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『ウルトラマンマックス』を観ました。(第31話〜第39話まで)

凡例のようなもの

 以下の感想は再視聴当時(2020年7月26日〜2020年6月29日、2020年9月20日〜2020年10月23日)にふせったー(指定した箇所を伏せ字にしてツイート出来るツール。追加で長文も付けることが出来る)を使用してツイートしたものです。省略した句読点の追加や、語句の統一程度の推敲はしましたが、ほぼそのまま掲載しています。

 今回は第31話から第39話までの分を扱いました。

 全体的にネタバレや、感想を読む方が視聴していることを前提とした内容です。まだ未視聴の方は、その点をご留意ください。

『ウルトラマンマックス』第31話を観ました。

 人間は極度にやる気を出したり怠けてもいけないのだなあと考えさせられます。

 今回は人間に極度にやる気を出させ、燃え尽き症候群に追いやるモエタランガウイルスが登場しました。自分達の感情や脳の機能が無意識のうちに極度な状態にさせられる点については、第16話に登場した宇宙化猫にも共通するものがありますが、極度にやる気が出ているという点に限って言えば、その真逆の状態が『帰ってきたウルトラマン』第48話では紹介されていますね。

 『帰ってきたウルトラマン』第48話では、人間のやる気を極度に低下させるヤメタランスが登場しました。そのヤメタランスの効果範囲内の人間はやる気が極度に低下し、自分のやるべきこと――学校に通って勉強に勤しむこと、家事、火事などの危険なことにに対処すること――を放棄してしまうのでした。ただひとつ、いつも怠けている子供だけが怠けることに対してやる気を失くし、やる気を出してヤメタランスに対して対抗しようとしています。またヤメタランスの効果は地球外生命体であるウルトラマンの影響下にある郷秀樹に対しては効くのが遅かったのが特徴的でした。

 しかし今回のモエタランガウイルスの効果は平均的でした。モエタランガの放つ光波の影響下にあった人間は、ひとり残らずやる気を出させられ、モエタランガに対して立ち向かって行きました。その効果はウルトラマンマックスと一心同体になった変身者トウマ・カイトにすら現れ、彼がウルトラマンマックスに変身した後も持続しました。そのせいでウルトラマンマックスの変身限界は30秒で現れてしまったのです。

 ただモエタランガウイルスの効果は、トミオカ長官のような既に燃え尽きた老人に対しては良い感じに効果的でした。トミオカ長官は隊員達が倒れてしまった後、自らDASHバード3に乗り込み、モエタランガに対して時間稼ぎを申し出たのです。その効果はモエタランガ自身も想定外だったと見え、ウイルスの効果が切れてしまうまでトミオカ長官は立派にモエタランガに対して抵抗し、ヨシナガ教授とダテ博士の共作したワクチンが現場に届くのでした。

 ワクチンの効果はやる気を通常の程度に抑えるものでしたが、トミオカ長官がDASHバードに載せた梅の盆栽が花を咲かせていたのを見ると、その効果は人間だけではなく、他の動植物にもあったのかもしれません。興味深いですね。

『ウルトラマンマックス』第32話を観ました。

 ふたつの異種族同士のカップルの行く末が描かれました。

 ケサムに続く宇宙工作員が登場しました。ミズキ隊員は未だにケサムのことを気に病んでいるようで、回想を通してそのことが示唆されました。ミズキ隊員はケサムと「友達になれたかもしれない」と思っていたふしもありますし、今回また宇宙工作員が地球に登場したことに関しては思うところがあるかも知れません。

 コバ隊員は人間じゃないヒロインと仲良くなる傾向がありますね。第17話では高度な文明を持ち、人類を創り出しさえした、人類の祖先にあたる宇宙人である美女ニーナに一目惚れし、惑わされすらしています。クリスマスにはアンドロイドのエリーと仲を深めています。

 宇宙工作員とアンドロイドのエリーには、〝文明〟という共通のキーワードがあります。宇宙工作員は文明に対し、争いと破壊を生むものと見做し、宇宙に存在する数多の文明を渡り歩いては破壊して回っています。アンドロイドのエリーはその文明の発達が生み出した、文明の申し子とも言うべき存在です。

