雪雪

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my love poetry reading.   フレデリック・ロルフの『THE DESIRE AND PURSUIT OF THE WHOLE』の翻訳を趣味で。 最も愛するのは稲垣足穂、マーロン・ブランド、ブレードランナー2049。

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  • THE DESIRE AND PURSUIT OF〜翻訳版

    フレデリック・ロルフ、コルヴォー男爵の遺作『THE DESIRE AND PURSUIT OF THE WHOLE』の翻訳連載です。 意訳超訳お許しください。

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    私の理想とする文学への憧憬が込められた作品を集めています。

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The Ding Dong Song

夕暮れに青く染まったモスクから巡礼の声が聞こえ漏れてくる。瓦斯灯に灯りが点って、街々から人の気配が薄れていく。 僕は坂道を駆け上がって、滑り込みセーフで昆虫館の扉を叩く。館長は椋木の椅子に腰掛けていて、眠たそうにその黒い口髭を擦っていた。僕の姿を見ると立ち上がり、手を振ってくれた。 お父さんが僕をここに連れてきてくれたのだった。それから、もう毎週、毎週、通っている。本当には毎日来てもいいくらいだった。昆虫館とは言うけれども、小さな標本を扱った店だ。 日本だけではなく、台湾

    • 瘋蝶聖

      蝶狂いの息子の遊楽が高じるのにつれて屋敷の庭に温室まで与えてやったほどの息子狂いである。 以前よりも身体の嵩が増した先生と向かい合うと、彼は遠くを見つめながら、あれだけ飛んでいても翅音が聞こえないんだ、とそう呟いた。先生の言葉の方に目を向けると、成る程、温室のドーム状のガラスの屋根がこちらかも見えて、ひらひらと数頭の蝶が舞っている。 「何頭いるんですか?」 「数百はいるだろう。」 事も無げにそう言うが、ざっと試算してみただけで、それが言語学の一大学教授に賄える額ではないことが

      • 書店パトロール43 俺はいつだって回り道を選ぶぜ。

        結局、いくら書店に行こうとも、毎回同じ場所に行っているわけだ。 哀しいかな、趣味嗜好というものは、そうそう変わるものではない。なので、私はいつものように、映画や美術本のコーナーを見る。大抵はラインナップは代わり映えしない。 その中で、一つ気になったのは淡交社から発売されているこの本。 落語と文学。そして、淡交社。淡交社は京都の出版社で、お茶関係の本を出している。私の家の近くにあるのだ。この近くの寺町通りこそ、茶道のお店などが集まる茶道ストリートであり、表千家会館などがある。

        • 九龍大厦

          唐突だが、私は九龍城砦、九龍城が好きである。 私の物心がつく頃には、九龍城は取り壊されていた。九龍城は1994年に取り壊されたのだという。 これは、『ゴジラVSスペースゴジラ』が公開された年で、私はこれを、京都宝塚劇場で観ていた。スペースゴジラは格好良かった。 やはり平成ゴジラのVSシリーズは最高だ。スペースゴジラも好きだが、 『デストロイア』も最高に好きだ。作品としては、実は『VSモスラ』が好きだ。 小林聡美と別所哲也が元夫婦の役で出ていて、なんというか、男女の一度終わっ

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        The Ding Dong Song

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          孤独と愛と『異人たち』

          『異人たち』を鑑賞。TOHOシネマズ二条にて。 お客さんは私を含めて4名だった。然し、映画館には人がそれなりにいた。恐らく、コナンやブルーロックを観に来たのであろう。私は空いている映画館が好きなので、貸し切りでも構わない。けれども、映画館側は困るだろう。 さて『異人たち』。 原作は山田太一の小説『異人たちとの夏』で、映画化もされているが、今回はイギリス映画である。 私は小説も、それを元にした映画版や舞台も鑑賞していないので全くの初見だった。 内容はざっくり識っていたが、

          孤独と愛と『異人たち』

          積読抄

          本が好きな人間なら誰しもが陥るのが積読という現象である。 無論、私もその例に漏れることはなく、大量に、本当に大量に積読がある。買って、紙とインクの匂いを嗅いで、それから本棚の肥やし。 まぁ、然し、けれども、なんというか、本、というものは全てを読む必要性や義務などないから、それでもいいのだ。 寧ろ、御弁当箱の米粒一つまで余す所なく食す、そのようなことは本では必要もない。全ての文字を拾うなど土台不可能である(そうか?)。 そもそも、本、というのは、作者の、執筆者の、書き手のそ

          積読抄

          春に目ざめる男性の秘密

          微温い風に起こされて窓外を見ると、天が紫に染まっている。 腕時計を見ると18時を回って、そろそろ日も暮れるだろう。 合唱部の練習で遅くなるから、帰り道に寄って迎えに行ってあげてー。 そう妻に頼まれて、学校の最寄りのバス停で降りる予定だった。 会社帰りの紳士や淑女、学校帰りの学生や観光客でごった返していた車内もいつの間にか乗客は減り、ポツポツと座席が埋まるばかりだった。 開いた窓から涼しい風が流れ込んできて、私はじっとりとしたワイシャツの襟元にその初夏の息吹を入れてやった。 ど

