無人島に持っていくジャズ

無人島に持っていくジャズ――という設問を、以前は「一番好きなアルバム」くらいに考えていたのだけれど、「無人」の場所に持っていく前提を考えるなら、楽器で選ぶべき気もしてくる。例えばピアノのアルバムよりもヴォーカル……もし歌ものを選ぶのではないとしても、管楽器のあの、声の延長としての楽器が出す音を体が求めるような予感がある。

ラサーン・ローランド・カークは自分にとっての全音楽ジャンルにおけるもっとも大切な音楽家のひとりなんだけど、上記の条件にもまた、みごとに合致する。年の最後に、いったい今の自分はカークで一枚選ぶとしたら、何を選ぶのか自問してみたら、これに手をのばすことになった。
https://www.discogs.com/ja/release/6472055-Roland-Kirk-Sweet-Fire

70年に行われたコンサートを94年にリリースしたライヴ盤。僕はこのアルバムに収録されている〝Sweet Fire〟が、心の支えだった時間をとても長く過した。「この曲のためなら死んでもいい」というのは大げさだとしても、自分が死ぬときに、この曲が頭をよぎる可能性は、多分とても高い。

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