ダークパターンは今のうちに修正しといたほうがいいって話

前に寄稿した記事があるのですが、それについてちょっとだけ追加の情報が出てきたのでお話します。寄稿した記事の内容は以下をどうぞ。

読んでくれたらうれしいし、読んでくれたほうがこのページを理解しやすくなるかもしれないですが、でも別に読まなくても大丈夫です。なぜなら、ここでめっちゃ簡単に解説するからです。そして追加の情報もお伝えします。

そもそもダークパターンとは

「ダークパターン(DARK PATTERNS)」とは、ちょっと前に出てきた造語です。
簡単に解説すると、Webサイトやアプリで会員登録したり商品を購入したりするとき、ユーザーが意図していないことをすること、あるいはそういうことをしてるサイトことです。
具体的には以下のような行為がダークパターンにあたります。

・登録時のデフォルト設定が「メールマガジンを受け取る」になっている
・無料期間が終わったら自動で有料プランに切り替わる
・退会導線が分かりにくい
・退会しようとするとポップアップなどで引き止められる
・送料が別途かかることが、購入する直前まで知らせれていない
・購入時、突然謎の追加設定が出てくる
(例えば、購入ギリギリになって「包装有無の指定」があることが示され、しかも追加料金がかかる「包装する」の設定が選ばれている、など)
・デフォルトがちょっと高いプランを指定している
(例えば、包装が高級/普通/無しとあるとき、デフォルトで「高級」を指定してある、など)

要するに、「なんかウザいサイト/サービス」です。そして、こんなサービスは世にあふれています。

ダークパターン認定は、けっこう厳しい

グロースハック手法として、退会時にポップアップを出して「なんで辞めるんですか?」「あれがイヤだった?」「どうしたらいいと思う?」って質問攻めにする、みたいなことが流行った時期がありました。
「サービス改善のための質問です」って謳ってるけど、実際にはたぶん、ウザいほど回答必須の質問をして退会する意欲を削ぎたい、というのが本音でしょう。
これはサービスの質的にダメだと感じますよね。

それはさすがにヤバいと思ったのか、別の手法が取り入れられました。退会時にポップアップを出して、入会していると受けられる特典や利点を再度認識してもらう、という手法です。「一回考え直して?」ってやつですね。
このくらいならいいと思うじゃないですか。でも、ダークパターンの思想的にはダメです。

なぜなら、入会と同じ労力で退会もできないといけないからです。ポップアップを出してそれを読ませたり、クリックする回数が多かったりすると、それはもうダークパターンと認識されます。

ダークパターンってヤバいよね、って提唱した人のサイトに、どんなものがダークパターンか示してあります。TYPES OF DARK PATTERN(リンク先は英語)をご確認ください。けっこう厳しいんだけど、つまりは「あからさまにウザいページ」だけでなく「ちょっとウザいページ」もダメ、としているので、分かりやすいっちゃ分かりやすいです。

ユーザーの不利益を嫌うようになっている

ヨーロッパのほうが個人主義思想が強いからなのか、理由はよくわかんない(適当)んですが、プライバシーに関する認識があっちのほうが強くて、厳しいです。EUのGDPR(一般データ保護規則)が特に有名です。
(メルマガでマーケティングとかしたりMAの資格とか勉強したことがある人なら、これらに加えてアメリカはカリフォルニア州のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)も学んだと思います。)
GDPRの前文には、以下のような内容が書かれています(意訳)。
・個人データが保護されるのは人間の基本的な権利である
・人は、自分自身の個人情報の支配権をもつべきである
・今あるものよりもっと強力な、個人情報を保護する枠組みが必要である

iOS14.5のアップデートでは、アプリトラッキングに関する制限が設けられました。これをアップデートした人の実に8割強が、トラッキングを許可しない設定にしました。一時期、テレビCMでもやっていましたよね。追跡されてレコメンドされるの、ウザいもんね。これにより、既存の追跡型広告がダメージを負ったようです。
appleがサードパーティを排除して、自社だけがユーザーデータを使っていけるようにしようとしている感もあるのですが、実はそれだけで済む問題ではなくて、この流れはほかにも広がっています。
海外資本のサイトとかを見ると、すでに「Cookie利用規約に同意してくれぇー、同意してくれねぇとオレたち、あんさんのCookieを利用できないんじゃぁー」というポップアップが出てくるようになっています。こんな感じで、多くがCookie規制を受け始めています。そうしないと、社会的に置いて行かれちゃう、忌避されちゃうからなんでしょうかね(あっちの法的にどうだったか、調べてなくてゴメン)。