          春に目ざめる男性の秘密

          書店パトロール42 

          『本の雑誌』の増刊号が出ていた。本屋大賞の特集である。『成瀬は天下を取りにいく』を祝!本屋大賞!という感じお祝いしているが、めちゃくちゃ早いな。まぁ、こういうのは、そもそも発表の前に通達がされているのだろうか。 4/10に発表されて、そこから順位などの箇所や一部以外を残して制作していたとしても、印刷から納品まで最短でも2日〜3日はかかると思われるし、突貫で作ってもかなり大変そうだ。 4/10〜4/13くらいで土日も動いて作って、4/14に入稿、印刷、4/15とか16に発送

          書店パトロール42 

          書店パトロール41

          書店を彷徨く。書店を彷徨いていると、書店員さんの目が気になる。 ああ、また買いもしないのに来てるよあのバカ、一度その汚れた面にシュリンク巻いてやろうかって、思われていそうだ。いや、偶には買っているダロ!ユルシテオクレヨ!とそう、心中で謝りながら、やはり彷徨く。 まずは目に入った本、『名画の中の美しいカラス』。 私はカラスが好きだ。烏。鴉。カラス。CROW。この本は、烏が描かれた絵画を紹介している本で、まぁ、勉強になる。 私は識らないものを識るのが好きだ。なので、本屋という

          書店パトロール41

          一生売れない心の準備はできてるか

          と、いうのは、4月に公開される映画のタイトルである。 売れる、売れない。 これは、アーティスト、乃至はエンターテイナーを選んだものにつきまとう問題である。 売れる、売れない。 売れたほうが正義。という風潮がある。まぁ、売れる=大多数に受け入れられているわけで、その方程式は間違いではない。然し、売れていない=駄目、というのはまた違う。そんな単純なものではないのだ。 まぁ、私はこの予告編を観ていて元気をもらった。これは本編を観なければならないな、と思った刹那、調べてみる

          一生売れない心の準備はできてるか

          書店パトロール40 『フールナイト』はやはり最高だ。

          書店は楽しい。色々と新しい本が出ているからだ。 最近、ラジオで紹介されていた、WEBで人気のマンガだという、『恋とか夢とかてんてんてん』なる作品が気になって、1巻が発売されたというので、探すが見当たらない。全く、見当たらない。なので、諦める。 そして、待望の『フールナイト』の8巻を購入。私は、常々『フールナイト』という作品に賛辞を送ってきたが、やはり最高のマンガであることは否めない。今巻はどちらかというと大きな章の区切りで、箸休め的な巻だったが、然し、この作品の書く設定と、

          書店パトロール40 『フールナイト』はやはり最高だ。

          プリンス

          友人の部屋の壁に掛けられた、二人の少年が佇む絵を見つめながら、私は出されたブランデーに口をつけた。 きれいな絵ですね。 ああ、村山槐多です。『二少年図』といいます。 村山槐多ですか。これは真品? まさか。複製ですよ。どうも、この絵は江戸川乱歩のお気に入りだったようですね、彼はこの絵を自室の壁に、終生掛けていました。 どうりで。不思議な心地のする絵ですね。 どちらにもモデルがいるんですよ。乱歩はそこから更にこれをモデルに小説を書いた……。 村山槐多、といえば、美し

          プリンス

          インフィニティ・プールという地獄

          ブランドン・クローネンバーグの監督第3作『インフィニティ・プール』を鑑賞。 久方ぶりのMOVIX京都にて。多分、ガチで5年以上は来ていないような……。 最近、IMAXで映画を観ることに慣れてきており、通常のシネマがこれほど小さく、音も貧弱ということに、ある種の衝撃を覚えてしまった。 まぁ、MOVIXも出来てから早25年ほど立ち、最早老舗の感もある。 そして、IMAXづいているだけではなく、騎乗位づいてもいるのである。 私は今年、4本映画館で鑑賞したのだが、そのうち3本が騎

          インフィニティ・プールという地獄

          今年で30周年のめでたいめでたい志摩スペイン村に行ってきた

          先日、パルケ・エスパーニャ、志摩スペイン村に初めて行ってきた。 京都から車で3時間弱の行程だが、到着するまでに私は疲れ果てた。 その日は快晴であり、春なのに冬の寒さだった。 今年はUSJにも行き、まぁ、二回目の遊園地だ。然し、こう、ディズニーランドやUSJという東西二大巨頭などと比べると、とても牧歌的な遊園地である。いや、あの2つが異常なだけで、元来、遊園地というものはこういうものではなかったか。 志摩スペイン村は噂通りガラガラであった。いや、ガラガラ、というよりは、スカ

          今年で30周年のめでたいめでたい志摩スペイン村に行ってきた

          マイ・ピーター・パン

          俺のピーター・パンは 早く大人になりたいのだと宣った あの美しいエレファント  黄金の 月色の その牙はまだ幼子のものなのに 幼子のものだからこそ いらない言葉で 象牙商人がやってくる 俺の牙も狩ったあの象牙商人が ならば その前に 扼殺してやろうか 俺の美しいエレファント

          マイ・ピーター・パン

          オッペンハイマーを観た

          クリストファー・ノーラン監督の監督11作目の『オッペンハイマー』を鑑賞した。TOHOシネマズ二条のIMAXにて。 最近IMAXづいている。5月公開の『マッドマックス/フュリオサ』も当然IMAXだ。然し、最新版予告編を観ていると、なんか若干不安が出てきた。 で、『オッペンハイマー』。3時間。180分。長尺だ。 原爆の父、ロバート・オッペンハイマーの原爆開発物語と同時に、1954年の「オッペンハイマー事件」においてスパイ容疑をかけられて、そこで彼が聴聞会で査問される話を交錯さ

          オッペンハイマーを観た