 今回現れた宇宙工作員のケルスは、その文明の申し子であるエリーを使って地球を破壊しようと目論んでいますが、その点に関しては単純に巨大な爆弾を用いて地球を破壊しようとしたケサムとは違う考え方を感じます。ケサムは淡々と任務をこなしている雰囲気がありますが、ケルスは芸術を耽美するかのような、愉しんでいる様子です。そう思えば、ケサムよりもたちが悪いと思わざるを得ません。

 ミズキ隊員は今回の事件に際し、ケサムの面影を宇宙工作員達に感じつつも、しかし吹っ切れている様子でした。今回は明確にタイムリミットがあったことも影響しているのかも知れませんが、ケルスに対して地球の破壊を思い留まるよう説得を試みようとすることも、友達になろうとか、分かり合おうとすることもなく、エリーの救出に尽力していました。

 コバ隊員とエリーの仲についての描写が多く、ふたりが仲良くなっていく様が微笑ましかったです。コバ隊員も普通に仲良くしている様子でしたし、エリーにも感情の起伏らしいものは見受けられませんでしたが、しかし彼らの仲は確実に良くなっていると思います。エリーが最後に見せた満面の笑顔はその証左です。

『ウルトラマンマックス』第33話を観ました。

 久し振りのバルタン星人の登場でしたね!

 バルタン星人は初登場が初代『ウルトラマン』という、『ウルトラ』シリーズ屈指の古参宇宙人です。

 『ウルトラマン』登場時には早速アラシ隊員の身体を乗っ取り、故郷のバルタンの星の核爆発による滅亡に際し、地球への移住を提案しに来ていました。しかし小型化を得意とするバルタン星人は宇宙船内に、地球の全人口にも匹敵する人数を抱えていたため、地球側は拒否するしかなく、ならばと破壊活動に乗り出したバルタン星人をウルトラマンは倒さざるを得ませんでした。

 二度目は同じくウルトラマンでの登場で、この時は弱点であるスペシウム光線への対抗策を備えて来ました。けれども陽動作戦も虚しく、テレポーテーションで追いつかれた上に、更に八つ裂き光輪の初披露にも使われる羽目になりました。

 次の登場は同一世界観である『帰ってきたウルトラマン』を待ってのものでした。

 バルタン星人は印象深い登場はするものの、しかし回数自体は多くないのでした。平成に入ってからもそれほど登場したわけでもなく、ニュージェネレーション期にはもう影も観ない気がします。今回の『ウルトラマンマックス』は前後編でバルタン星人を取り扱う、大舞台と言っても過言ではないでしょう。

 『ウルトラマンマックス』のバルタン星人は、『ウルトラマン』でのバルタン星人の由来を手直ししたものだと考えます。科学者の暴走ではなく、あくまで核戦争によって星の環境が変わったために、バルタンの星を離れざるを得なくなったものに変わりました。あの蝉にも似た特徴的な姿も、大幅に変化した星の環境に適応するために進化したものなのですね。もしかしたら、バルタン星人もタイニーバルタンが女の子の人間態に変化したのと同じく、元々は地球人と同じような姿だったのかも知れませんね。

 バルタン星人は侵略行動に乗り出してきたダークバルタンも、穏健派バルタンの使者であるタイニーバルタンも、揃って「地球人は自分の星の環境が変化したために、月や火星を侵略しようとしている」と主張しているのが興味深いと思いました。確かに、地球人はこれまで月や火星に調査という名目でロケットを飛ばし、降り立つなどしています。『ウルトラセブン』ではそうした調査・観測目的のロケットに批判の矛先を向けていた宇宙人が登場しました。月や火星には生命が居るのか、居たのかすら、未だに判別がつきません。けれども、自分の故郷の星以外の惑星にロケットを飛ばすだけで〝侵略〟と見做されるのならば、地球人の行っている活動は即ち侵略と考えても良いかも知れませんね。