数年遅れずにトレンドがやってくる可能性が高まった

Cookieの利用規制は、GoogleChromeでも実装される予定だそうです。今回、新しくこのページを作ろうと思った理由は、ここにあります。

これによる影響はめちゃめちゃあるのですが、それは一旦置いておきます。なぜなら、ダークパターンの話じゃないからです。
なぜダークパターンの話じゃなくてプライバシー保護の話を延々としてきたのかというと、欧米(特にEU)のトレンドが日本に入ってきている事例だからです。そして、ダークパターン規制の動きは、欧米のトレンドだからです。

かつては、欧米のマーケティング的なトレンドが数年遅れて日本に入ってくる、というのが一般的な認識でした。ですがアプリアップデートなどによって、全世界で同時に規制されることがあり得るようになっているのです(iOS14.5のように)。

GDPRはEU由来のもので、アメリカにおける大きなプライバシー規制はカリフォルニア州のCCPAくらいでした。GAFA(とかGAMFA)とかは、自分たちが築いてきた「ユーザー情報が集まってくる仕組み」をけっこう重要視していて、かつ、めちゃめちゃ活用しています。Googleはその筆頭みたいなものでした。
そのGoogleですら、(たぶん、イヤイヤとはいえ)GDPRとかに合わせてCookieの利用規制を盛り込むようなのです。GoogleChromeがアップデートされれば、全世界で同時に対応する必要に迫られます。safariはすでに規制済みなので、それと合わせると、世界のほとんどのブラウザでCookieの利用規制がなされることになります。

上記のプライバシー保護の件と同様に、いつか、けっこう厳しめな欧米のダークパターンの規制が、全世界で一斉に適応されちゃう何かが起きるかもな、と思います。そのときに慌てないように、今のうちから対応しといたほうがいいんじゃないの、というお話です。(※1)

ダークパターンやめといたほうがいいよまとめ

・そもそも、ユーザー体験としてよくない
・嫌いな人がたくさんいて、規制が広がってきてる
・いきなり、厳しめな規制が適応される可能性がある

以上の理由から、ダークパターンを使うのはオススメしません。

でもたぶん、自分たちがユーザーの不利益になるようなダークパターンをやっているんだ、という認識は、施策側にはあんまりないと思います。
グロースハックとして取り入れられてきた手法のなかに、潜んでいる感じですね。

ですがそのような手法は、短期的には成果が上がっているように見えるかもしれませんが、結果的にはダークパターンに分類される邪法であり、ユーザー体験を貶める悪手です。
自分が使うときどうか、って考えるといいと思います。

退会時に無限に質問されたら、たとえその一瞬は退会は諦めたとしても、そのサービスのことは大嫌いになりますよね。
1人の退会を減らせるので、数値的には改善されているように見えます。ですがそれは、目に見えない、サービスを嫌悪する敵を1人作っていることにほかならないのです。
気持ちよく退会させてあげたほうがいいよ。「他人になる」場所で、「敵を作ってる」んだから。

グロースハック手法もよく吟味し、ダークパターンにならないようにしよう、っていう目が必要なんじゃないかな、と思います。

おわりに

安易に手を出してしまいがちで、しかも短期的には数値が改善されたと感じることも多いダークパターン。一般的なグロースハックのなかに潜んでいることもあるので、気づかないうちに手を出しているかもしれません。

自分が使っているサービスはどうかな、このサービスを自分が使うときはどうかな、と考えてみましょう。

かつて、「ファンにならざるを得ない」と「ファンになりたい」の違いというページでも書きましたが、無茶な施策でつなぎ止めをしたり、使わせる金額を上げるよりも、誠実にコンテンツを作っていったほうがいいと思います。

それでは、みなさんに良きクリエイターライフがあらんことを。

【2022/1/13追記】
※1:今のうちから対応しといたほうがいいんじゃないの、というお話
もし、ダークパターンに対応するようなイベントが何も起こらなかったら……そんときは、コンテンツをよくできたね! おめでとう! ってことで! ね!
真面目に言うと、ユーザー体験(UX)は積み重ねなので、何か一つの施策で完全に崩壊することは、あんまりありません(たまにあります)。
ですが、小さなダークパターンの積み重ねが、「なんか分かんないけど、このサービス、嫌いだな」という感想を導くのです。
ユーザー体験に関しては、「違和感に気づく可能性があり、違和感を言語化できない人」と「違和感に気づく可能性があり、違和感を言語化できる人」がいるだけで、全員が違和感には気づく可能性があるものだ、と感じています。


2021年末くらいから、急激に「ユーザーの不利益になる広告や表現」などが規制されたり、プラットフォーム側が対処したりするようになってきました。
それらの事例もまとめていきます。
早めに対応していた人、よかったね!!!!
対応してなかった人、ざまぁないね!!! あっ、間違えた、これから良くしていこうね!

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