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テレマークスキー用具について:金具編

3ピン<スリーピン>

もともとはクロスカントリースキーの金具です。金具から突き出ている3本のピンにブーツの靴底にある3つの穴を嵌め合わせ、ブーツのつま先の出っ張ったコバ(ダックビルとも言う)を上から押さえつけ固定します。アルペン金具のようなリリース機構=ケガ防止の為、転倒の際などに金具からブーツが外れるしくみはありません。

他の金具とは比べものにならないほど軽く、トラブルも少ないのが特徴です。また、ヒールピース=カカトが載るところの位置は変わりますが、トゥピースの形はブーツのサイズに関係なく同じなので、ブーツサイズが違う人どうしでもその場でスキーを交換し滑ることが出来ます。唯一の欠点は、靴底やコバに雪が着いていると嵌まりづらく、無理に嵌めた状態で滑ると靴底の穴を壊してしまうことです。金具に嵌める前に、ストックのグリップでブーツのつま先あたりを叩いてしっかりと雪を落とすことが大切ですね。

またアルペンと違い、金具に左右があります。よく見ると外側になる方が少し出っ張った台形の形をしています。左右を間違ってもとりあえずは履けますが、スキーの中心線がズレるのでスキー操作がうまくゆきません。スキーを履く際は、金具に付いている表示や流れ止め=スキーリーシュが外側になっているかを確認する習慣をつけましょう。

個人的には一番好きな金具ですが、初心者の方にはケーブルタイプの金具の方がおすすめです。

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ケーブル

基本的に3ピンのようなピンは無く、ブーツのつま先のコバを金具に滑り込ませ、ブーツのかかとにレバーを引っ掛け留めるようになっています。コバを固定する部分とカカトのレバーは、柔軟性のあるワイヤーやロッド=金属の棒とバネでつながっています。そのバネの力を使ってブーツを前方に押しつけ外れないようにしているのですね。そして、3ピン同様、一部のメーカーのものを除き、基本的にこの金具にもリリース機構はありません。

3ピン金具に比べ靴の先を押さえる金具に余裕があるので、靴底に多少雪が着いていてもはめることができます。深雪の時期のツアーではおすすめですね。ただし、ケーブルが切れることもあるので必ず予備のケーブルと工具を持ち歩くことを忘れないで下さい。

また、3ピンとは違い、ブーツのサイズに合わせレバーの位置を調節しなければならないので、その場でスキーを交換し滑るには3ピンよりも少し手間がかかります。

ケーブル金具には「walkポジション」が付いたものもあります。写真のものがそれです。walkポジションでは、トゥピースの前側を支点にトゥピースそのものが上下に持ち上がるようになるので、より大股で歩いたり登ったりしやすくなります。また、深雪での歩行時、スキーのトップが浮きやすくなるので先頭でラッセルするのがとても楽になります。

ケーブル1


NTN<ニュー・テレマーク・ノルム>

近年、レースを含め高速でのスキーの安定性と操作性を求める方々に使われることが多くなった金具です。また、今後主流となる可能性のある金具でもあります。

他の金具に比べての長所は、スキーヤーの運動と力をより無駄なくスキーに伝えられるところが一つ目。靴底の形が左右対称なので、スキーの左右を交換して履くことが出来るのが二つ目。そして三つ目は、金具に留める部分の靴底のサイズが2種類しかないので、同じサイズどうしならその場で他の方とスキーを交換して滑ることが出来るところです。

短所はと言うと、どうしても仕組みが複雑になる分、重量も増してしまいます。一部のメーカーのものにはとても軽い作りのものもありますが、基本的には重くなってしまいます。また、専用のブーツが必要となり、3ピンやケーブル金具で使われる75mmノルディックノルムのブーツとは互換性がありません。その為、新しく始める方には選択の悩みが、いままで75mmのブーツを使ってこられた方にはあらたにブーツとセットで購入しなければならない財布の中身のハードルが高いのが悩ましい金具です。

アルペン金具のように手で操作することなく踏み込むことだけ=ステップ・インで履けるものや、リリース機構の付いたものもあります。walkポジションはどの金具にも付いています。

このようにまだまだ発展途上にある金具ですから、購入の際はショップの方としっかりとお話をしたうえで購入してくださいね。

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TTS<テレマーク・テック・システム>

日本ではまだ馴染みのない金具で、ピンバインディング<AT用の金具>の仕組みをテレマーク用に流用したものです。AT金具のトゥピースにテレマークのケーブル金具を組み合わせたハイブリッドな金具ですね。

NTN用のブーツで使います。見づらいかもしれませんが、写真にあるようにNTN用のブーツにはつま先の両側に凹型のパーツが埋め込まれたものがあります。そこをトゥピースの尖ったピンで両側から鷲づかみにしてブーツをスキーに固定します。

滑る時は、ケーブル金具と同じようにレバーをカカトに引っ掛けて滑ります。そのままでも歩くことは出来ますが、カカトのレバーをはずすとケーブル金具のwalkポジションのようになり、斜面の登りや深雪でのラッセルが楽になります。

この金具にもリリース機構はありません。

実際に使ってみた感想では、見た目から受ける印象とは違い滑りに違和感がなく、仕組みがシンプルなので重さも気にならない範囲。まだツアーでは試していないので様々な雪質の条件下での使い勝手は分かりませんが、個人的に今一番注目している金具です。

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流れ止め・スキーリーシュ

金属ワイヤーで出来たもの、ナイロンテープで出来たもの、短いものから長いものまでいろいろなタイプのものがあります。ようは金具からブーツが外れてもスキーとブーツをつなぎ留める紐ですね。NTNにはアルペンのようなしっかりとしたスキーブレーキが付いていたり、後で付けることも出来ますが、その他の金具にはブレーキが付いていないので、次にあげる理由から、遊ぶ場所によらずいつでも取り付けた方が良いと言えます。

ゲレンデにおいては、スキーが外れ流れてしまうと自分自身が苦労するのはもちろん、他のスキーヤーにケガを負わせてしまうことにもなってしまいかねません。また、バックカントリーにおいても、深雪の中でスキーを見失ったり、堅い斜面で流してしまうとその後のツアーが大変なことになります。

例外として、雪崩の危険が感じられる場所を滑ったり通過する場合は外しておいた方が良い場合もあります。ただし、そのような場所に出会っても引き返すことができるならば、その選択の方が最善の策であることは言うまでありません。

北米では、流れ止めが付いていないとリフトに乗せてくれないスキー場もあります。自分自身は元より、周りの方々のことも考え流れ止めは必ず取り付けて滑りましょう!

流れ止め=スキーリーシュも使うほどに劣化してゆくものです。日頃からの金具の点検とともに流れ止めの状態の確認も忘れないようにしましょうね。


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