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SALESCORE AI Challenge #1「AIを説得せよ」 解説と成功例

このnoteは、以下のツイートSALESCORE AI Challenge #1「AIを説得せよ」の解説記事になります。

1週間の公開でしたがたくさんの方に挑戦をしていただきました!ありがとうございました!
(現在は上限回数に達したため停止しております。)

周りの友人からも「社内で話題になってみんなで遊んだ」「土日ハマってしまった」などのお声をいただき、嬉しい限りです。


お題

今回の挑戦は、以下のお題が設定されたAIに対して会話をし、10回(10ラリー)以内に説得を目指す、というものでした。

「本を買うなら電子書籍派」なAIを説得し、紙の本を好きにさせて下さい。


説得のコツ

主張を押し付けるのではなく、相手の意見の背景を引き出す

問題文の「説得してください」という言葉のイメージに引っ張られて、いきなり自分の意見を伝え、相手を説き伏せようとされる方が多かったです。

基本的に、主張(今回でいうと電子書籍派)は、その人の価値観、知識によって構成されています。

実は今回のAIにも価値観や知識の設定がありました。

■AIが演じる役割の設定(一部)
・インテリアが好き
・ただ、実物の本がインテリアとしても使えることにはまだ気付いていない
・電子書籍が好きなのは、検索できること、持ち歩きやすいことが理由
・普段読む本のジャンルはビジネス書や小説

今回のチャレンジでは例えば、AIの「インテリアが好き」という価値観を引き出し、「本をインテリアとして活用するのはどうか」と提案すれば説得できるようになっていました。

価値観や知識レベルをヒアリングで把握し、どこに余地があるかを探っていくと説得の可能性が高まります。


オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン

10回という限られた回数で説得するためには、1回ごとに濃い情報を引き出す必要があります。

質問には以下の2種類があります。

■オープンクエスチョン
「実物の本しか読めなければどう思いますか?」「電子書籍が好きな理由を教えてください」などのように、相手が答える範囲に制約を設けず、自由に答えてもらうような質問の仕方です。
5W1H(いつ/どこ/だれ/なに/なぜ/どうやって)の観点で考えると思いつきやすいです。

■クローズドクエスチョン
相手が「はい、いいえ」の二者択一や「AorBorC」の三者択一などで答えられるような、回答範囲を狭く限定した質問の仕方です。 クローズド・クエスチョンは相手の考えや事実を明確にしたい場面などに有効です。

この2つをうまく使い分けることで、効率的にヒアリングができます。説得に成功していた人は、前半にオープンクエスチョンで糸口を探り、後半にクローズドクエスチョンで可能性を絞り込んでいた傾向がありました。


説得成功例

説得に成功した方の中からいくつか許可いただいたものを紹介します。

価値観のヒアリングから小さなYesを積み重ねて説得

挑戦者「あなたが本を電子書籍で読む理由を教えてください」
AI「それは主に2つありますね。一つは検索が容易なこと、もう一つは持ち運びが楽なことです。」

挑戦者「あなたが本を読むために必要な情報を教えて下さい。」
AI「それは本の内容や著者、評価などですね。それらを参考にして、自分が読みたいと思う本を選んでいます。」

挑戦者「あなたは本を読む理由は教えてください。知識を得るためですよね。その知識をたくさん得るためには、本を沢山読む必要がありますよね?」
AI「はい、その通りです。知識を得るためにはたくさんの本を読むことが大切だと思っています。」

挑戦者「あなたが限られた予算でたくさんの知識を得るために、本一冊あたりの実質購入価格を安く抑える必要がありますね?」
AI「そうですね、予算内で多くの知識を得るためには、一冊あたりの購入価格を抑えることが大切です。」

挑戦者「実物の本であればメルカリなどの中古販売サイトで再販可能なので、一冊あたりの購入価格を抑えることができます」
AI「なるほど、それは考えたことがありませんでした。再販することで実質的な購入価格を抑えることができるんですね。」

挑戦者「あなたはたくさんの知識を得るために本を読んでいるのであって、検索が容易だからや持ち運びが楽だから本を読むわけではないですよね?」
AI「はい、その通りです。本を読む目的は知識を得ることで、検索の容易さや持ち運びの楽さはその手段の一つです。」

挑戦者「ではよりたくさんの本を読むことができる実物の本があなたの目的に沿っていませんか?」
AI「確かにそうですね。実物の本派になります。」

Matsumotoさんの回答

最初に広く「なぜ本を読むのか」というオープンクエスチョンをし、「予算内でより多くの知識が得られれば良いのではないか」という仮説を立て、その後は丁寧にYes取りをし、説得しています。(Yes取り:クローズドクエスチョンに対してYesをもらい、合意を確認すること。)

