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中古リノベに立ちはだかる壁。何からはじめるべき?

空き家率が年々上がる日本で、空き家を活用してビジネスをしようとする人、中古住宅をリノベしたいという人が増えてきました。

でもいざ進めようとなると、物件探しのハードルがけっこう高いんです。



家余りの時代に大量生産される新築


日本では、新築と中古を合わせた取引のうち、中古の割合は実はたったの10%前後。欧米では長持ち家を建てて長く使い続け、購入するのは中古住宅が普通になっていて、中古市場の割合は70~90%を占めています。欧米と比べと日本の中古市場はまだまだ小さいんですね。

家が余っているのに大量生産し続けてているのが日本。住宅の平均寿命だって約30年という短さ(欧米では倍以上)。これじゃあ使い捨て住宅ですね。大量の廃棄物となり環境にも悪い。

なぜ日本ではこんなにも中古市場が小さいんだと思いますか?
米国人より日本人の方がもったいない精神がよっぽど根付いているような気がしますが・・・。実際には日本人は新しいもの好きで、ものを大切にするという気持ちが少ないのでしょうか?

そんなことはないですよね。多くの日本人は自然にや寺社仏閣に対する敬意を持っているわけですし、若い人でも古民家はほっとするとか、古材をつかった道具が好きという人は多い。

中古住宅はハードルが高い!?

国がこれまで政策的に新築を推進してきたということもあります。でも「古きよきものを大切にしたい」「35年もローンに縛られるなんだ嫌だ!」という人たちも、いざ中古住宅を扱うとなるとハードルが高いことにきづかされます

そう、日本で中古住宅を扱うのは、けっこう難易度が高いんです。「お買い得なのか?を判断できない」という壁にぶつかるからです。

最近では格安で古民家を手に入れ、自分たちでDIYするという情報発信をよく見かけるようになりました。田舎ならただ同然で不動産が手に入る、と言う人もいますが、需要があればちゃんとした値がつくのですから、安いには理由があります。そこにはただでも手放したい理由があるはずです。それに格安物件は不動産情報にあまりのっていません。ローカルな情報や交流関係を頼ることになります。

物件探しでまずつまずくのは?

・使いづらそうな間取り(キッチンが孤立して暗く寒いところにある)
・とにかく寒い(昔の家は隙間だらけで断熱性能が低い)
・メンテナンスをしていない家が多い(減価償却的な価値が下がるので、手を入れて売ることを想定していない)
・耐震性能が心配(1981年以前に建てられた住宅は耐震性能が低い)
・希望の間取りにできるのか?を判断できない
・リノベにどのくらい費用がかかるか見当がつかない
・法的にどんな制限がかかる土地か、それによりどんな具体的問題が出てくるか判断できない

こういった諸々のことを考えた総合的な判断が超難しいんですね。これでは中古市場が活発にならないのもうなずけるところです。

難易度別チェックリスト

それなりに条件のいい中古住宅を手に入れてリノベしたい!という場合、「何からはじめたらいいの?」「どこを確認すべき?」というチェックすべきポイントを難易度別に挙げてみます。

難易度1~2:誰でもできるチェックポイント

□ 屋根の状態を目視で確認(瓦がズレたり劣化が激しくないか)
□ 外壁の状態を目視で確認(汚れ具合、クラックなどの劣化状況)
□ 基礎の状態を目視で確認(クラックなどの劣化状況)
□ 敷地が手入れされているか(雑草ぼうぼう、ゴミ散乱など)

難易度3~4:所有者さんに話を聞き、現地の空気を感じよう

□ 周囲の状況(方角、風の通り、湿度高そうな場所か、山が近く影が多いなど)
□ 周辺の土地との高低差や擁壁など
□ 天井に雨漏り跡のシミがないか確認
□ 汚水排水方法の確認(田舎だと浄化槽や汲み取り)
□ リフォームやメンテナンスの経歴を聞く

難易度5~6:資料や図面から読み解く(この辺から専門家に相談)

□ 災害危険区域でないかの確認
□ 築年数や空き家になってからの年数で状態を想定
□ 居間の窓から見える景色や方角
□ 柱や壁の位置やバランス
□ 用途地域や利便性、活用の幅、将来の売却のしやすさ検討

難易度7~10:プロに頼む

□ 法的な問題点を確認(新築や増築不可能な場合もある)
□ 劣化度チェック
□ 耐震診断
□ 間取り変更の検討

金額や間取り、築年数だけでは見えないこと


空き家になってほったらかし状態が長い家は劣化が進みます。築年数だけでなく、家がどのように扱われてきたかで大きな差がでるのが中古住宅単純に不動産の金額や築年数、間取りだけでは分からないことが多いんです。

私が住居兼事務所用に購入した中古住宅は、空き家になって数年経っていましたが、元所有者さんが近所に住んでいて、定期的に空気の入れ替えをしてくれたり、敷地の草引きをしてくれていた、という超ラッキーな物件でした。屋根と外壁の状態が良好で、内部の雨漏りもありませんでした。屋根の吹き替えと外壁塗装のメンテナンスをしてくれていたからです。

建物の状態を確認したときに「これなら内部の造作に費用をかけられる」と心の中でガッツポーズしました。屋根や外壁の修繕は費用がかなりかかるので、予算をそっちに持っていかれることになると、快適な暮らしをするための内部のリノベ費用が大きく削られてしまうからです。


解体後の事務所部分
工事中の様子

不動産購入にあたって、所有者さんに見せてもらってから2日後に返事をし、1週間後に契約したと以前のブログで書きました。
即決即断できた理由は、手に入れたいものを明確にしていただけでなく、仕事柄、上記の検討事項を最短で判断できたからというわけです。


倉庫として使われていたスペースをエントランスに変え、古い家の面影を残しました。
エントランスの壁はDIYで珪藻土塗り


家の内観をさせてもらった時
リノベ後


はじめての内観時
リノベ後はオフィススペースに
木製窓には複層+LowEガラスを入れました。
桧や杉などの材料支給で建具屋さんにつくってもらいました。
築56年の家ですが、天井、壁、床を解体しつくり直し、電気配線、水道給排水も更新したので、新築のように快適になりました。


おわりに

建材のコストがぐんぐん上がり続けている昨今、数年前と同じ感覚では、家は建てられなくなりました。
私個人のケースでは、新築よりもずっとお得に中古リノベをすることができました。同じ規模、建材のグレードで家を建てようと思ったら何倍も金額がかかったと思います。ただしそれは、中古リノベの方がお得!と単純に一般化できることではなく、うまくいい物件に巡り合えるかにかかっています。

中古住宅を見極めるのはハードルが高く、考えることが多くてとってもめんどくさそうですよね。こんなめんどくさいこと全てすっ飛ばして、勢いで購入するというのも一つの生き方(姿勢)ですが、人生を左右する大きな買い物だもの、ちゃんと納得して買いたいという人は参考にしてみてください。
(愛媛県松山市近郊にお住いの方は、現地に同行して事前アドバイスできますのでご相談ください。)


築56年の空き家が再生され、豊かな環境での暮らしが実現しました。
一歩出ると海へ!


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