「 未定 」#57 Cheerful Gale's Neil

 イズコはシーレの街で傭兵の練習試合を見ていた。一人際立つ動きを見せて相手を翻弄していた男がいた。彼がきっと「疾風のニール」に違いない。デルタから彼の話は聞いていた。剣さばきが速く型にはまらず予測できないような動きをするということで有名な男がいるということを。なるほど目の前で練習試合を見ることができたイズコはとても興奮していた。

 試合の後、その名手は数名の仲間をからかってはしゃいでいる。そのうちの一人に泥団子をぶつけては逃げ回っている。そのうち彼は歌を歌いだした。他の戦士数名が一緒につられて歌い出す。にぎやかで楽しそうだ。
イズコは近くで腰を下ろしている戦士に話しかけた。

「ねえ、先程試合で素早い動きで打ち勝ったあの人が(疾風のニール)かい?」

「何だお前知らないのか、よそ者だろう。彼がニールだよ。初めて見たのかい、剣さばきはすごかったろう。ああ、彼は南方の出身で陽気でにぎやかな性格なんだよ。いつもあんな感じで戦い以外は飲んで歌って踊ってエンジョイだよ」

「へぇ〜」
ニールは陽気に踊っていたのが、何かを見つけたらしく一目散に走り出している。その先には美女が2名見学をしていたのだった。彼は何やら早口で彼女たちにまくしたてると、彼女たちを連れてどこかへと行ってしまったのだ。
「陽気で賑やかなんだなぁ、性格は聴いてなかったからちょっとイメージとは違ったけど・・・」イズコはちょっと声をかけてみたかったが、無名の魔術師など相手にされなそうだし、また今度来てみよう。
イズコはこの場所から立ち去ると別の場所へと足を進めた。

「おーい、チェロ!いるかい?」
どこからともなく、青い鳥が飛んできた。
「やあ、久しぶり。どうしたの?」周りを飛び回りながらチェロは話しかけた。

「えーと、この前頼んだあれ、わかったかい?」

「ああ、エルフの歌い手のアイリーンの居場所でしょ。誰か他の人に聞けばいいのに」

「そんなこと、誰も教えてくれるわけ無いだろ」

「他の鳥達から聞いたら、この街を出て少し歩いたところの森に潜んでいるっていう話さ。ちょっと変なことに利用しないでよ」

「僕が?当然だろ。ちょっと会ってみたいだけさ。なんか今日は機嫌が悪そうだね」

「そうじゃないけど、、なんか最近人間が信じられなくなったのさ」

「・・・おい、いまさらかい。仲良くしようよ。調べてくれてありがとうね」

「今度は僕の頼みもきいてよね。それじゃまた」
そういうと彼は素早くどこかに飛んでいってしまった。いつになく口調が攻撃的だったというのは気のせいだろうか。アイリーンが今どこにいるのか知ることができたし、あのドラゴン襲撃事件からずっと気にはなっていたんだ。彼女は今どこにいてどんな気分だろうかっていうことを。とにかくその森に向かってみようか。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?