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〈伝説の歌姫〉玉井詩織:第2回ももクロ一座「CHANGE THE FUTURE」でボロ泣きした話

2年間、待ちに待った玉井詩織さんの座長公演、第2回ももクロ一座「CHANGE THE FUTURE」(明治座)が幕を上げ、熱狂のうちに無事に千秋楽を終えた。2023年11月25日(土)から12月3日(日)までの9日間、一座は14公演をあっという間に駆け抜けた。実にあっという間だった。自分はほんの一日、11月29日(水)の昼と夜の2公演を鑑賞できたにすぎないが、疾風の如く駆け抜けた一座の、一日だけでも捕えられたのは幸運だったのだと思う。

ももクロは、見逃していると、あっという間に置いていかれる。かけがえのない今、この時。玉井詩織さんの今は、今しか見られない。今しか、今の玉井さんを目撃できない。今しか、今の玉井さんに心を震わすことはできない。今、今、今。「ももクロは、常に“今”が一番面白い」川上さんの至言である(『QJ Special Issue, ももいろクローバーZ〜The Legend〜2008-13』2013年刊)。アイドルを追いかけることがどんなことなのか、今回、身に焼き付けられるように知った。

ミュージカル初・体・感

第2回ももクロ一座でミュージカルをやることになった経緯は、各メディアのインタビューで玉井さんや本広克行監督により語られている(毎日新聞SPICEローチケ演劇宣言!日経クロストレンド、他)。そう、テレビ朝日の15分番組「ももクロちゃんと!」に本広監督が出演した際、玉井さんがあろうことか「オリジナル楽曲でミュージカルをやってみたい」と口走ってしまったのだ(2020年11月6日放送)。すべてはここがスタート。あの時、確かに「おおー!」とは思ったが、ここまでのものとは想像していなかった。そもそも個人的に、まともにミュージカルを見たことがなかった。何も知らなかった。ミュージカルってこういうことだったんだと。

あの恐ろしいほどの感動、心の震え、舞台との融合。あの共鳴。ミュージカルの存在理由を知った。何が魅力なのかを身をもって体感した。主人公の感情が歌に乗り、観る者を巻き込んで、舞台もろとも、ぐわわぁーーーっと高まっていくということ。玉井さんの歌唱のたびにぐらんぐらんに揺さぶられた感情は、最後、玉野栞里さんが幕の後ろから現われるとこから一気に上昇、そこに畳みかけるような大友康平さんのアカペラに胸ぐらを鷲づかみされ、大団円のラスト、玉井さんの熱唱でピークに達した。とめどなく頬を伝う熱いものを、首にかけたタオルで何度もぬぐった。いやぁ、自分でもびっくり。こんなにも昂揚するとは。たぶん、ステージから丸見えだった。あーりんにガン見された気がする。「あいつ、あんなに泣いてるぞ」と。それぐらい、玉井さんが溢れた舞台だった。それほど圧倒された。直球で投げられた今の玉井詩織をがっつり受け止めた感があった。観終わった後、しばし放心、第2部のライブに切り替えるのがちょっともったいなく思った。(と言いつつ、これまで温存してきた喉をなぜかここで潰す…弱々の喉…)

〈伝説の歌姫〉とは誰か

伝説の歌姫、玉森栞里。玉井さん演じる玉野栞里が迷い込んだ異世界における〈伝説の歌姫〉だ。玉野は、その歌姫と間違われるが、自分ではないと答える。しかしこの異世界は、実は玉野が作り上げた想像の世界。つまりは自らの深層心理で名前も顔も自分にソックリな歌姫を作り上げていたのだと言える。合唱で歌うことが好きだった玉野にとり、歌姫はずっと憧れの在り方だったのだろう。しかし自己と対象とのあまりにもの落差。歌姫に間違われると速攻で否定し、お役に立てず申し訳ないと言う。ところがラスト、玉野栞里は実際の歌唱によって、しかも顔を隠した状態で、ただ歌唱だけによって、皆から歌姫に匹敵すると称賛される。

すなわち、〈伝説の歌姫、玉森栞里〉=玉野栞里。この設定のために、玉井詩織さんがどれだけ頑張ったか。どれほどのプレッシャーを受けたか。想像を絶する。終わってみると、SHIORI TAMAI 12Colorsのソロ曲配信プロジェクトもすべて、ここに収斂していたのかもしれないと思われてならない。

一心同体ももたまい

異世界に住む、玉野栞里の分離した人格「かなやっこ」を演じる百田夏菜子さん。さすがだった。栞里の元気玉の部分を凝縮した「かなやっこ」を弾けるような身振りと満面の笑顔で演じ、破天荒に明るい部分を舞台にぶつけていた。

一方、玉井さん演じる栞里は、内気な性格で、常に「私なんか…」と自分に自信のない設定。この自信なげな舞台的所作、表情のわかりやすさ、手足の動きのキレ。玉井さんは、やっぱり舞台映えするなぁ、女優だなぁ。そして何より、可愛い。玉野栞里さんの可愛さについては、語り明かせる。(ほんとに28歳なんだろうか?)

この二人のかけ合いのシーンが、対照的で、よく出来てる。二人の温度差というか。玉井さんは熱海五郎一座でツッコミとボケの腕を磨いたが、今回もかなやっこへのツッコミ、間違いを率直に訂正する形でのツッコミの「間」が絶妙だった。首の青筋立てて口角泡を飛ばす土岐架ちゃんとはまた別のツッコミパターン。とにかく二人だけのシーンが多く、稽古も二人で過ごしたんだろうなぁ、二人で演技や歌のことも話し合ったりしたんだろうかと、胸が熱くなった。

そして、特筆すべきは二人のデュエット。これまでもフォーク村で、ももたまいのハモリを聴いてきたけど、煌びやかな百田さんの声と奥行きのある玉井さんの声は、なかなか上手く混じり合わない。ところが今回、なぜかわからないけど、二人のハーモニーはとても綺麗に心地よく重なり合っていた。あれはどういうわけなんだろう。専門家の解説を聞きたい。坂崎村長、お願いします。

座長公演の向こう側

初日が明けた後、本広監督はインタビューでこのように語った。

しおりんって、一番頑張っていても、それが分かりにくい子なんですよね。疲れていてもしんどいとも言わないので。でも、今回の舞台ではしおりんがぼろぼろになると思います。ぜひそんなしおりんのエネルギーを見てほしいですね。

日経クロストレンド、2023/11/29

公演後、共演者の方からも、玉井さんの稽古風景や座長としての振る舞いを髣髴とする、胸を打つコメントが出された(彩羽真矢さんのインスタ2023/12/5大友康平さんのブログ2023/12/3)。

オリジナル曲による本格派ミュージカルに座長として臨んだ玉井詩織さん。おそらく心身ぼろぼろになりながらも、それを一切匂わすことなく、周囲の人たちには配慮と尊敬の念を持って接し、かつ自分の芝居と歌を仕上げてくる人。そんな玉井さんは、座長公演という壁を乗り越え、これからどこへ向かうのだろう。今、その胸の内に、憧れの在り方として存在するものは何だろう。それが何であろうと、さぁ行け!玉井さん! あなたの挑戦に最高の賛辞と、エールをお送りします。

最後の最後に!

あーっと、そうだ。最後に監督! Blu-rayにはメイキング映像を必ず付けて下さい! 長尺のメイキングをーー!

(おまけ記念ショット)

昼公演は座長弁当🍱!焼き野菜、焼き目が付いているのが座長のこだわり
夜公演は、ちゃんこ🍲!昼で様子を知ったので、入場列に早めに並んで20人目くらいで難なくゲット!

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