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『ウルトラマンA』を観ました。(41話〜52話まで)

凡例のようなもの

 以下の感想は視聴当時(2020年8月30日〜2020年10月13日)にふせったー(指定した箇所を伏せ字にしてツイート出来るツール。追加で長文も付けることが出来る)を使用してツイートしたものです。省略した句読点の追加や、語句の統一程度の推敲はしましたが、ほぼそのまま掲載しています。

 今回は第41話から第52話までの分を扱いました。

 全体的にネタバレや、感想を読む方が視聴していることを前提とした内容です。まだ未視聴の方は、その点をご留意ください。

『ウルトラマンA』第41話を観ました。

 獅子舞に取材したお正月的な内容でしたね。

 わたしの住む地域では獅子舞をやる様子を見たことは無いんですが、Wikipediaを見たところ、獅子舞は日本全国で行われているのですね。最後にTAC本部で獅子舞が行われた際にも、「獅子舞は魔除けなんですよ」と言われています。

 今回は古くからの獅子舞の伝統を軽んじられた舞手の恨みに、超獣が浸け込んだのだと思います。『ウルトラマンA』が放送された当時は、日本の経済成長が盛んだった頃だと考えます。その中で獅子舞を始めとした古き良き伝統的なものが軽んじられてもいたのでしょう、今回の話しはそれに対する、古き良きものも大切にすべきという批判も込められているのかなと思いました。

 今回は久し振りに、ダン少年が「ウルトラ6番目の弟」として扱われました。最後にダン少年が「ウルトラ6番目の弟」として扱われた際は、「無茶をすることが本当に正しいことではない」と示された時だったと考えますが、今回は「友達が超獣に取り込まれてしまったのだから、逃げることは出来ない」と主張し、現場に残ろうとしました。これは無茶をすることには繋がらないのでしょうか。一応はTAC隊員である北斗隊員と美川隊員が一緒に付いていたので、大丈夫ということでしょうか。

『ウルトラマンA』第42話を観ました。

 伝説怪獣ウーが再び登場しましたね!

 伝説怪獣ウーが初代『ウルトラマン』以来2度目の登場を果たしましたね。

 前回は村八分にされる少女・ゆきんこを守護する存在として描かれました。その時、ウーの正体としてゆきんこの母親の霊が挙げられました。今回は超獣アイスロンから、娘であるこゆきを守ろうと奮闘した父親が亡くなった後に転生したものとされました。2回とも、子供を遺して亡くなった親が、子供を守ろうとして転生したものがウーの正体となりました。ウーは子供を思う親心の化身なのかもしれません。

 残念ながら「怪獣を超えるもの」として定義される超獣を相手にした今度のウーは負けてしまいましたが、戦いをウルトラマンエースが引き継いだことで、結果的にアイスロン撃滅に繋げることが出来ました。子供を守る正義の存在として証明されたのだと思います。

 最近その姿を見かけることが滅多に無くなったウーですが、冬のファンタジックな怪獣のひとつとして、再登場して欲しいと思わざるを得ません

『ウルトラマンA』第43話を観ました。

 久し振りにウルトラマンエースのバーチカルギロチンが観れました!!

 前回に引き続き、スキー場が舞台となりました。今回は「塩沢」と具体的な地名が出ましたが、2週連続して東京から遠く離れた塩沢まで出かけるのも難儀だと思うので、時系列的には前回から日が経っていない頃だと思います。そうすると何日も経過しないうちに連続して超獣に襲われたことになります。北斗隊員一行におかれましては、御愁傷様と言わざるを得ません。

 今回特筆すべきは、戦場から退却してきたTACを出迎えたホテルの客の反応でしょう。

 一応TACは、塩沢での不審な天候と超獣出現の兆候を鑑みて出動してきましたし、ホテル客も超獣退治を望んでTACを出迎えました。しかしTACが超獣の様子を見て退却して来るや否や、

「何で逃げてきたんじゃ! あんた達は俺達を守るのが義務じゃろう?!」
「ここ(ホテル)に逃げ込めば、ここを襲ってくるんじゃないか!」
「そうだよ! あんた達は、俺達を却って危険な目に合わせているんじゃないか!」

