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「被害者が加害者にお礼を言うわけない」について

これは某芸人の某ニュースを見ていて思ったことなんだけど、
私にはあの事件の真相がわからないので、ぼかしておきます。

それから、あの事件に関しては、どちらが正しいとかどちらの話を信じるとか、
そういう私の個人の意見は書かないです、私が書きたいこととはズレるので。

某芸人の某ニュースとはなんぞ…?って方には意味不明になってごめん。

本題へ。

結論から言うと、「被害者が加害者にお礼を言うわけない」という意見に関しては、
私の経験を以って、「違う、被害者も加害者にお礼を言ってしまう」と言えます。

はあ、なんだかいつもの自分のように上手く書けないやこの時点で笑
めちゃくちゃ吐き気がしてきた。
一旦休憩します。

戻ってきました。
だが、書きたい!という気合でなんとか。
自分の気持ちを整理するためにも。

私は去年のちょうど今頃、転職したばかりの会社で、上司との関係性について相当悩んでいました。
まぁその、言葉を選ばずに言うと「パワハラ」というやつです。

正直、今でも「パワハラ」という言葉を使うことに躊躇してしまいます。
これを書きながらも、「なんて表現しよう…」と悩んでいるくらい。

自分でもわからなかったんですよ、あれがパワハラだったのか。
今でもわからない。

詳細を書くと長くなるので省くけれど、たぶん当時のnoteにもちょっとだけ書いてると思う、ちょっとだけね。
いつも気持ち悪いくらい自分の体験談をそのまま全て晒け出していた私が、
なんでこのことをちょっとしか書かなかったかというと、
「怖かったから」、それに尽きる。

というのも、実際に会社でこのことが問題になって、
いろんな人が問題解決のために動いてくれたんだけど、
ご想像の通り(?)、
「それって本当にパワハラなの?熱心な指導なんじゃないの?」とか
「あなたにも悪いところがあったんじゃないの?」とか
「何でも『ハラスメント』にされて難しい時代だね」とか、
そういうことを散々言われたんですね。

その言葉に悪意がないことはわかります、
会社としては、組織としての判断をする必要があるし、
当時の私のようなぽっと出の新人の言葉で一人の上司の人生を簡単に潰すこともできなかっただろうし、
両者の話を中立な立場で見極める必要があったと思うから、
最初から私の話を100%鵜呑みにすることはできなかったんだと思います。

そのことは当時も頭ではわかっていたけれど、
やっぱりメンタルに来るものはありましたね。

実際、自分でもあれが本当にパワハラだったのかよくわからない部分もあった。
私自身、最初は「パワハラ」という言葉を使わず、
「上司との関係性について悩みがある」とかそんな感じの表現にしていたと思う。
同僚に相談に乗ってもらっていくうちに、その言葉を聞いた。
だからこの言葉について自分でもたくさん調べた。

みんなの前で見せつけるように叱責されるとか、
暴力を振られるとか、
暴言を吐かれるとか、
そういうことがパワハラに該当するらしく、
それで言うと私がされていることはパワハラではないな…とは思った。

けれど、どうしようもなくつらいのも本当で…

「これはパワハラではないけれど、上司の指導によってつらい思いをしている」という、至って普通の解釈ができれば良かったんだが、
そういう正常な判断もできないくらいに落ち込んでいたので、
「これはパワハラではないから、上司は悪くない!私が無能で弱いだけ!何も問題はない!」
みたいな解釈に持っていってしまったんですよ、自分の中で。

短期的に考えると、その解釈をする方が自分にとって楽だった。
パワハラ認定してしまえば上司との関係はさらに悪化するだろうし、
自分の勘違いだったということにしてしまえば、もう事情聴取もされなくても済むし、
「あなたの心が弱いだけなんじゃないの?」という、ある種セカンドレイプみたいな言葉も向けられなくて済む。

だから、現状仕事で悩んでいるということは相談するくせに、
いざ経営陣から「大丈夫なのか?」「こんなことにしてしまって申し訳ない」と言われると、
「全然大丈夫です!」と答えてしまった。
「もちろん厳重な対応を検討しているけれど、彼にも家族があるから、今すぐ彼をクビにするという選択はできないことはわかって欲しい」
と言われても、「クビなんて望んでません。私の至らなさ故なので…感謝もしています。むしろ、熱心にご指導いただいたのにこんなことにさせてしまって申し訳なく思います」と上司を全面的に擁護する形で歪なやり取りになってしまい、
解決を長引かせてしまった。