 けれども、ダークバルタンの主張するように「お前達は侵略行為を行っているから、攻撃を行って良い」という論理になるとはまるで思えません。それは正義という名目でロケットを飛ばし、降り立っているというだけの、自分達の定義する侵略行為と同等のものだと考えられるのです。こうなるとダークバルタンの侵略行為に地球人は抵抗するだけの名目が成り立つと思われます。

 しかし、それではダークバルタンと地球人との戦いにしか発展しません。上手くこの戦いを終わらせるのが、タイニーバルタンと子供達の出来ることではないでしょうか。

『ウルトラマンマックス』第34話を観ました。

 バルタン星人への対抗手段の決定打は意外なものでしたね!

 今回は穏健派バルタンとダークバルタンの立場の違いが明らかになりました。

 バルタン星人は母星が核戦争によって居住に適さない状態になったことから、ダークバルタンは地球人が月や火星に調査・開拓のロケットを差し向けていることから「地球人は自分の星の環境が変化したために、月や火星を侵略しようとしている」と口実をつけて、地球を攻撃してきたのでした。その遣り口は侵略者の手段と変わらず、穏健派バルタンやトミオカ長官からダークバルタンの主張する正義を否定されます。

 けれどもダークバルタンが侵略の手を緩めることはありませんでした。一度は撃退されてしまったカイト隊員が復活し、ウルトラマンマックスが再挑戦しますが、マクシウムカノンなどで粉砕しても、「バルタンの科学ではクローン技術など初歩の初歩、お茶の子さいさいなのだ!」と砕片それぞれが五体満足の状態で復活して来る状態でした。しかし、そこで負けるウルトラマンマックスではなく、彼も回転の後分身して戦います。

 今までに登場した怪獣は、マクシウムカノンやギャラクシーカノンを当てて粉砕すれば倒すことの出来る相手でした。けれども粉砕した断片から復活できるバルタン星人はそうした決定打が効きません。千に砕けようと戦いを続行できるバルタン星人は、今までで最強のバルタン星人というだけでなく、最強の宇宙人ではないでしょうか。

 そしてそれに対抗できるマックスも、ウルトラマン達の中で最強格に入っても可笑しくないでしょう。彼はあくまでも文明監視員であり、初代ウルトラマンらが所属する宇宙警備隊の構成員ではありません。本来は戦闘要員ではないマックスですら驚くべき能力を持っているところに、他のウルトラマン達が未だに本来の実力を出し切っていない可能性が示唆されている感じがします。

 そんなきりがない戦いに幕を閉じたのは、タイニーバルタンの持参した銅鐸の音色でした。やはり武力で争うよりも、なごみがいちばん大事ということでしょうか。

『ウルトラマンマックス』第35話を観ました。

 怪獣を通して防衛隊組織と緩やかに敵対する子供達が描かれました。

 宇宙から飛来した怪獣の子供を拾った子供達が主役に据えられた話でした。

 こういったパターンの話は、最早『ウルトラ』シリーズでは珍しくありません。子供達は見掛けた子犬や子猫の愛くるしい表情を見て「飼いたい」と願うのと同様、怪獣を珍しがるあまりに、是非自分の手で保護したいと思ってしまうものなのだろうと考えます。そういった点では、子供達は怪獣を地球に住む生き物と同等に考え、差別することなく扱っているのでしょう。

 しかし忘れてはいけないのは、怪獣が「怪獣」と呼ばれていることです。地球の生き物の法則に当てはまる行動や特徴を持つものであれば、それはきっと「生物」と呼ばれることでしょう。けれどもそれらで解析しきれないものだからこそ、怪獣は「怪獣」と呼ばれるのだと思います。謎が多く、予測不可能の行動や特徴を持つものだからこそ、人間から恐れられ、憎まれ、殺意を向けられるのです。

 子供達はそうした怪獣の「怪獣」たる所以を分かっていないのだと考えます。「怪獣」は街中で見かけるような子犬や子猫、その他多くの小動物達以上に、自分達の手に余るものだと理解し切れていないのです。