と言い掛かりを付けます。TAC側も黙ってはいません。隊員達は言い返します。

「何を言っているんだ、君達は!」
「自分達だけが安全でいたいのか?!」

 それに対してホテル客達から、そもそもスキー客の中にTACの隊員が居たから、スキー場が襲われているのではないかという言葉が出ます。そもそも望まれて来たTACが、スキー客達の望む戦果を上げないばかりに、邪険に扱われているのです。

 勿論、TACや北斗隊員が居たからホテルやスキー場が襲われた訳ではないのは明らかでしょう。ウルトラ6番目の弟・ダン少年の、子供の立場ながらも堂々とした言葉が重く響きます。

「自分が助かりたいばっかりに、他の人を外に追い出すような人間じゃないんだ!」

 結局、TACはホテルを離れて戦おうとし、そうしたばかりに超獣にホテルが本当に襲われて、TACを追い出した客達が残らず凍り付くことになりました。竜隊長はその惨状を見て、何としてもホテルに残って戦うべきだったと言っていますが、そこまで立派な人間ではないわたしは、TACを追い出したばかりに凍り付くホテル客を観て「当然の報いだ」と思ってしまいました。

『ウルトラマンA』第44話を観ました。

 突然名指しで「筋ジストロフィー」の病名が出たのでびっくりしました。

「そんなことはない。筋ジストロフィーに罹っている子供達だって、治るために懸命に努力しているじゃないか。負けちゃ駄目だ!」

 劇中で赤く光る豆を食べたため、腕の筋力を発揮出来なくなった北斗隊員と今野隊員、そして一郎くん。原因は分からないものの、諦めずに筋力トレーニングを行うことによって、少しでも腕の筋力を取り戻そうとします。そんな中、弱音を吐く一郎くんに向かって北斗隊員が言った台詞が上記のものになります。突然、具体的な病名を名指ししての台詞だったので、とても驚きました。

 初代『ウルトラマン』から『ウルトラマンA』を続けて観てきて、『ウルトラマン』から『ウルトラセブン』は時代背景はあまり関係なく、科学文明や社会のあり方に対して普遍的な批判を述べている感じがしました。それに対して、『帰ってきたウルトラマン』から今作『ウルトラマンA』は、当時の時代背景や事件、社会の流行をどんどん盛り込んで作られている印象があります。なので、今回のように具体的な名前が出ると、「当時の話題に上ったのだろうか?」と疑問に思ってしまいます。

 残念ながら当時のことは知る由もないので、真相は分かりません。けれど、台詞の内容が自分のことのように思う子供達の励みになったのは、間違い無いでしょう。

 ウルトラマンエースだけではなく、ウルトラマンの皆さんには子供達のヒーローとして励みになるメッセージを贈り続けて欲しいなと思います。

『ウルトラマンA』第45話を観ました。

 ユタカくんとTACに対する周囲の扱いに、不条理の重なりを観ました。

 (『ウルトラマンA』には他にも類似の筋立ての話数がありますが、何で今更〝不条理〟という言葉を使ったかと言うと、最近カフカやカミュを読んだからです)

 今回の話には、二重構造の不条理があったと思います。

 第一の不条理は、ユタカくんとその父親に対する周囲の扱いです。人工衛星が失踪する事件が起きた際、小学校では天体望遠鏡を用いてそれを探すというブームが起きました。ユタカくんは元から天体望遠鏡で夜空を観察する趣味があり、クラスメートからは「星バカ」と馬鹿にされていました。それに対してユタカくんは「必ず人工衛星を見つけてやる!」と息を巻きます。その後、人工衛星はユタカくんの自宅の近所のガスタンクに紛れるようにして落下して来ます。ユタカくんの父親はそのガスタンク群の会社の社員だったため、警察と会社に連絡を入れるのですが、父親が直前まで酒を飲んでいたので「酔っぱらい」「寝ぼけている」と突き放されました。

 一方でTACはユタカくん親子の通報を聞き入れ、調査に乗り出します。結果、人工衛星は既に超獣の巣になっていることが判明し、安全のために周囲のガスタンクからガスを抜くことになりました。しかしそれが超獣を目覚めさせる結果となってしまうのです。