その後、ほとんど毎日電話で相談に乗ってくれる母の勧めもあって
上司の陰湿な発言や態度を録音することに成功し、
その証拠を提出して、ちょっとずつ事態は動き出した。
そして、「その上司の元から離れましょう。あなたはチームを抜けましょう」と
経営陣から声をかけてもらえたのだが、
私はそれを断った。
「私にも悪いところはあったからやり直すチャンスが欲しい」と言って、
その上司の元を離れないことを選んでしまった。

今思うと、実に意味不明である。
クズな恋人に依存している状態と何ら変わらない。
もはや洗脳に近かったんだろうな。

そんで、じゃあなんでつらいのに断ったんやい!という疑問を向けられると思うのだが、
理由はいくつかある。

まず、一つ目。クビになることが怖かったから。
というのも、私がこの会社に転職して初めに配属されたこのチームには
私の入社と同じタイミングで退職を控えた先輩がいた。
私はその人の穴埋めで配属されたということ。
そのことについて、この上司からこんなことを聞かされていた。
「あの人は本当に他責で、仕事ができなくて、いろんなマネージャーから投げ出されて、最終的に私のところへ来た。だけどご覧の有り様で、彼にはお引き取りいただくことにした。彼は『転職』と言っているけれど、実際は…そういうこと
(クビになった、と明言はしなかった)」

入社して1週間とかでこれを聞かされてたので、
あぁこの会社は、無能を容赦無くクビにする会社なんだなと思ってしまっていた。
だから、入社してすぐの私が上司と問題を起こそうものなら、
きっと私もクビにされるんだろうなと思うと、
チームを離れるという決断は早々できなかった。

だってきっと他のマネージャーにもこの話は伝わるでしょう?
そしたら、「えーそんなことでハラスメント扱いしてくるような新人、俺だって欲しくないよ」となってしまうだろう。
結果、私を入れてくれるチームなどなくなり、自主退職するしかなくなる…
それが怖かった。

次に、二つ目。周囲の目が怖かったから。
これは一つ目と重なるんだけど、
仮にクビにならなかったとしても、
「入社してすぐに上司をハラスメント扱いしてチームを崩壊させた新人」という印象は免れられないので、
社内で腫れ物扱いされることになるんだろうな、という未来が想像できて怖かった。

最後の、三点目については後で書きます。

これまたいろいろあって、
まぁチーム離脱を断ったといえ、上司との関係性が改善するはずもなく、
私は体調を崩しがちになって在宅勤務が増えてしまい、
「体調管理ができてない」ことについてさらに上司の怒りを買ってしまい、
最後の方なんかは、「いつ・どの地域の・どういう病院を受診するか」について
毎朝2時間くらい1対1のオンライン会議で問い詰められ続けるような日々になっていた。

朝起きると、吐き気とめまいで玄関を出ることさえできなくなり、
結局自分から、チーム離脱を希望した。
この点については本当に良くなかったと思う。
中途半端にチーム編成やクライアントとの契約調整をさせてしまうことになるのなら、
最初から私が素直にチーム離脱に承諾していれば、
経営陣にもクライアントにも迷惑をかけないで済んだ。

そして、このことに悩み始めてから半年くらい経ってようやく私はこの上司の元を離れた。

その際、社長との面談があった。
この時に社長に言われた言葉が今でも忘れられない。

「俺さ、あなたが躁鬱病じゃないかと思うんだよね。だってさ、あんなにハラスメントに悩んでたのに、その上司に笑顔で手振って退社してたんでしょ?聞いたよ」

あぁ…あああ…

これですよこれ、冒頭の「某芸人の某事件」の被害者とされている女性が、
SNSやニュース番組のコメンテーターたちから現在進行形で散々誹謗中傷されていること。

「本当にひどいことをされたのが事実なら、被害者が加害者にお礼を言うわけない」
って。

いやいや、言うよ。
私が、パワハラ上司に笑顔で手振って退社してたのは事実だよ。
何なら、「上司さんの〜なところを学ばせていただきたいです!」とか
「いつも親身にご指導いただき大変恵まれた環境でお仕事させていただけることが光栄です」とか
そんなことまでチャットを送ってたよ。
関係が悪化すればするほどね。

お世辞だったのかな?自分でも本心はわからない。
だけど、本当に怖かったんよその上司のことが。
できれば仲直りしたかったのよ、仲直りという言葉は子どもじみてるけど。
和解したかった、穏便に済ませたかった、やり直したかった。
だって、めちゃくちゃ怖いから。
だからもう、すり寄るしかなかったんよ。
言っちゃえば、思ってもなくても媚び売るしかなかったんよ。
それが自分の身を守ることだと思ったから。
これ以上目の敵にされたら、何されるかわからなかったから。
さっき書かなかった最後の、三つ目の理由はこれ。

めちゃくちゃ悩んで、怯えて、怯えきったからこそ、
敵対じゃなくて親交にシフトチェンジしたんよ。
自分を守るために。
この苦痛から解放されるために。

それなのに、
自分を傷付けた上司に自分から明るくコミュニケーション取りに行ったら、躁鬱病扱い?