 『ウルトラ』シリーズに登場する子供達が、屡々怪獣に関することで、本来自分達を守ってくれるはずの防衛隊組織と対立するのは、そうした「怪獣」への理解度が違うからに他ならないと思います。

 今回も、子供達が宇宙から飛来した怪獣を拾ったことで、そうした子供達と防衛隊組織の緩やかな対立が描かれました。

 けれども今回は、子供達がDASHやウルトラマンマックスについて「怪獣を見つけたら退治してしまう」ものだという理解をしていたこと、またDASHが自分達やウルトラマンマックスの活躍について「怪獣を見つけたら退治してしまう」ものだとしか伝えられていなかったことが、お互いに誤解を生んでしまったと考えます。それさえなければ、生田ソラ少年はお姉さんに諭された時点でDASHへの届け出を考えたはずです。お互いの誤解が、この件をややこしくしていたと思います。

『ウルトラマンマックス』第36話を観ました。

 まさかまさかの四角形関係に癒やされる一方でハラハラドキドキしました!

 第18話に登場したシャマー星人が再登場し、DASH基地を混乱の渦に叩き落としました。

 シャマー星人は異次元理論では世界一と言われる四谷博士に化け、ベース・タイタンの異次元バリア計画に便乗する形で登場しました。この話に登場する四谷博士は本物は登場せず、シャマー星人が第18話で見せた傲慢な性格そのままな偽物が終始出張っていましたが、話しぶりからして面識があるであろうヨシナガ教授ですらあの性格を流していた様子から、普段の四谷博士もあんな性格だったのかなと思ってしまいました。そうでなければ、ヨシナガ教授は四谷博士の研究成果の異次元理論に関する論文だけを読んで判断したことになります。一緒に仕事をする以上、相手がどんな人間か知るために多少のやりとりはするはずだとわたしは信じています。しかも『ウルトラマンマックス』が制作されたのは15年前の2005年です(視聴したのは2020年10月22日です)。『狙われない街』に登場した携帯電話はガラケーでしたし、少なくとも通信手段は電話や容量の軽いメールが良いところでしょう。面接程度は済ませていても可笑しくなさそうです。四谷博士は普段から性格が悪かったと見て間違い無いでしょう。

 ピグモンは相変わらず可愛らしいですね! ディメンション・フォースから送られて来たピグモンの生体エネルギーが、カイト隊員と深く交流したピグモン本人のものだったのは、両人にとって幸いでした。ピグモンの存在が無ければ、レッドキングどころかシャマー星人に対する対策も上手く立たなかったと言って間違いないでしょう。彼女(?)の功績は大きいと思います。

 けれども彼女(?)の存在は更なる混乱を巻き起こしました。シャマー星人の放った異次元銃による光線によって、エリーの中にピグモンの生体エネルギーが封じ込められたのです。エリーは第32話の時点で既にコバ隊員と結ばれていると言っても過言ではありません。第34話では事情があったとは言えコバ隊員がエリーに告白した際、エリーと両思いだったことが判明しました。一方、カイト隊員とミズキ隊員は今までコンビを組んで行動して来ましたし、思い合っているであろう描写も数多くあります。そんなカップル達にエリーに替わってカイト隊員が大好きなピグモンが割り込んだことにより、四角形関係が出来上がってしまったのでした。ピグモンはただカイト隊員が大好きでじゃれ付いていますが、カイト隊員は今までのメンバー仲を知っているだけに気不味かったことでしょう。

 けれどもピグモンがエリーの中に宿ったことによって、エリーに更なる成長が促されたのは確かです。エリーがピグモンに教えられた感情によって、彼女がこれからどのような行動を取るようになるのか、楽しみですね。