 ここで第二の不条理です。以前にもあったことですが、超獣に対処出来ないでいることで、TACが一般人達から非難を浴びせられるのです。特筆すべきなのは、第一の不条理に晒されていたユタカくん親子からも批判されていることでしょう。ユタカくんは自分の天体望遠鏡のある自宅が超獣に踏み潰されてしまったことで、自分の主張を信じてくれたTACの北斗隊員にすら不満をぶつけるのです。しかも今回はダン少年も居ないので、TACに味方する者は居ません。TACは一般人の味方が居ない中、彼らからの信頼を取り戻すために超獣と戦ったと言っても過言では無いでしょう。

 最終的には北斗隊員とユタカくんとの間には、それなりの親交が生まれているようですね。ユタカくんがレンズを通して北斗星司隊員を見た時、「あっ、ウルトラマンエースだ!」と言ったのには驚かされました。本当に北斗隊員を誂うつもりで言ったのでしょうか。それとも?

『ウルトラマンA』第46話を観ました。

 ウルトラマンは時間を超えることすら出来るのですね?!

 他の『ウルトラ』シリーズでも全然見ないので知らなかったのですが、少なくともウルトラマンエースには時間を超える能力があったのですね。

 ウルトラマンエースに時間を超える能力があるということは、他のウルトラマン達にも可能と考えて良さそうです。『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 決戦! ベリアル銀河帝国』では、M78星雲のある宇宙から別の宇宙へは、光の国の文明を持ってしても、ウルトラマンゼロただひとりしか送ることが出来ませんでした。しかし今回ウルトラマンエースが時間を超えるに当たっては、ウルトラの星の導きどころか、客演の多いウルトラ兄弟のひとりも登場することがありませんでした。1万年以上生きているウルトラマン達がタイムスリップ先の奈良時代に登場出来ないはずはありませんし、兄弟の繋がりが未だに無いものだとしても、ウルトラの父くらいは出てきても不思議ではありません。つまり、時間を超えることは兄弟が手を貸すまでも無く出来ることだと考えられるのです。

 時間を超える描写があるのは、今回の他には『ウルトラマンティガ』にて謎の男チャリジャが、円谷英二監督から怪獣を購うために『ウルトラマン』制作当時の円谷プロにタイムスリップし、主人公のダイゴ隊員がそれに巻き込まれる話くらいでしょうか。いずれにしろ、ウルトラマン自身の力でないのは確かです。

 ウルトラマンが時間を超える能力を持つというのはすごいことだと思うのですが、後の作品でそれが取り上げられなくなったのは何故でしょうか。そもそも、『ウルトラマンA』の事前情報ですら耳にしなかったと思います。

 理由はいくつか推測出来ますが、まずひとつは単に面倒臭いからというのがありそうです。

 美川隊員と吉村隊員を救助するために、タイムマシンを研究所に借りに行った際も、博士によって長々くどくどとタイムスリップについての仕組みと危険性について説かれました。主人公の北斗隊員が「木の枝一本折らない」と誓いを立てたにも関わらず、博士はタイムマシンの貸し出しを渋り、TACは超獣の空きを狙って一緒に時を超えることを狙うしか無かったのです。

 更にタイムスリップ先の時代設定と考証の必要性に迫られます。通常の『ウルトラ』シリーズのドラマと特撮に加えて、時代劇の要素も加えることになるのです。今回タイムスタンプしたのは奈良時代で、正に奈良の大仏を造っている最中でしたが、きっと観るひとが観れば大変さが一目瞭然でしょう。

 もうひとつの理由は、今回採用してみたものの意外と地味で目立たない能力・ストーリーになってしまったという推測です。

 上述した通り、『ウルトラマンA』の事前情報では、この時間を超える能力については全然取り上げられている様子がありませんでした。どちらかと言えば「男女合体変身」や、ウルトラギロチンやバーチカルギロチンなどの切断技を使うことが多いことから「ギロチン王子」と呼ばれていることなど、劇中の様子を観れば納得のインパクトを発揮している特徴をよく耳にしました。上記のふたつはほぼシリーズの前半にしか見られない特徴でしたが、『ウルトラマンA』を『ウルトラマンA』らしく観せているものだと思います。しかし、今回見せた時間を超える能力は、能力の技術的難易度の割にインパクトに欠けていたようにも感じました。美川隊員と吉村隊員がタイムスリップすることさえ無ければ、使われなかったと言ってよく、言い換えればふたりを助けるために急遽使われた技だと思わざるを得ません。