本当にありえない、と思った。

さらに、社長の言葉は続いた。

「試用期間を3ヶ月延長させて欲しい。これはむしろ俺からのお願いなんだ。
あなたはこの会社の風土にも合ってると思うし、最終面接もとても優秀だった。
だからもう一度精査するチャンスが欲しい。一緒に働きたいと思ってるからこそ、時間が欲しいんだ」

言葉を失ったね…
自分の身を守るために、自分を傷つけるものと和解しようとしたら、
精神病扱いされて、
挙げ句の果てには、クビにするかどうかの判断をさせて欲しい、って?

この上司に問題があるからではなく、
私が躁鬱病、つまりは感情の起伏が激しくてヒステリックだから揉め事を起こしてるんだ、って?

ありえないよ、あんまりだよ。

この会社を信じて入社して、
「悩んだら何でもすぐ上に相談して」
「この会社は家族だから」
って言ってくれたのに、
その言葉を信じて悩みを打ち明けた結果がこれ?

あの時は、本当に絶望したね。
世の中にも、この会社にも、社長にも、この会社の全員にも。
もう誰も信じられなかった。

あまりにひどい仕打ちだと思った。

ここまで書くのにめちゃくちゃ時間がかかった。
そもそもこの某芸人のニュースを知ってから、
何度もこのnoteを書こうと思った。
でもその度に、「いや私が悪かったんだ」という気持ちが戻ってきて書くのをやめ、
それでもやっぱり世間に訴えかけたいことがある!と思って書こうとして、
いざ書こうとすると思い出したくもなくて手が止まって…の繰り返しだった。

今はなんだか、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけすっきりもした。

そうね、あの事件、
「そんな昔のことをなんで今になって告発したんだよ!金目当てだろ!」とかも言われてるけれど、
その事件での真偽はわからないけれど、
「こういう立場が上の人間と下の人間の間で起きるハラスメント」という一般論で見ると、
お金目当てじゃないと思う。

めちゃくちゃ勇気がいるんだよ、自分の傷に向き合うのって。
もうできれば一生思い出したくもないし、
だけど許せない気持ちは消えないし、
同じ思いをする人が現れてほしくないから情報を公にしたいと思うけど、
それに対して心無い意見が飛んでくることも想像に容易いし、
…だから、私だって1年近く経って今ようやくこうしてここに書けてるんです。

ね、いつも見てくれてる方ならわかってくださる?
私って、その日あったことをその日の夜には投稿するタイプじゃん?
そんな無鉄砲女でも、このことを書くのを決心するのに1年近くかかってますからね。

言葉の暴力程度でこんなにつらいんだから、
社会的に立場のある著名人からの性の暴力が本当なのだとしたら、
それを8年かけてまで告発したかった気持ち、
告発するのに8年もかかってしまった気持ち、
どちらも痛いほどわかります。

この事件に限らずね、
同じような心無い言葉を投げられて傷付いたみなさん、
サイテーな恋人を突き放すどころか依存してしまうみなさん、
自分に問題があっただけなんじゃないか?って思ってしまうみなさん、
大丈夫。私はあなたの味方です。

世間に何と言われようと、自分を責めないでくださいね。
その日を何とかやり過ごすことが先。
自分の気持ちを心ゆくまで労ってあげるのが先。
告発なんていつしたっていいよ、水になんか流さなくていいよ。
時間が経ったんだからって許してあげる義理なんてないよ。
自分の穏やかメンタルを最優先していこう。

被害者が加害者にお礼を言うことだってあるよ、何もおかしいことじゃないよ。
その時、自分の身を守るために最善の選択をしただけなんだよ。

これは、私の経験談に基づく個人的な見解ではありません。
「ストックホルム症候群」というものがきちんとあります。

ストックホルム症候群(ストックホルムしょうこうぐん、: Stockholm syndrome、: Stockholmssyndromet)は、
誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者についての臨床において、
被害者が犯人との間に心理的なつながりを築くことをいう。
ただし臨床心理学における心理障害精神障害)ではなく、
心的外傷後ストレス障害として扱われる。
被害者が犯人と心理的なつながりを築くことについて「好意的な感情を抱く心理状態」と判断して表現しているものが多い。
さらに誘拐や監禁以外の被害者の反応についても表現されるようになり、ストックホルム症候群という用語の用法にも方言がある。

「被害者が加害者にお礼を言うわけない」、
なんてそんなことはない。

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