『ウルトラマンマックス』第37話を観ました。

 天球に煌めく星々の光と、地上で煌々と輝く文明の光は、仲良くなれるのかも知れませんね。

 サドゥン星人の子孫だと名乗る成宮の、空に輝く星々の光を守るために、地上の光を排除しなければならないという言い分は、まあまあ分かる気がします。

 人類は文明の発達と共に、森を切り開き、街を築いたことによって、地上には明かりが増えました。その光が増えることによって地上からは闇が排除され、夜空をも照らしあげることになりました。その結果、その地上の光に紛れることによって、星空が見え辛くなったのです。その仕組は満月の夜は他の星々が観察し辛いということや、星空の観察のために都会を離れて山の中へ行くツーリズムが成り立っていることからも証明されています。人類が森を切り開き、街を築くなどして文明を発達させたことによって、星の光が失われたというのは本当のことだと思うのです。

 だからといって、星空のために地上を破壊して良いとは思いません。地上から天空を照らし上げるような文明の発達は、天球に煌めく星々の光への興味を薄くするようなことにはなりませんでした。むしろ、興味が益々大きくなったとも言えます。文明が発達することによって、星々を更に詳細に観察出来るようになったのは、言うまでもありません。

 ミズキ隊員の言う通り、地上で輝く光は、街が平和な証です。星々の光と地上の光は、希望の証なのですね。

『ウルトラマンマックス』第38話を観ました。

 地球に栄える異なる文明同士の戦いが始まりました。

 地球で活動する異なる文明同士の戦いは、大なり小なり『ウルトラ』シリーズで扱われて来ました。『ウルトラマン』では地底文明が地上の光に憧れを抱くあまり、地上にテレスドンをけしかけ、ウルトラマンを味方につけて地上を破壊しようとしました。『ウルトラセブン』では地上人類が海底に開発の手を伸ばしたことによって海底文明が脅かされたために争いが勃発、ウルトラ警備隊によって海底に文明を築いていたノンマルトの都市が破壊されるという結末を迎えることになりました。従来描かれてきた地球に存在する異なる文明同士の戦いは、互いに望まぬ結末を迎えて来たと言っても過言ではありません。

 『ウルトラマンマックス』ではそんな地球の文明同士の戦いが、最終回を前に大きく取り上げられることになりました。今回の冒頭ではベース・タイタンを始めとするUDF基地が、地下文明デロスによる攻撃によって破壊されるところから始まるなど、予め地上人類が壊滅的打撃を受けることが確定しています。今まで描かれてきた文明同士の戦いの中では、互いに大きな被害を受けている印象を受けました。これから先、地上文明がどのような選択をしようと、大幅な方向転換を強いられることは間違いなさそうです。

 また、以前から予告されていたウルトラマンマックスのM78星雲への帰還の時が来ようとしていました。それはマックスの体力の限界などではなく、他の人間に正体が明らかになったからでもなく、マックスやM78星雲自身が自らに設けた、地球への介入期限なのでした。元はと言えば、ウルトラマンマックスは今まで地球にやって来たような宇宙警備隊員のウルトラマンではなく、文明監視員という武力行使を前提としない役割を担っているM78星雲人でした。今までのように地球で活動してきたのは例外中の例外でしょう。

 そして、そんな介入制限を示すかのように、ウルトラマンマックス自身がカイト隊員の前に立ちはだかって、変身を止める場面すらありました。「これは同じ星の文明同士の戦いだ」と言い、そんな戦いにウルトラマンマックスが介入することは出来ないという理由を主張していました。既にデロスが送り込んだバーサークと戦ってしまった以上、この理由は切実なものだったに違いありません。

 地上の文明は、既に壊滅的打撃を受けていることや、ウルトラマンマックスからの支援を受けられないことなどから、かなり切羽詰まった状況に追いやられていました。これらなどから来た精神的ショックによって、ミズキ隊員がかなりダメージを受けてしまったことも、主人公であるカイト隊員には手酷い痛手となりました。これから先、どうやって蹴りがつくのか、不安です。

『ウルトラマンマックス』最終話を観ました。

 「人類が自分自身の力で未来を掴むこと」の大切さが、深く描かれたシリーズだったと思います。

 『ウルトラ』シリーズにおいて、主人公とヒロインの幸せな未来が明確に描かれたのは、初めてではないでしょうか。今までの『ウルトラ』シリーズでは、正体が明かされる際にはまず変身者の身近に居たひとに、それが伝えられることが多かったと思います。『ウルトラマン』では、突然のウルトラマンの死亡とゾフィーの来訪によるM78星雲への帰還が発生したため、そのようなことはありませんでしたが、次作の『ウルトラセブン』で初めてそれが行われました。

