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ジョン・コルトレーン・カルテット『クレッセント』

 高田馬場にあった「ムトウ」は大学に通う途中にあったこともあって本当にお世話になったレコード店で、道を挟んで2店あったうちの片方にあった、半地下のようなジャズコーナーは、そこでいくつも大切なアルバムを購入した場所だった。

 ジョン・コルトレーン・カルテット『クレッセント』もそんななかの一枚で、紙ジャケット仕様で何枚か集中して出たラインナップのひとつ。 #applemusic で久しぶりに聴いてみて、なるほど前後にひしめく「名盤」の間で少しばかり地味な色合いであることも納得しつつ、同年に録音される『至上の愛』の、準備というか前段というかプロローグは、すっかりここで出揃っていることが聴こえてくる。かつ、後期には薄くなっていく「メロウなコルトレーン」という感じの要素がここにはまだ残っていて、それは例えば〝ワイズ・ワン〟の演奏に顕著に現れる。コルトレーンの「歌心」に耽溺したいとき、自分は例えば『バラード』よりも、むしろこちらを思い返す気がしている。

そして、最後を飾る〝ザ・ドラム・シング〟の素晴らしさ。ジミー・ギャリソンの太っといベースと、エルヴィンの土着宗教めいたドラミングがフィーチャーされた演奏の迫力が、アルバムの輪郭を太っとい描線で浮かび上がらせる。まさに有終の美という感じがする。

https://music.apple.com/jp/album/crescent/1440856835

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