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あのたび -コタバルと蚊取線香-

 カナーンゲストハウスを朝に出る時、JOYさんは支払いを1Bまけてくれた。さらにこれからマレーシアまで行くと伝えると、長時間になるからとミネラルウォーターをくれた。根っから親切で他人のお世話をするのが大好きなんだろうな。宿がつぶれませんように、と祈る。
 あーだからここを利用した旅行者はみなこの宿をすすめるんだな。より多くの旅行者に知ってもらって泊まってもらうのが恩返しになるから。カンチャナブリへ行くことがあったら是非カナーンゲストハウスを利用してください。

 バスでカンチャナブリからラチャブリへ38B。ラチャブリからホアヒンまで100B。ホアヒンの鉄道駅まで行くが、アクシデントで電車は4時間遅れ。そして大雨。しかも3等席は満席で2等席しかないとのこと。タイバーツはギリギリしか持っていなくて2等席は380B(≒1100円)。残りが21Bしかなくなった。

 電車は遅れ、翌日昼の2時前にタイの南端・国境の町スンガイコーロク着。歩いて10分ほどでマレーシア国境だ。マレーシアは90日以内の滞在ならばビザは不要。日本国のパスポートを持っていればあっさりとスタンプを押してもらって入国できた。国境での両替は1$=3.65RM(リンギット)。1RMはだいたい30円ちょっと。ちょうどタイバーツの10倍だと考えると計算が楽。

 近くにバスターミナルやバス停が見当たらず、アーケードの端にいるバスがコタバル行だという。エアコンバス3.2RM(≒100円)30分でコタバル着。

 タイではバイクやトゥクトゥクを多く見たが、マレーシアは車社会で車ばかりだ。エアコン付きは不要なのに標準がエアコンバスだ。バスを降りても客引きがいない。いままで通ってきた東南アジアの国々と比べはるかに豊かで裕福なのだろう。

 マレーシアの情報はほとんどない。唯一、安宿1軒の情報だけあった。Idealツーリストハウスという名前だけで探すがなかなか見つからない。普通のホテルはあるが、1泊2~3000円だという。いままで数百円くらの安宿に泊まってきたのでいきなりそんな高級なとこには泊まれない。ホテルのスタッフに聞いてもIdealツーリストハウスは知らないという。1時間くらい歩き回っておよそ民家に近い作りのその宿を発見。ドミトリー1泊7RM(≒210円)。おそらくマレーシア最安だ。

 部屋にはエアコンがなく蚊が多い。足の膝から下を蚊に刺されまくるので、短パンをGパンに変え、靴下を履いて寝る(暑い)。それでもぶんぶん蚊がうるさく眠れない。すると宿の人が蚊取線香を持ってきてベッド脇に置いてくれた。蚊取線香って昭和の日本だけのものかと思っていたのだが外国にもあったのか!英語ではモスキートコイルという。スーパーや市場でバラ売りされていたりする。
 それからマレーシアの安宿では毎夜、蚊取線香を炊いて寝ていた。

 タイから南下して来たボクは、国境を越えただけでがらりと変わるその街の雰囲気に気後れした。コタバルはマレーシアの中でも特にムスリムが多く、女性のおよそ9割以上がスカーフに身を隠している。半そでに短パンなんて夏のような格好をしているのは欧米人旅行者くらいである。

 楽しみにしていた屋台の多く立つナイトマーケットに入ろうとすると、入口に立つおやじにまず止められた。もしかすると外国人は入場制限があるのか、と断られた理由がわからずうろうろしていた。

 これはどうやらコーランのお祈りの時間が終わらないとマーケット自体が始まらないということだったらしくひと安心。しかし言葉もわからず注文の方法もわからない。その前に1ヶ月ほど滞在していたタイに比べ値段も高いような気がする。

 思い通りのものが頼めず、周りの人たちに合わせて道具を使わず右手だけで食べようとしたため上手に食べることができない。粘り気のあるご飯を固めた日本のおにぎりとは違い、マレーシア米は握っても固まらない。右手で掴んだはいいがそれをどうやって口の中に運んだらいいものか。口の周りも手も汚れそれをどこで洗ったらよいかもわからず、味を楽しむことはできなかった。
 ちなみに左手は便をしたあとに水洗いするのに使用するため不浄の手とされ、食事の時に使ってはいけないのだ。

マレーシアルート(前半は左)

(つづく)


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