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BLAND,NO BLAND,NO NAME,OWN NAME


参照:ミツウマ
参照:HIROKO KOSHINO
参照:カゴアミドリ

もう若者では無いし、これから先の人生において、ずっと使えるハイブランドの何かが欲しいなあと思って、いくつかハイブランドについて調べていたら、

わたしはみるみる元気が無くなって、体のあちこちはぶつけるし、どんどんウェルネスが下がって、「わたしは何…?誰…?」という悩みが深くなっていくのであった。なぜ…?

人が持っていたら素敵だと思うし、品物を見て素敵だと思う。だけどわたしが自分で、購入して、持つところを考えると、みるみる元気が減っていく。これは…欲しくないんだな。全く欲しくないんだ。え?なんで?

どうやら、そもそも、「ハイブランドは良い」「権威のあるものが良い」という考え方自体が、わたしにとっては輸入した考えだったようだ。わたし自身が育てて来た価値観と地続きになっていない。では、わたしが育てて来た価値観とはどんなものだろう。それは日本の作家さんで、日本の職人さんで、それとエピソードと合わせて出会わせてくれるお店の店主は、日本人だった。作りの良いもの。作り手の宇宙が作品を通して触れられるもの。それらが日常に与えてくれる感性。詩情。ひとつずつ生活の中のモノが、そういったモノに置き換わっていくことを通して、わたしはものすごく自分の感性を育ててもらった。感謝してもしきれないくらい。おそらくそして、それはどちらかと言うと、少し「侘び」とか「寂び」とかの方に寄っていて、少々の「粋」の価値観を、「洗練されている」と感じる感性であるみたい。

RMくんがかつて「辺境から来た人間」という言葉を使ったのを思い出した。

このごろ画家のキム・ファンギ先生が言った言葉が、頭の中でぐるぐる回っています。先生はニューヨークに行って、マーク・ロスコやアドルフ・ゴットリーブの画風を取り入れるようになったんですが、こんなことを言っていたんです。私は韓国人であり、それ以上のものにはなれない。私はこれ以上のことはできない。なぜかというと、私は辺境から来た人間だから。僕もそのことをずっと考えています。それが最近の僕のテーマですね。

わたしがハイブランドとクロスしない、その根底には、わたしの根本、根っこのところでトーンが合っていないことが原因かもしれない、と思った。王室御用達のブランドを持ってもわたしは貴族にはならないし、西洋の美意識を持ちながら育ってもいない。ハイブランドを必要とする文脈に生きていない。敬意も憧れもありながら何かがものすごくバッティングする。のは、仮にわたしが全身ハイブランドに包まれても、わたしの中身はどうあってもどうにも変えようのない、日本人で、「侘び」で、「寂び」で、それは辺境の感覚なんじゃないかと。

RMくんは自分のソロアルバムを発表するにあたり、彼は自分が纏っていたブランドを、とにかくとにかく全部剥ぎたかったのだ、という気がした。

防御でもありフレームでもあるブランド。「BTS」というブランドは彼を守りもし、高めもする。ぐっと良さを引き出して、魅力がよく見えるようにデコレートする。機能の高さは、つまりブランドの重みだ。彼が「重い」と言った、冠。

ブランドを外した自分は何者だろうか。「BTS」はグローバルで匹敵するブランドに成長した。だが「RM」は?「RM」という韓国育ちの青年は?

ブランドを外した生身の自分が、同じ音楽市場のフィールドで、「BTS」と対等に、あるいは世の全てのアーティストと対等に戦いたいと、彼は思い、その為に、彼は自分の持っている物を見つめ直すところから始めたのだ。遠くにある「トレンド」という借り物の音楽じゃなく、自分が育つ過程でずっと聴いてきたもの。自分の感性を育てた韓国の共有意識。世界が与える評価じゃなく、どれだけの話題性が作れるかじゃなくて、純粋に自分に与えた影響の大きさで、彼は自分以外のアーティストの色を、自分の作品に混ぜた。

それが何かといえば、端的に言えば、「野の花」を愛する感性だったんだろう。名前の無い花を愛し、剥き出しの土を愛し、小さなライブハウスに憧れ、詩人に憧れた。「私は韓国人であり、それ以上のものにはなれない。私はこれ以上のことはできない」。そして、その自分で世界の「ハイブランド」と、「権威」とに匹敵したいと望むのが、彼の、自分自身で言う「欲」なのかなと思った(RMくんが出演した番組「知っておくと役立つ人間雑学」で、彼は自分を説明するなら「欲」と言っている)。


昨日ヤマシタトモコさんの漫画『異国日記』読んだら号泣でしたわ。

人と違うって孤独だよ。理解してもらえない。だけどどうしたってこの形でしか生きられない。変われない。自分にとって良いものを積み上げていても、誰も関心を持っていない。みんな違う方を見てる。

