後、第二相の治験の内容を見て疑問に思った記事を約一年前に当方書いています。サンプル数が極端に少ない点、リパーパスドラッグなのに非常に足の長い治験の進め方、何故製薬会社が治験を勧めないのか、といった点が当方の大きな疑問でした。

当時のニュースの主要ポイントは、2021年10月1日日経新聞:

「1日に100~300ミリグラムを12週間投与した。投与期間中と終了後に、会話や食事、歩行などをもとにALSの重症度を評価する方法で調べると、9人中5人で病気の進行が3カ月止まった。」

9人中5人ということは、55%が3ヵ月の進行停止ということです。新聞によると比較期軽症の方が治験に選ばれています。

さて、論文のデータと照らし合わせましょう、「6 か月間、3,132 人の 25% が進行しませんでした。」ということは、3ヵ月という更に短い期間においては、55%進行していないグループ がいるのは珍しいことではないと自然に解釈できることになります。

よって、この米論文の結論と照らし合わせると、「9人中5人で病気の進行が3カ月止まった。」は、治療の効果としてみるべきことではないということになります。

わたしも進行が半年から一年近く進行しなかった時期がありました。ALSFRSスコアで1点動いたか動いてないか、というレベルでした。残念ながらその後進行があります。

約一年前、当方の記事で書いた京大ボスニチブの当方の最大の疑問点は、進行が止まったとされる5人の方のその後の状態を明らかにすべきだということでした。ただそれに対しての情報は未だありません。私が新聞記者なら取材しますし、実際取材をしている記者の方もいらっしゃるかもしれません。

さて、当方のこの疑問とは別に、そろそろ京都大学iPS細胞研究所は、第2相の中間報告が出来るはずです。第2相の治験が始まって半年以上経っています。25名のうち、何人の方に本当に進行停止効果があるのか、ないのか等、彼らは知っており、中間発表できるはずです。他方、当方の情報筋では残念ながら我々が望んだ結果にはなっていないようです。が、勿論グッドサプライズがあればベストです。

ボスニチブの小出しのニュースが、iPS細胞研究所の存続のためのプロモーション施策の一つとして使われていないことを願います。本当に効くのなら、政府を巻き込み、早く患者がアクセス出来るようにすべきです。

他方、明日にはFDAが認可か否か発表するトフェルセンの前回の諮問会議においては、治験期間についても議論がされています。短い期間で判断できない可能性が指摘されています。そういった現状もあり、今アメリカでは現在苦しむ患者を救う可能性の重要性に着目し、早期アクセス(EAP)や早期認可が政府の方針で実施されています。日本政府、厚労省にはここに着目し実行していただきたいです。

以上です、


当時の記事:


###


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?