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「トビタテ!留学JAPAN」に参加しようと思っている方へ

皆さん、「トビタテ!留学JAPAN」をご存知でしょうか?

留学業界で働く私たちにとっては、とても穏やかではいられない「トビタテ」について、今日は私の正直な気持ちを書いてみたいと思います。

「トビタテ留学!JAPAN」とは?

「トビタテ留学!JAPAN」は、文部科学省が推進している、留学奨学金制度だ。

ざっくり言うと、留学をしたい高校生・大学生が、自己アピールや留学プランを提出し、それを文科省中心のチームが選考をして、合格した者は国から返済不要の奨学金を受け取って留学をする、そんな制度だ。

なんて素敵な制度であろうか。

あまりに聞こえが素晴らしいので、毎年応募時期や渡航時期になると、留学エージェントがてんやわんやで問合せに対応し、その流れで海外の学校にも問い合わせがくる。

「成績・語学力は不問」

高校生・大学生であれば、誰でも応募資格がある。

ただし、応募にあたり、ボランティアやインターンなどの探究活動を含めた「自由な留学プラン」を立てて提出する必要がある。

自己アピールやそのプランの内容によって、文科省中心のチームが合否を決めるのだから、とても重要なプランだ。

高校生や大学生は、興味や今までの活動、将来の夢などを掛け合わせて、学校の先生や教授、親や周りの大人と相談しながら、唯一無二のプランを立てて選考に挑む。

「自由な留学プラン」という名の丸投げ

文科省によると、「自由な留学プラン」とは、「自身で計画した、留学先機関以外での活動」とのこと。

留学先として選んだ学校での授業や課外活動・アクティビティは、自主活動には含まれず、現地の学生との交流や環境問題に関する調査、企業訪問、ボランティア活動などを自身で行うことを指す。

※文部科学省サイトより

「実行」できることがプラン作りの条件なので、文科省としても、「応募者が実行できる内容を企画した」と受け止めているのかもしれないが、自分の立てた計画が海外で実行できるかどうかの知識を持ち、且つ現地で安全に企画を実行できる能力や、手伝ってくれる人を見つける人脈がある日本の高校生・大学生は少ない。

そうなると、応募者は留学エージェントに頼ることになり、留学エージェントは海外の学校に頼ることになる。

「トビタテ」は、2013年から実施しているが、私のような海外の学校で働くスタッフに、文科省やプロジェクトチームからヒヤリングや訪問があったことは、私の知る限り一度もない。

実際に留学生を受け入れる、私たちのような学校スタッフには、日本の学生たちが「自由な留学プラン」というものを立てた後に、「このプラン内容を学校でできますか?」と寝耳に水の問い合わせがきて、頭を抱えるわけだ。

日本にはルールがあるように、海外でもルールがある。

例えば、日本に留学予定の外国人が「自由な留学プラン」として、「寿司職人として働き、日本のわびさびを自国の人に伝える」という計画を立てたとする。

そして、日本語学校に「あなたの学校に私が通ったら、寿司職人として働けますか?」と問い合わせる、こんな具合だ。

日本語学校は日本語学校であり、寿司屋ではないので、こんな質問が来ても困ってしまう。

たまたま寿司屋の知り合いがいたとしても、就労ビザもない素人の外国人に、お客さんに出す寿司を握らせてくれる一流の寿司屋は見つからないだろう。

ゆえに「トビタテ」も、応募者は留学先のビザや法律に従って、現実的な内容を留学プランに含める必要がある。

特にボランティアやインターンなどは、トラブルに巻き込まれる危険性もあるので、現地の法律やルールを知っている人からのアドバイスをもとにプランを立てることが大切だ。

「トビタテ」に応募するような学生は基本的に真面目であるし、自分で立てた企画を文科省が合格として奨学金を出すのであれば、何とか留学先で実行したいと思うであろう。

だが現実には、留学エージェントがあちらこちらの海外の学校に協力を求め、学校が協力できなければ、この企画は手伝えない、となる。

現状では、出鼻を挫く悪者役を、留学エージェントや現地の学校が担っている。

文科省やプロジェクトチームは、「自由な留学プラン」という大きな枠で募集をかけるのではなく、できること、できないことのガイドラインを予め応募者に伝えたり、安全性、法律、ビザなども踏まえて、現実的なプランに対して支援をしてほしいものだ。

「トビタテ」が求める人材像の完成度が高すぎる

「トビタテ」では、求める人材像というのがある。

文科省が考えた、ハイスペックな人材像を公開することで、未来の日本に貢献することが目的の奨学金であることを、応募者や保護者、支援者や一般市民にアピールするためだと思われる。

人材像とはこうだ。

高校生に対して求める人材像   ※文部科学省サイトより
大学生に求める人材像      ※文部科学省サイトより

この人材像、どう思いますか?

これ、日本の大人できてますかね?

日本では、自由な発想や探究心が大切と言われ続けているが、現状は苦戦している様子がまざまざと見て取れる。

この大人でもビビるような完璧な人材像が育つような教育システムは、そもそも日本にあるだろうか。

日本の高校生・大学生全員にこのような人物になってもらいたいが、現状は理想でしかないので「トビタテ」が求める人材像として設定した。

私はこう捉えたのだが、どうだろうか?

高校生、大学生を鼓舞したい気持ちは分かるが、ならば海外留学する学生に奨学金を出すのではなく、日本の教育にもっとお金をかけたらどうだろうか。

それでも「トビタテ」にこだわるのであれば、海外の政府や学校と連携をして、「自由な留学プラン」を、より現実的で達成できるものにしてあげてはどうだろうか。

この奨学金を日本の教育に充ててほしい

最終的には、ここに行きつく。

私は海外の学校スタッフなので、留学生が増えるのは嬉しいし、留学は人生のプラスになると思う。

だが、「トビタテ」で壮大なプランを立てても、実際には英語力が足りない、企画が非現実的、現地のネットワークを持っていない、などの理由から、企画通りに実行できる学生はほとんどいない。

文科省の目的が、「自由なプランを企画して実行する」ということなのであれば、海外にこだわらなくても、日本で企画・実行した方が、そもそも留学する資金がない方も参加できるし、海外に興味がない方も参加できる。

言葉のバリアもなければ、違法就労の心配もない。
周りの大人にも協力を求めやすいし、達成できる可能性も上がる。

そしてなにより、日本の問題に目を向けることが、将来の正しい選択に繋がるのではないか。


スタエフもやってます🎵

瀬戸内かわいい部さん(https://note.com/setokawa)の写真から拝借しました💛

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