 『ウルトラセブン』最終回に於いて、体力、精神力共に追い詰められたモロボシ・ダンことウルトラセブンが、ダンの居場所を突き止めたヒロインであるアンヌ隊員にその正体を明かすのです。それはウルトラセブンが地球を去ることを意味していました。最後の決戦の後、ウルトラセブンは地球を去っていき、主人公とヒロイン自体が結ばれることが無かったのです。

 それは『帰ってきたウルトラマン』に於いても同様でした。このシリーズのヒロイン格である坂田アキさんは話の途中で、突然交通事故に巻き込まれ、兄共々宇宙人に殺されてしまうのでした。ヒロインの立場は引き継がれていきますが、もはや回数少なであったために、それほど深い仲にはならずに終わっています。またヒロインが途中でいなくなるのは『ウルトラマンA』に於いても同様でした。

 他の『ウルトラ』シリーズでもヒロインが活躍、主人公と仲を深めていくのは同様ですが、様々な紆余曲折を経て結局幸せな未来が描かれないことが多い印象があります。

 そんな中、ふたりが幸せな未来を迎えた描写があるのは、『ウルトラマンマックス』の際立った特徴のひとつではないでしょうか。

 ウルトラマンマックスは、地球を去ることを予告していた時から、人類が自分自身の力で未来を掴むことを願っていました。それを受けて、カイト隊員とミズキ隊員は幸せな未来を思い描き、それを掴むことを目標にしました。ふたりの場合、それは「ふたりで共に生きること」でした。

 今回の脚本を手掛けられた小中千昭さんの作風は、『ウルトラマンティガ』の頃から「人類がウルトラマンの力をあてにせず、自分自身の力で目標を成し遂げること」を書くというものだと思います。それ故に、『ウルトラマンティガ』の時は人類の文明の粋を結集してウルトラマンティガに光の力を集める作戦が頓挫し、代わりに人類の未来の象徴である子供達が光となって、ティガに力を与える展開となったのだと考えています。

 今回の『ウルトラマンマックス』の最終決戦では、既にウルトラマンマックスはギガ・バーサークの目標になっていたため、マックスは自分自身の防衛のために仕方なく応戦する展開となりました。けれどもあくまで「人類がウルトラマンの力をあてにせず、自分自身の力で目標を成し遂げること」を書くため、カイト隊員とミズキ隊員が「ふたりで共に生きる」未来が描かれることになったのでしょう。

 また、ヨシナガ教授の「ウルトラマンは勝てるかしら?」の台詞は、桜井浩子さんが『ウルトラマン』でフジ隊員を演じていらっしゃったからこその重みがある気がします。『ウルトラマン』の最終回、ゼットンとの戦いでウルトラマンは死亡してしまいました。今回の敵であるギガ・バーサークは、オートマトンからの情報で既に「ウルトラマンマックスを100パーセント倒す」と予告されていました。見るからに巨大で、マックスを大幅に超える大きさだったのは比べるまでもありません。ここに桜井浩子さんの視点が加わったことは興味深いものだと思います。

 さて、上記でも書いた通り、カイト隊員とミズキ隊員はふたりで共に生きる未来を全うしました。ベース・タイタンのあった東京湾上には、ウルトラマンマックスとデロスのバーサーク・システムのモニュメントが設置されています。きっとふたりは、マックスと戦っていた青春時代を、子供や孫達に語りながら、穏やかに暮らしてきたのだと思います。孫達は無事に宇宙へ旅立てたでしょうか。ウルトラマンマックスには出会えるでしょうか。きっとマックスに出会えた時が、人類が未来を掴んだ瞬間なのだと思います。その時が来ることを、願ってやみません。

 ありがとう、トウマ・カイト! ありがとう、ウルトラマンマックス!!

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