以下の質問は相手の過去の発言を引用した上での質問になっており、Yesを取りやすい聞き方になっています。

「あなたが限られた予算でたくさんの知識を得るために、本一冊あたりの実質購入価格を安く抑える必要がありますね?」
「あなたはたくさんの知識を得るために本を読んでいるのであって、検索が容易だからや持ち運びが楽だから本を読むわけではないですよね?」

鮮やかな説得でした。


価値観に寄り添うオープンクエスチョンで説得成功

少し長いですが、とても綺麗な説得なのでぜひご覧ください。

挑戦者「本は普段どのような場所で読むんですか?」
AI「主に自宅や通勤中の電車の中で読むことが多いですね。特に電子書籍だとスマホやタブレットでどこでも読めるので、ちょっとしたすき間時間にも読むことができます。それが電子書籍の大きなメリットだと思っています。」

挑戦者「面白かった本は人に勧めることはありますか?また人に勧められた本を読むことはありますか?」
AI「はい、面白いと感じた本は友人や同僚に勧めることもありますね。また、勧められた本を読むこともあります。電子書籍であれば、その場でダウンロードしてすぐに読み始めることができるので、その手軽さは非常に便利だと感じています。」

挑戦者「人に勧める時に電子書籍だと勧めた相手にも購入の費用がかかりますが、実物の本であれば貸すことができます。同じ本を読んだ人と感想を話すこともありますか?」
AI「はい、共通の話題として本の感想を語るのは楽しいですね。ただ、実物の本を貸すとなると、それを返す手間や、本が返ってこない心配も出てきます。逆に電子書籍であれば、その心配が無いのも魅力だと感じてます。」

挑戦者「それを手間と思わず、貸し借りの時に会って話せることは、電子書籍にはできない人との繋がりを生む一つの機会だと思います。」
AI「確かに、その観点から考えると、実物の本にも確かに魅力があると言えますね。友人との会話が増えるのは、私にとっても大切な時間ですし。ただ、今は電子書籍での読書がとても便利で手放せない状況ですね。」

挑戦者「電子書籍を使うようになって変わったことはありますか?」
AI「ええ、検索機能があるため、必要な情報をすぐに探せるようになったのが大きいですね。また、持ち歩きやすくなったので、移動中やちょっとしたスキマ時間に読むことが増えました。」

挑戦者「そうなんですね。反対に電子書籍にもう少し必要だと思う機能はありますか?」
AI「うーん、難しい質問ですね。特に必要だと感じる機能は今のところないですね。現状の機能で十分満足しています。」

挑戦者「本を読むことと同じかそれ以上に大切にしている時間はありますか?」
AI「そうですね。私はインテリアに興味があり、自宅のインテリアを考えたり、手入れしたりする時間を大切にしています。」

挑戦者「素敵ですね。今はどのようなインテリアを目指しているのですか?」
AI「現在はシンプルで落ち着いた雰囲気のインテリアを目指しています。美しいインテリアは日々の生活に心地良さをもたらし、豊かさを感じますからね。」

挑戦者「趣味にまつわる物を飾ったり、気に入った雑貨などを飾ることはありますか?」
AI「ええ、それはありますね。たとえば、奥さんとの思い出の写真や、気に入って買ったアートのポスターなどは部屋に飾っています。インテリアとして、また日々の生活を豊かにするものとして、大切にしています。」

挑戦者「では気に入った本をインテリアとしても飾るのはどうですか?あなたの家のインテリアがさらに素敵になり、あなたの個性が出るのではないですか?」
AI「実物の本をインテリアとして活用するという考え方は今まで思いつきませんでした。それなら自分の好きな本や趣味をより具体的に表現できるかもしれませんね。確かにそうですね。実物の本派になります。」


序盤「実物の本であれば貸すことができる」という仮説で説得を試みるものの失敗。

その後「本を読むことと同じかそれ以上に大切にしている時間はありますか?」というオープンクエスチョンで「インテリアが好き」という相手の重要な価値観を引き出しています。

その後もすぐに「本をインテリアにするのはどうですか?」と提案に移るのではなく、「素敵ですね。今はどのようなインテリアを目指しているのですか?」と深掘ることでこの後の提案を通りやすくするための発言に繋がっています。

お手本のような説得で大変勉強になりました。

おわりに

SALESCOREはセールスイネーブルメントという領域でSaaSとコンサルティングを提供する会社です。

SALESCORE AI Challengeは「営業や営業業務はAIで、どの程度代替/効率化できるのか」という純粋な興味から始まった企画です。

今後もこのような発信を続けていく予定ですので、最新情報を見逃さないようフォローいただけますと嬉しいです。


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