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水槽の彼女〜カバー小説【4】|#しめじ様

しめじ様のnoteの小説からインスパイアさせて頂き、カバー小説を継続しております。

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【過去の投稿】




カフェのドアが開いた。


collapserコラプサーの彼女が、おもむろに入って来た。


そしてカフェ全体を見渡して僕を見付け、真剣な顔で、真っ直ぐ近付いてきた。


かがめながら顔を寄せて、彼女は言った。


「お願い。―――すぐに、此処を出て。
遠くへ離れたいから」



彼女は荷物を何ひとつ持たず、文字通り着のみ着のままで部屋から出て来たようだった。


僕と彼女は、車中、並んで座っていた。彼女は助手席で肘をついて、ずっと窓の外を眺めていた。


僕は運転しながら、彼女に横目で声を掛けた。


「・・・何処か、行きたい当てはあるの?」


彼女はゆっくりとこちらを見た。驚くほど“空っぽ”の表情だった。


「・・・無いわ」


―――冷たい声。

(何故、信じられないことを訊くの?)と言いたげな顔だった。僕はひるんで二の句が告げなかった。


所在が無くなり、ダッシュボードに置いた煙草に手を伸ばして、1本口にくわえた。


「吸っても良いかな?」


「・・・良いわ」


また彼女は外へ目を向けた。僕は窓を少し開けて、煙草の火を点けた。煙を吸っているうち、頭がすっきりしてきた。


「今は、僕の家の方へ向かっているんだ。・・・もし、当てが無いなら、まず一旦僕の所へ来る?

君をそのへんに放り出すのは、ちょっと心配だから」

その提案を、彼女になるべく誠実に聞こえるように、意識して低いトーンで言った。


彼女は今度は、窓を向いたまま振り返らなかった。


「良いわ・・・」




途中、コンビニエンスストアに寄って、歯磨きセットやら化粧水やら、泊まるための諸々の必要品を買った。


彼女は手ぶらで自分が支払えないのを申し訳無さそうにしていた。


また高速に乗って、2時間ほど車を走らせたら、僕の住む街に入った。


「―――君、着替えとかも要るよね?」

「そうね。・・・でもやっぱり、買ってもらうことになるわ」

彼女の話し方は、ハイティーンの見た目に似合わず、妙な分別くささがあった。

「いいよ。じゃ、見に行こう」


彼女はファストファッションのショップで良いと言った。その店舗なら、どこの街のモールにも有る。
街の地図を思い出しながら、ハンドルを切って行った。



ショップで物色する彼女を遠巻きに見ながら、段々と、僕は冷静になってきた。


最初は、弱き者をたすけるヒーローの気分だった。


そのあと、(おかしな話だが)家へ来るとなって、ペットを飼い始めるような浮き立つ心持ちになってきた。


そして、今。


(おい、よく考えてみろ・・・)

これは下手したら、【未成年者誘拐】になってしまうんじゃないのか?


―――まさか、ネットニュースになる訳じゃないよな。


職場の同僚や上司の顔を浮かべながら、ちょっと冷や汗を掻き始めている自分がいた。


彼女が売り場から振り向いて、笑顔で僕の顔を見た。買うものが決まったんだろう。


そのときの顔には、papaから離れたいと言ったときの剣呑さや、車中でのかげりのある気配は見られなかった。普通のハイティーンだ。


(―――もし話したがらなかったとしても、やっぱり彼女の事情をきちんと確かめなければ駄目だな・・・)


僕はその重要性を再認識して、どうやって話を切り出そうか、服の代金を支払うべく彼女の元へ歩きながら考えていた。
 
 


▶Que Song

天国/Dios 



【continue】


    


 
はい、今日はここまでです。

書き始めが遅くなりましたので、短くなってしまってごめんなさい。


次はようやcollapserコラプサーの彼女の背景が語られます。重めです😌🥀


お時間があれば、どうぞお読み下さいませ。コメント頂きましたら学びになりますので、何なりとお願いいたします!!


ちなみに、「Que Song」のDiosは、音楽性・リリック・MV三拍子揃っていると惚れ込んだアーティストです✨


このあとの話もDiosの曲のイメージにあわせていきたいと存じております♪ 




お読み頂き有難うございました!!


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コメント頂きましたら泣いて喜びます!!


また、次の記事でお会いしましょう!



🌟Iam a little noter.🌟 



 🩷


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