 ただわたしとしては、急拵えの割にコストが掛かるとは言え、突き詰めればSFらしさが際立つ興味深い能力であることには間違いないと思うので、時々思い出されて新しいウルトラマンの能力のひとつに採用されると良いなと願うばかりです。

『ウルトラマンA』第47話を観ました。

 弱い立場の者が強者に対して復讐しようと息巻くストーリーが多い印象があります。

 今回は村民と仲が悪くて鍾乳洞に住んでいる祖父と孫、そしてふたりに飼われている山椒魚に焦点が当たりました。

 『ウルトラマンA』では人間の心の醜い面に浸け込んで、それを活力とする怪物・超獣がメインの敵になるシリーズであるせいか、弱い立場の者が、自分の心の醜い面を肥大化させて、それを糧に超獣を呼び出したり、操ったりすることが多い印象があります。それは第4話で登場した久里虫太郎や今回の老人に共通しています。超獣を呼び出すまでに至らなくても、馬鹿にされた者が加害者に対して仕返ししようと画策する場面は数多くありました。

 今回の老人は、山椒魚の保護のために村の田畑に農薬を撒くことに対して反対し、そのせいで村八分に遭い、孫娘と共に鍾乳洞に避難したと言っています。老人の主張は、なるほど、現代の環境保護の観点から言えば正しいものだと思います。しかし、自分の主張の正しさを証明するために用いた手段は、飼っている山椒魚のショウベエを超獣化させて、自分に反対する村民やTACを排除するというものでした。最早、環境や山椒魚の保護などどうでもよく、ショウベエに対して仲間の仇討ちをさせているという建前で、自分の主張を押し通しているようにしか観えません。

 結局、老人はショウベエを操る手段である笛を、ショウベエ自身の攻撃によって失くしてしまい、自らも溶かされて跡形もなく無くなってしまいました。村人達が超獣の攻撃によって家を逐われたのを聞いた時、「因果応報だ」と言っていましたが、これは正にショウベエを使って村人達に復讐したことによる因果応報ではないでしょうか。

 遺された女の子は幸せに暮らしたのでしょうか。ナレーションでさらっと「幸せ暮らした」とされていますが、ナレーションのみの描写は何となく不安が残ります。

『ウルトラマンA』第48話を観ました。

 勝ち残った者の責任を考えさせられる回でした。

 北斗星司隊員が虫歯になってしまい、歯医者に行くという興味深い回でした。

 最近『ウルトラマンZ』に幻界魔剣ベリアロクが登場し、そのおもちゃが「デスシウム歯磨き」という台詞を喋ることで話題になりました。わたしは成人になってから『ウルトラ』シリーズを観ているので忘れがちなのですが、本来子供向けのシリーズですし、おもちゃも子供向けに開発されるのが常です。歯磨きに関する台詞が使われるのは、歯磨きや虫歯、歯科医院通いが子供や保護者にとっての関心事だからに他ならないでしょう。

 だからこそ、『ウルトラマンA』の主人公が歯科医院に行く展開も、子供向けに考えられた話の筋なのだろうと思いました。

 しかし、その歯医者の描写は恐ろしいものでした。歯科医院「Q歯科医院」は殺風景にしてコンクリート打ちっぱなしのビルに入っていました。ドアを開けてすぐに診察室があり、しかも白く広い部屋の真ん中に、黒いシートの診察椅子があるだけなのです。わたしも幼少の頃から、歯科医院に対して怖い印象を持ち続けていますが、きっとあの風景は、子供の頃に見た歯科医院の診察室のイメージを、そのまま再現したものだと思います。