TabloさんとSUGAくんの「シュチタ Ep.5」。隅から隅までじーんとしたけど、Tabloさんが言った、

どちらかを選んだほうがより寂しくないと勘違いするのかもね。SUGAさんが言ったこのグレー、グレーエリアは実は思っている以上に寂しいんだよ

にすごい感心してしまった…。そうなんだよ…。「ハイブランドを持たない」という論調を探すと、「ハイブランド憎し」みたいになっていて、わたしはそういう訳では無いし(つまりお金があって品が無いようなユーザーが気に触るのだろう。そりゃわたしも気に触る)、「ハイブランド憎し、ユニクロ万歳」みたいになると、いや、わたしは自分のためには決してユニクロを買わない…。

まさにまさしく「グレー」にいるんだろう。そしてグレーってのは単色じゃ無くて、すごく多岐にわたるんだろうな。人口は大けれど、なかなか目が合わない。

しかし自分がわかりやすい白でも無く、黒でも無く、グレーにいて多様性に「1」貢献していると考えると、

誰かはわたしであり、わたしは誰かなのだから、わたしでない人が「白」あるいは「黒」を担当してくれているおかげで、わたしは自分で変えようの無いグレーという自分を選択して生きることができる。大きなくくりではみんな孤独だし、孤独であることすら皆一緒なのだから、それぞれの人の孤独の味こそ、その人の唯一性の、最も意味のある部分かもしれん。誰かと同じ味の孤独じゃなく。世界がいつでも多様さを保ったままでいるために。

わたしがわたしを生きるために、あなたはわたしと違う考えを持って、わたしと違う感性でいてくれたほうがいい。

最近、BTSの方々の、さまざまなちょっとした動画など、が、すごーーーくすごーーーーく自分の中の重いところに響いて、ちっとも言葉に出来ない。そもそも心の準備なくては見始められない。

彼らの言葉の端々、態度、様子に、しばしば、がーーーーんと、これ、彼らの剥き出しの、構築中の自我だ、

これ、自分自身の根幹を、土台の、基礎のところから、家で言うなら組み上がった家を、骨組みだけ残して解体して、基礎の部分から調整し直し始めている、

そういう感じがして、とても、わたし自身の土台のところを揺さぶられるのだ。

彼らには、今、しなければならない会社に用意されたプロモーションが無い。言わなければならないコピーが無い。作られたディレクション、演出、装置が無い。「BTS」というブランドは、今、停止していて、むき身の、一人の人間、中の人が一人ずつ、一人で、自分の中から世に問うものを改めて取り出し直そうとしている。つまり、彼らの最も原始的な、人としてのコアの部分について、向き合って、それをどうするのか、その手に取りつつある。あるいは取り上げている。

ものすごい、究極的に孤独な、孤高の道のり。その最初の部分。ああ。これまでと全く違う空間にいる。そこで踏み出す次の一歩も、乾きも、飢えも、叫びも、ささやきにも、

すっごい孤独だーーーーーー。

そう思われて、ひりひりして、どきどきして、知ってる人のはずなのに、明らかに前とは違う人、に、わたしには見え始めている。あるいは違う思いでしか見られない。

であるが、その孤独の中にはたくさんのものがたっぷり詰まっている。

わたしの孤独。

わたしの孤独。わたしの憎しみ。わたしの愛。わたしのインナーチャイルド。わたしの自尊心。わたしの劣等感。与えられた言葉。ぶつけられた言葉。発せられなかった言葉。取り返しのつかない言葉。これまで読んだ本。これまで歌った歌。わたしの感性。わたしの美意識。それは誰とも違う。誰とも違う。絶対に違う。共有なんかしなくて良い。共有できるはずがない。

「孤独」という、わたしの唯一性をぎゅっと集めて保つ機能を、小さく丸めて掌に置いて、わたしはここ日本という国で、日本の皆さんに宛てて、言葉をタイプする。矛盾。孤独は機能の一部だ。

全てのブランドを自分から外したら、何が残るだろうか。

わたしはそれは、

知性と、
感性と、
創造性、

じゃないかなと思った。

RMくんが日々、莫大な時間を使ってやっていることが何かといえば、それなんじゃないかと。きっと。自分からブランドを外しても、どの形容詞を外しても、どの役職を外しても、何もかも奪われても、奪い去れないもの。残るもの。時間も気力も差し出して、投資して、夥しい数の絵画、夥しい数の書籍、知性を、感性を。

自分自身がブランドになるために。

ワードローブから気分でぱっ、ぱっと取った服が、適当に見えてコーディネートとして成立しているのが最高だよね…。朝の天気を見て、湿度を感じて、体調や行先の用途に応じて、選んだ全てが、なぜかマッチしている、という。

それは知性と感性なんだよ…。
そして、「今日」と自分をコラボして「今日の自分」をクリエイトする創造性。


それでは、また。




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