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樋口有介「夏の口紅」(夏休みの青春小説)

樋口有介の「ぼくと、ぼくらの夏」を読み返したので、同じころに読んだ「夏の口紅」を読み返した。

「夏の口紅」は、「ぼくと、ぼくらの夏」と同様、夏休みが舞台の青春小説ですが、ほぼミステリーではありません。「ぼくと、ぼくらの夏」同様、読みやすい本です。

シングルマザーで育ち父親の記憶がない大学生の主人公・礼司が、父親が亡くなったとの連絡を受け、腹違いの姉と、抜群に美人の血はつながらない高校生の妹キリコ(季里子)が存在することが判明します。昆虫学者だった父親の遺言は、新種の蝶の標本を礼司とその姉に渡すこと。名前もわからない姉を探すというような話です。

この本の魅力は、うまくしゃべることができなくなってしまったキリコの存在感かなと思います。以前に読んだときもそうだったのですが、キリコと村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」に登場するユキの印象が重なりました。

直接話と関係はないのかもしれませんが、
「すべての学問は、最後には『人間とはなにか』に行き着くの」
という言葉が印象的です。

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