美術展で、何を観ますか?_アートエデュテイメント#10
アートエデュテイメントについて、主にビジネスを熱心に進められている方々を読者と想定してお話してきています。
〈展覧会で観るもの〉
「秋」の期間がやたら短くなったような気がします。ちょっと良い気候になってきたかと思ったら、もう立冬。暦の上では冬。「芸術の秋」はどこに行ってしまったのかとお嘆きの方も多いのでは…ってことはないかもしれませんが、なぜか美術展にでも行こうかという気になってくるのが、秋の頃合い。文化の日も11月3日ですしね。ということで、今回の話題は、美術展です。
「首都圏で開催中の美術展」で検索すると、サイトによって差はありますが、170前後の展覧会が紹介されています。
この中から、行きたい展覧会を選ぶのって、結構至難の業ですよね。あれもこれもそそられるという贅沢な悩みで決めらないという人もいれば、どれが自分の好みにあうのかさっぱりイメージできないので選べないという人もいるでしょう。
だから、ついつい「話題の」とか「流行りの」とか、他の人が観ている美術展に足を運んでしまうケースが多くなりがちです。人の集まる展覧会はより人が集まり、混みあった会場で、作品よりも人の頭を鑑賞していたということに、なってしまうわけです。
〈作品以外も鑑賞する?〉
美術展の楽しみは、勿論作品との出会いにあるわけですが、「人の頭」が多すぎると、その楽しみも半減してしまいますね。そんな時にこそ、試して欲しい美術展での過ごし方、それは「作品以外も鑑賞する」です。
勿論、他の来場者の「頭」をじっくり眺めてくださいという話ではありませんので、ご安心ください。
美術展に行かれる多くの方は、Webやポスター、チラシなどで、事前に様々な情報を得ていると思います。会場の場所や開催時間、チケットの料金等は当たり前として、目玉となる作品、美術展のテーマ、推しのポイント、などなど。会場に入る前に、これらの情報をもとに、「自分なら来場者にどんな〝鑑賞体験〟をしてもらうか」を美術展の企画者になったつもりで、会場の入り口をくぐる前に、ちょっとだけ考えてみましょう。
これだけで、俄然、「作品以外」にも興味関心が広がり、鑑賞する対象が増えます。
この説明だけでは、難しく感じる方もいるかもしれませんが、例えばこんなことです。
目玉作品とどのタイミングで出会うのかを、想像してみるだけでも、ワクワク感は増します。実際に会場でその作品を見つけて、「ああ、ここで登場するのね!」って感じ。
あるいは、
予算をたっぷりかけた豪華な仕立てもあれば、手軽だけど工夫に富んだ仕立てもあり、「こんな風に見せるのか。なるほどねぇ」と気づきが生まれます。美術展全体を、ひとつの作品として楽しむというか、鑑賞するということです。
〈マーケティング鑑賞?〉
前回のコラムで、「サイト・スペシフィック・アート」の話をしましたが、美術展の企画者も、当然、展示する「場」に関してさまざまな意図を持っています。「来場者に、この作品とはこんな出会い方をして欲しいな」という意図をもって、目玉作品(どの作品を美術展の「顔」=目玉作品とするかも含め)をどのタイミングで見せるか、仕立てをどう整えるか、ありとあらゆることを企画していきます。予算やスポンサーの意向、作家や作品所有者の権利などなど、さまざまなものと、すり合わせ、おり合いをつけながら!
あれ? これって、皆さんが普段進められているビジネス現場と同じですよね。様々なステークホルダーとの利害関係を調整しながら、顧客体験価値をいかに高めて、お金をいただくか。ビジネスの現場のエッセンスが、美術展にはぎっしり詰まっているとも言えるのです。
普段ビジネスにまい進している方だからこそ、「企画の意図」という作品以外のものも鑑賞できちゃう。たとえ超人気の美術展で、「頭」の数が多すぎても、結構楽しめそうだと思いませんか?
ひょっとすると「マーケティング研修」とか「フィールド調査」とかいう項目で、仕事として経費で落ちる美術鑑賞になるかもですし(笑)
どうぞ、美術展で、ビジネスセンスもたっぷり磨いてください。
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