 きっと『ウルトラマンA』の主人公が歯医者に行くのは、子供達に対して「ウルトラマンですら歯医者に行くのだから、皆も頑張って歯医者に行って虫歯を治すんだよ」というメッセージがあったからだと考えます。けれども、あの恐ろしい歯医者を観せられた後では、逆に歯医者に行きづらくはないでしょうか。

 ところで、あのQ歯科医院の歯科医の正体は、嘗てウルトラマンエースによって滅ぼされたヤプール人の生き残りである、女ヤプールでした。女ヤプールは北斗星司隊員の最初の敵にして、最初の人生を終わらせた者であるベロクロンを操り、ウルトラマンエースを倒そうとします。結局はウルトラマンエースによってベロクロン2世も倒されますが、女ヤプールにとってはベロクロン2世の勝敗はどちらでも構わなかったのだろうと思われてなりません。女ヤプールの目的は、ウルトラマンエースという勝者に、ヤプール人という敗者の立場から責任を負わせたかったのだろうと考えます。
女ヤプールは言います。

「そうだ、お前は勝った! 勝った者は生き残り、負けた者は地獄へ堕ちる。しかし、これだけは覚えておくがいい。勝った者は、常に負けた者達の恨みと怨念を背負って生き続けているのだ。それが戦って生き残っていく者の〝さだめ〟だ!」

全ての勝者は、競争相手を敗者にすることで生まれます。女ヤプールは常勝の存在であるウルトラマンエースに、勝者としての責任を考えて欲しかったのでしょう。

 前回を始め、強者と弱者、勝者と敗者を描き続けて来た『ウルトラマンA』における、これが集成ではないでしょうか。今までも、これからも、ウルトラマンエースは勝者の責任を背負っていくのでしょう。それを視聴者として、最後まで見届けたいと思います。

『ウルトラマンA』第49話を観ました。

 超獣アクエリウスの登場を、水瓶座の星座の者として、複雑な心持ちで観ていました。

 星座モチーフの怪獣は、これまでも登場したことがありますね。『帰ってきたウルトラマン』に登場した蟹座怪獣ザニカもそうですが、『ウルトラマンA』に登場したオリオン座星人もそうだと考えます。簡単に調べたところ(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1192985036)、日本で星座占いがポピュラーになったのは60年代とのことなので、昭和2期の『ウルトラ』シリーズで星座が取り上げられるようになったのはちょうどその頃でしょう。

 また『ウルトラマンA』では、流行の音楽が登場人物によって歌われることが多い印象があります。第11話では女子大生達によって平田隆夫とセルスターズの「ハチのムサシは死んだのさ」が歌われ、第23話ではヤプール老人によってハナ肇とクレージーキャッツの「学生節」の替え歌が歌われました。また今回も、村人によって山本リンダの「狂わせたいの」が歌われました。

 『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』では、普遍的で時代を感じさせない描写が多かったように思いますが、『ウルトラマンA』はそれに反して時代の流行や風俗を多く取り入れている印象が強いです。『ウルトラセブン』までのシリーズでは、細く長く作品の息を留めておく目的が強かったように思いますが、『ウルトラマンA』はその瞬間の子供受けを狙いたかったがために、このようになったのかなと考えてしまいます。

 それによって『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』は、比較的いつ観ても色褪せない作品に仕上がっています。けれどもそれに比べて『ウルトラマンA』が見劣りするということはなく、時代の移り変わりを感じる際の手がかりとして残ったように思われます。

 『ウルトラマンA』はこれからも強い個性で残っていくと思います。

『ウルトラマンA』第50話を観ました。

 昭和期の『ウルトラ』ではよく話題になる「交通戦争」がモチーフになりましたね。

 北斗隊員が女性ドライバーの運転する八百屋のトラックと衝突事故を起こす場面から、今回の話は始まりました。互いに青信号で交差点に進入したことから発生した事故でしたが、TACの自動車と女性の運転する軽トラという組み合わせだったことから、駆け付けた警察は女性ドライバーに疑いの目を向けます。同行していた山中隊員すら「一姫二虎三ダンプ」と口にするほどでした。

