Seiji Kato (仏光)

神奈川県大磯で仏像専門の骨董店を営んでいます。 もともと編集者として働いていたのですが…

Seiji Kato (仏光)

神奈川県大磯で仏像専門の骨董店を営んでいます。 もともと編集者として働いていたのですが、 改めて古典文学の魅力を広く知っていただければと考え 投稿をはじめました。 普段は地域の骨董市などにもお邪魔をしています。 「仏光」の名を見かけたらお声をかけてください。

最近の記事

【徒然草 現代語訳】第百五段

神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文北の屋かげに消え残りたる雪のいたうこほりたるに、さしよせたる車のながえも、霜いたくきらめきて、有明の月さやかなれども、くまなくはあらぬに、人はなれなる御堂の廊に、なみなみにはあらずと見ゆる男、女となげしにしりかけて、物がたりするさまこそ、何事にかあらむ、尽きすまじけれ。 かぶし、かたちなどいとよ

    • 【徒然草 現代語訳】第百四段

      神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文荒れたる宿の人めなきに、女の憚ることある頃にて、つれづれと籠り居たるを、或る人とぶらひ給はむとて、夕づく夜のおぼつかなきほどに、しのびて尋ねおはしたるに、犬のことことしくとがむれば、げす女のいでて、いづくよりぞといふに、やがて案内せさせて入り給ひぬ。心細げなる有様、いかで過ぐすらんと、いと心ぐる

      • 【徒然草 現代語訳】第百三段

        神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文大覚寺殿にて、近習の人ども、なぞなぞを作りて解かれける処へ、くすし忠守参りたりけるに、侍従大納言公明卿、我が朝の者とも見えぬ忠守かなと、なぞなぞにせらけにけるを、唐瓶子と解きて笑ひあはれければ、腹だちて退り出でにけり。 翻訳後宇多法皇の仙洞御所大覚寺殿にて、お取り巻きたちがなぞなぞを作っては解

        • 【徒然草 現代語訳】第百二段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文尹大納言光忠入道、追儺の上卿をつとめられけるに、洞院右大臣殿に次第を申し請けられければ、又五郎男を師とするより外の才覚候はじとぞ、宣ひける。かの又五郎は、老いたる衛士の、よく公事になれたる者にてぞありける。近衛殿着陣し給ひける時、軾を忘れて、外記を召されければ、火たきて候ひけるが、先づ軾を召さる

        【徒然草 現代語訳】第百五段

          【徒然草 現代語訳】第百一段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文或人、任大臣の節会の内弁をつとめられけるに、内記の持ちたる宣命をとらずして、堂上せられにけり。きはまりなき失礼なれども、立ち帰りとるべきにもあらず、思ひわづらはれけるに、六位外記康綱、衣かづきの女房をかたらひて、彼の宣命をもたせて、忍びやかに奉らせけり。いみじかりけり。 翻訳ある方が、大臣就任

          【徒然草 現代語訳】第百一段

          【徒然草 現代語訳】第百段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文久我相国は、殿上にて水をめしけるに、主殿司、土器を奉りければ、まがりを参らせよとて、まがりしてぞめしける。 翻訳久我の太政大臣通光公は、清涼殿殿上にてお水を飲まれる際、主殿司の女官が土器を差し上げたところ、まがりを持ってきなさいと云って、木の器でお飲みになった。 註釈○久我相国 こがのしょう

          【徒然草 現代語訳】第百段

          【徒然草 現代語訳】第九十九段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文堀川相国は、美男のたのしき人にて、そのこととなく過差を好み給ひけり。御子基俊卿を大理になして、庁務行はれけるに、庁屋の唐櫃見ぐるしとて、めでたく作り改めらるべきよし仰せられけるに、この唐櫃は、上古より伝はりて、その始めをしらず、数百年をへたり。累代の公物、古弊をもちて規模とす、たやすく改められが

          【徒然草 現代語訳】第九十九段

          【徒然草 現代語訳】第九十八段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文たふときひじりのいひ置きける事を書きつけて、一言芳談とかやなづけたる草紙を見侍りしに、心にあひて覚えしことども。 一、しやせまし、せずやあらましと思ふ事は、おほやうは、せぬはよきなり。 一、後世を思はむ者は、糂汰瓶一つも持つまじきことなり。持経、本尊にいたるまで、よき物を持つ、よしなきことな

