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同じことを繰り返す

『ブルージャイアント』のエクスプローラーの最終9巻とニューヨーク編のモメンタムの第1巻が発売されていたため、購入。同時発売のようだ。

シリーズ累計1200万部と帯にある。そういえば、『ブルージャイアント』って今結局何冊だろうか、と考えて、無印が10巻、SUPREMEが11巻、EXPLORERが9巻、で、最新作のMOMENTUMなので、最新刊は31巻になるわけだ。1冊は単純に計算すれば40万部に満たないほどだ。無論ウルトラに売れているが、1冊が平均200万クラスの漫画とは、やはり凄まじいものだと思う。

無印が日本編、SUPREMEが欧州編、EXPLORERがアメリカ編、MOMENTUMがニューヨーク編となり、まぁ最終章だろう。

然し、新刊は968円もした。高すぎる。最近の漫画の高騰はしょうがないが……。

さて、『ブルージャイアント』は頗る面白い漫画であることに間違いはないが、然し、それもSUPREMEまでかな、という感じで、EXPLORERに関しては、なんか若干微妙になってきている。

個人的にはやはり無印の10巻までが素晴らしく、様々な事件や出来事を経て、大の才能が煌めきだして世界に挑戦する、この流れが素晴らしかったわけで、続くSUPREMEでは欧州で外国のプレイヤーや観客を魅了して成り上がっていく様を描いた。

そこからEXPLORER、確かに今度こそはJAZZの本場のアメリカでの成り上がりなわけだが、最早漫画としては繰り返しになっている。繰り返し、というのはマンネリと安定であり、刺激的な内容の割には安心感がある。最早、大のサックスは圧倒的で、黄門様の印籠のようなものである。無論、大は死ぬほど練習をしていて、それは多々描かれるわけだし、ストイックで、嫌味のないキャラだから好感が持てる。

然し、SUPREME時代のメンバーと比べると、EXPLORERメンバーはどう考えてもキャラが上手く立っていない気がする。ジョーのように、大すらも驚く天才キャラはいいなと思ったが、薄命の予感しかない……。

私は昔、ニューヨークに住んでいたことがある。大分昔だが、まぁ、クイーンズでルームシェアをしていて、キッチンとバスは共同で、月600ドルである。当時の物価では日本円で70,000円くらいだ。
大は部屋を借りるのに難儀していたが、あそこまで大変ではないような気がするが(2ヶ月2800ドルであのボロさはきっこうきつい……)、まぁマンハッタンとかだと価格が跳ね上がる。

私のルームメイトがバンドをしていて、アポロシアターのアマチュアナイトで演奏するので観に来てくれ、と言われて(彼はJAZZではないが)観に行ったことがあるのが私の唯一のニューヨークでの音楽体験であるのと、私は学生ビザだったので、アーティストビザとはまた全然対応が異なるのかもしれない。

最近は大のキャラクターも少し攻撃的になっていて、それが揉まれたことによる変化なのかわからないが、松本の朴訥な青年がだんだんと大きくなっていく、その過程はそろそろ食傷気味で、ぶっちゃけ既にパフォーマンスは圧倒的なレベルなので、もっと上のステージに上がってもおかしくないように思える。

然し、同じことを繰り返す、プラクティス、の繰り返しこそが今作の肝でもあるわけで、何よりも、積み重ねこそが汎ゆる藝術家やアスリート、創作者に必要であり重要なことである。続けていくこと、それを出来るかどうかが分かれ道であり、大抵は辞めてしまう。画家の世界でもそうだと最近本で読んだ。100人以上の生徒に、絵を描き続けることが出来る人が成功した人だと伝えて、そうできる人は大抵5人にも満たないのだという。

今回、ボストンにて雪祈が再登場するわけだが、彼は右手はもう動かないし、けれども左手だけで音楽と向き合い続けてきた。それを、アントニオが偉大なことだと言う。大、の物語であるのだから、私は無印の終わり方で十分で、雪祈はもう出てこなくてもそれでいいとも思えたが、雪祈に花を持たせているEXPLORERの9巻は、ぐっと来る展開になっている(私は雪祈が1番好きなキャラクターなので)。

けれども、物語において同じことを繰り返すのは個人的にはどうなのかな、とも思う。パターンとしては、大が新しい場所へ行く→うちの店では演らせられないねorうちの店ではJAZZは受けないね→大たちが演奏する→舐めていた観客や店主が圧倒される…この流れが毎度の基本パターンであるが、まぁ、これは『はじめの一歩』における、リバーブローからのガゼルパンチ、そしてデンプシーロールという、まぁ、様式美というか、読者を感動させる方程式なのだろう。皆、大に感情移入して、悪い扱いに鬱屈を溜めて、最後に演奏でひれ伏させる、そういう、ある種の願望、なろう系とも言えるのだが、とにかくおそらくは最終章で、10巻前後で終わると思うので、完結まであと3年〜4年くらいだろうか。

然し、最終巻くらいは、もう1,500円くらいになっているかもしれない。怖い怖い。

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