 この「一姫二虎三ダンプ」という言葉を初めて聞いたので調べてみたのですが、こちら(http://zokugo-dict.com/02i/ichihime_nitora.htm)によると60年代から言われている、危ないドライバーのタイプのことのようです。私事ですが、わたしの父が女性ドライバーが無理を通すような運転をしているのを目にすると、口々に文句を付けるタイプで、「何故女性ドライバーばかり気にするのだろう」と思っていたのですが、昔から言われている言葉があったのですね。60年代から『ウルトラマンA』放送時期は、ちょうど「交通戦争」と呼ばれている時期にあたります。上記の言葉は、その頃に普通の男性ドライバーの視点から作られた言葉なのではないかと思いました。

 既に劇中に登場しなくなって久しいのですが、『ウルトラマンA』は主題歌の歌詞にある通り、北斗星司隊員と南夕子隊員の合体変身でウルトラマンエースが登場するのが目玉のひとつでした。それは女性の立場に視点を向けるという、制作陣のメッセージのように思っていました。それを守る形で、度々女性キャラクターに焦点が当たることも多くあり、今回もそのひとつとなりました。もう残りの話数が少ないですが、最後までその視点を大切にして欲しいと思います。

『ウルトラマンA』第51話を観ました。

 「果たしてどちらが超獣なのか」と考えさせられる事件でした。

 野球少年ながらヴァイオリンを習わされる少年と、少年を将来立派なヴァイオリニストにしようとする母親が超獣を呼び、超獣にエネルギーを与えてしまった話でした。しかし、少年の「ヴァイオリンは嫌いだ、もうやりたくない」という気持ちはあくまで切っ掛けであって、母親の「立派なヴァイオリニストになって欲しい」という欲望の存在が大きいと思います。

 自分の子供を英才教育して、立派な大人に育てようとするあまり、それが裏目に出るという話は、『ウルトラマンA』では以前にもありました。第33話では、わんぱくな子供が大人しくなるというだけで気球に乗せに行かせ、結果的に超獣の餌食にされるという事件が起きました。当時から大人から見た子供の評価基準は、〝大人しくて手が掛からない〟ことが一番だとされているのが、よく分かる事例だったと思います。

 今回も、子供を立派なヴァイオリニストにしようとする母親は、そのための英才教育を施すために、少年から大好きな野球をする機会を取り上げ、高い値段のヴァイオリンを持たせて稽古に通わせていました。結果、少年の心が超獣を呼び寄せてヴァイオリンに取り憑かせることになりました。一方、自分が買い与えたヴァイオリンで少年が美しい曲を弾いたことを知った母親は大喜びです。超獣が取り憑いていると言い聞かせられても、「あのヴァイオリンがあれば、子供は立派なヴァイオリニストになれる!」と狂喜し、超獣と化したヴァイオリンを止めようとする北斗隊員からTACガンを奪い取りすらしました。母親は、少年の父である亡き夫から、少年を立派なヴァイオリニストにするよう言い遺されており、それが重荷になっていたかも知れませんが、けれども少年が自分の思い描く「立派なヴァイオリニスト」の片鱗を見せていたことに歓喜したのです。母親は少年に対して〝大人しく〟「立派なヴァイオリニスト」になってくれることを欲していたのでした。

 母親は超獣がウルトラマンエースによって弦を斬られて絶命した時、胸を押さえて悶え苦しみました。そして「あのヴァイオリンがあれば、立派なヴァイオリニストに出来るのに……!」と涙しながら怨嗟の声を漏らして、超獣の消滅と共に気絶してしまいました。自分の子供よりも、子供を天才的なヴァイオリニストにしてくれるヴァイオリンのほうに価値を見出していたような母親の様子に、「果たしてどちらが超獣なのか」と考えさせられました。

『ウルトラマンA』最終話を観ました。

 「さようなら、北斗星司」

 今回の戦いで、ヤプール人との戦争に勝って、勝負に負けたような印象を受けました。

 ヤプール人はウルトラマンエースを地球から追い出すために、サイモン星人の子供に化けて地球の人間の子供達とも交流して仲良くなり、そんな子供達の前で殺されることによって、北斗星司隊員やその所属するTAC、そしてウルトラマンエースへの信頼を失わせようとしたのです。

