ラノベを書くことと受験勉強

ファンタジー小説を書く上で、必要ない科目は何一つないと仰るりとさん。
僕もそのご意見には賛成です。

ただ、この書き込みでは数学を思いつかれなかったようなので、僕が当時Twitterで書かせていただいた内容を増補しながらまとめます。

受験数学といえば、発想の東大、論証力の京大という言葉があります。閃きがないと東大の問題は解けない、証明問題には確固たる論省力がないと京大の問題は解けない、という意味の言葉です。
では、東大の問題は天才でなければ解けないのか?
そんなことはないんですよね。

突飛に見える発想も、実は思いつきではなくて、前知識が豊富に蓄積されているからこそ導くことが出来るのです。
東大のある問題が、多くの受験生を地獄に落としました。
99年の数学、加法定理の証明や、三角関数の定義の問題は、伝説の良問と言われています。
誰も彼も正しく定義も言えないのに、それを応用して頭でっかちになって。そんな受験生を一喝する問題でした。

また、京大を筆頭に、論理的に物事を考察し、推論し、検証する能力は、数学で得られる筆頭の能力です。
丁寧で柔軟な思考力があってこそ、自己矛盾を起こす設定を避けることもできますね。
循環証明なんて、ダメ、絶対です。

今の教育課程だと、外国語科(英語)の科目に論理・表現というものがあります。
数学科の先生などには、英語の先生に論理なんて教えられるんですかと心配されるぐらい、数学と論理学は近しいです。
なお、論表でいう論理とは、せいぜい意味ある文章を、説得力を持たせて生成しよう、という程度ですから、英語の教員でも問題ありません。

どちらかというと、言語をやるっていうのは、思想や哲学に近いものがあるので、ファンタジーものを書く・描くなら、その舞台を支配する宗教や思想を考察することにも繋がると思います。
他言語を習得するのは、丸々一つ、他文化を習得するのと似たようなものです。
思想や哲学は、歴史や地理の影響も受けますから、実は言語を学ぶというのは、学際的に非常に豊かな知識が求められるのです。

これは疑問なんですけど、ファンタジーラノベにおいては、主人公や登場人物たちが、あまり言語の壁で躓くことがないのですよね。不自然です。
転生した主人公が転生先の言葉を操れるのは、別に構わないんです。問題はそこではないので。

なんで、他国と普通に言葉が通じてるんですか。
二つの国は同じ言語を操っているから?
それともその国の人々は全員、他国語に堪能なんですか?
魔法の力?

こういうの、ライトノベルだからといい加減な設定を見ていると非常にモヤモヤします。
そういうことじゃない。
言葉の違いが文化の違いを表し、文化の違いが争いや戦争を生むんです。
言葉が近しい兄弟国なら、戦争は比較的まだ少ない。むしろ友好国が多い。
そういう設定が、少ないんですよね。
なぜ、あなたのいる国は近隣諸国とコンフリクトを抱えているのですか?
その設定はどこから来るのですか?
どうして言葉が通じる国で、その程度の問題が解決できないのですか?
……ね?

程度問題ですけど、ものを知るために上級学校に進むってのは悪くない選択肢だと僕は思います。また、実際に通うかどうかは別にして、受験問題に取り組むのも良い経験になります。
僕は仕事柄、旧帝大を含む難関大学の入試問題に触れる機会が多いですが、大変学びが多いです。
結果を出したいくせにそういう努力や根気を嫌がる人を、昔の人が素敵な言葉で表現してくれています。ワナビー、と。

経験は、残念ながらお金を積んでも得られないものが多くあります。
一方で、お金を積めば得られる経験も多くあります。留学などが分かりやすい例でしょう。
気象学者の新田次郎が『八甲田山』で描いたようなものは僕には書けませんが、幸い勉強はお金を積めば出来ます。
しかも高校くらいまでなら今の日本ではほとんどの人が行きますし、ほとんどお金もかかりませんから、その勉強をしないのは勿体ないのです。
超有名私学で莫大に金をつぎ込むなら別かもしれませんが。

では、以下でそれぞれの教科科目がどのように役立つのか挙げてみましょう。

国語:表現力や語彙力、文体の洗練
数学:考察力、考証、論証力や推理力
英語:言語や文化、思想、哲学
化学:物性や反応理論、空想魔法科学の設定
地学:天文、地質、鉱物
物理:電磁気や熱、波動、空想魔法物理の設定
生物:空想生物の創造
歴史:空想史の設定、史実を参照
地理:気候や風土、文化の設定
政経:政治体制、経済の設定
倫理:宗教の設定 etc.

世界観を練るのに不可欠ですよ!
これらは、やはり頭のいい人が作った作品では、無理なく矛盾なく、必要な情報がpreciseでconciseにまとめられているものです。

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