          【徒然草 現代語訳】第九十八段

          【徒然草 現代語訳】第九十七段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文その物につきて、その物を費しそこなふ物、数を知らずあり。身に虱あり、家に鼠あり、国に賊あり、小人に財あり、君子に仁義あり、僧に法あり。 翻訳その物に取りつき、その物をとことん貪って根本からダメにしてしまうものは、数え切れないほどある。身には虱、家には鼠、国には賊、庶民には財産、人格者には仁義、

          【徒然草 現代語訳】第九十七段

          【徒然草 現代語訳】第九十六段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文めなもみといふ草あり。くちばみにさされたる人、かの草をもみてつけぬれば、則ち癒ゆとなむ。見知りておくべし。 翻訳メナモミという草がある。蝮に噛まれた人に、この草を揉んで塗りつけると、即効くらしい。知っておいた方がいいね。 註釈○めなもみ メナモミとおぼしき草は実は三種類あり、ここに書かれてい

          【徒然草 現代語訳】第九十六段

          【徒然草 現代語訳】第九十五段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文箱のくりかたに緒をつくる事、いづかたにつけ侍るべきぞと、ある有職の人に尋ね申し侍りしかば、軸につけ、表紙につくる事、両説なれば、いづれも難なし。文の箱は、多くは右につく。手箱には軸につくるも常のことなりと仰せられき。 翻訳箱の両脇にある穴に紐をつける際には、左右どちらにつけるのがよろしいのでし

          【徒然草 現代語訳】第九十五段

          【徒然草 現代語訳】第九十四段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文常盤井相国、出仕し給ひけるに、勅書を持ちたる北面あひ奉りて、馬より下りたりけるを、相国後に、北面なにがしは、勅書を持ちながら下馬し侍りし者なり。かほどの者、いかでか君につかうまつり候ふべきと申されければ、北面をはなたれにけり。 勅書を、馬の上ながら捧げて見せ奉るべし、おるべからずとぞ。 翻訳

          【徒然草 現代語訳】第九十四段

          【徒然草 現代語訳】第九十三段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文牛を売る者あり。買ふ人、明日その値をやりて、牛を取らむといふ。夜の間に、牛死ぬ。買はむとする人に利あり、売らんとする人に損ありと語る人あり。 これを聞きて、かたへなる者のいはく、牛のぬし、誠に損ありといへども、又大きなる利あり。その故は、生あるもの、死のちかき事を知らざること、牛既にしかなり。

          【徒然草 現代語訳】第九十三段

          【徒然草 現代語訳】第九十二段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文或る人、弓射る事をならふに、もろ矢をたばさみて的にむかふ。師のいはく、初心の人、二つの矢を持つことなかれ。後の矢を頼みて、はじめの矢に等閑の心あり。毎度ただ得失なく、この一矢に定むべしと思へといふ。わづかに二つの矢、師の前にて、一つをおろかにせむと思はむや。懈怠の心、みづから知らずといへども、師

          【徒然草 現代語訳】第九十二段

          【徒然草 現代語訳】第九十一段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文赤舌日といふ事、陰陽道には沙汰なきことなり。昔の人これを忌まず。この頃、何者のいひ出でて忌み始めけるにか、この日ある事、末通らずといひて、その日いひたりしこと、したりしこと、かなはず、得たりし物は失ひつ、企てたりしことならずといふ、おろかなり。吉日を撰びてなしたるわざの、末通らぬを数へて見むも、

          【徒然草 現代語訳】第九十一段

          【徒然草 現代語訳】第九十段

          神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。 原文大納言法印のめしつかひし乙鶴丸、やすら殿といふ者を知りて、常に行き通ひしに、或時出でて帰り来たるを、法印、いづくへ行きつるぞと問ひしかば、やすら殿のがりまかりて候といふ。そのやすら殿は、男か法師かとまた問はれて、袖かきあはせて、いかが候ふらむ、頭をば見候はずと答へ申しき。 などか、頭ばかりの見

          【徒然草 現代語訳】第九十段