 そもそも、ウルトラマン達には「公衆の面前で変身して正体を明かすようなことをしてはいけない」「そうしたならば、地球を去らなくてはならない」という不文律があるらしく、この展開を予期してか既に月に帰還していた南夕子が北斗隊員に警告を送ったりしています。

 しかし、いよいよジャンボキングが二度目の戦いを仕掛けて来た時、北斗隊員はサイモン星人の子供ことヤプール人の罠に掛かってしまうのです。

「人間の子供から優しさを奪い、ウルトラマンエースを地上から抹殺することが、私の目的だったのだ!」

ヤプール人はそう目的を告げた瞬間、目的通りに子供達の面前で北斗隊員に銃殺されました。子供達は信頼を於いていたTACの北斗星司隊員に、友情を築いていたサイモン星人の子供を目の前で銃殺されたことで怒り、北斗隊員に詰問します。TACが超獣を倒せないものだから、原因となったサイモン星人を殺してしまったのだ、もう優しさなんか捨ててやる! と、ヤプール人の目的通りに怒り散らす子供達に、北斗隊員は「俺がウルトラマンエースだからだ!」と白状します。

「見ていてくれ、これがウルトラマンエース最後の戦いだ!」

ウルトラマンエースの変身者であることを告白し、TACの仲間達にもそれが知られてしまった今、後に引けなくなった北斗星司隊員は、皆の前で変身します。子供達から優しさが失われることを防いだものの、ヤプール人の目的の半分である「ウルトラマンエースを地上から抹殺すること」が実現されてしまった瞬間でもありました。南夕子の警告すら裏切る結果となってしまったのです。覚悟を決めた様子の北斗星司隊員の言葉が染みます。

「彼らに真実を伝えるためには、こうするしか仕方が無かった――さようなら地球よ、さようならTACの仲間達! ――さようなら、北斗星司……」

 忘れてはならないのは、「さようなら、北斗星司」という言葉だと思います。ウルトラマンエースは地上を逐われたとしても、M78星雲という居場所がありますし、ウルトラ兄弟のひとりとしての存在感があります。けれども地球に生きた人間のひとりである〝北斗星司〟は、地球上から抹殺されてしまえばどこにも居場所が無くなってしまうのです。そうなればウルトラマンエースの変身者という、ウルトラマンエースの付属品と言っても過言では無い小さな存在でしかないのだと考えます。「北斗星司」はこれにて人間としての生命を失ってしまうことになったのでした。ヤプール人は北斗星司を抹殺してしまったのです。

 ヤプール人による地上侵略という戦争には、ウルトラマンエースという助力を得た人間が勝ちました。けれどもヤプール人によって「北斗星司」という人間が失われる結果となってしまい、「ヤプール人との戦争に勝って、勝負に負けた」とも思える状況になってしまったのでした。

 けれどもこの状況は、「ウルトラマンが地球を去る」という、『ウルトラ』シリーズにおけるお約束展開を守るために、自然なものだとも思えます。今までの『ウルトラ』シリーズでは、最終回で「ウルトラマンが敗北する」「変身者が正体を明かす」などといったストーリーが展開されました。今回の最終回はある意味それらが両方達成されたものだと言えると考えます。

 ところで、今回は子供達が主要な役回りを演じました。けれどもわたしは、『ウルトラマンA』での子供側の主役と言えばダン少年だと思っていましたが、今回彼の登場はありませんでした。彼が『ウルトラマンA』後半から登場していたことは、ダン少年の成長を描く側面もあったのかと思い、最終回は彼の成長を見届けて終わるのかなと思っていました。けれども今までのストーリーを観る限り、ダン少年は既にウルトラ6番目の弟としての立場を確たるものとしているとも取れなくもないとも考えます。なので最終回はウルトラ兄弟に憧れを抱き、目標として生活しているウルトラの星が見えない他の子供達が中心に据えられたのかなとも思いました。

 苦い側面を持つ最終回ではありましたが、最後はジャンボキングに対してウルトラマンエースの必殺技にして得意技であるメタリウム光線と、ウルトラギロチンで止めを刺したのは格好良かったです。

 ありがとう、北斗星司! 南夕子! ありがとう、ウルトラマンエース!!

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