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Don Carlos / Rutucate / ♫(2Note)

レストア前

イタリアンパイプには、Castello、Caminetto、Radice、Ascortiに代表される「ロンバード派」と言われる流れと対になって、「ペーザロ派」という流れがあります。
「ペーザロ派」は、Mastro de Paja、Ser Jacopoに代表される、個性的なシェイプだったり、デコラティブなシルバーのアクセントなどを多用するやつ。
Don Carlosも「ペーザロ派」とされています。

「ロンバード派」が英国の古典的な形状をベースとしたやや伝統的なスタイルなのに対して、「ペーザロ派」は、新古典派と呼ばれています。
ビリヤード、ダブリン、ブルドッグなどの古典的な英国のシェイプを取り入れながらも、新たに再構築したスタイル。
1960年代のデンマークパイプの隆盛と、相対的に低下したイタリアンパイプへの反応から生まれた、大袈裟に言えばルネッサンスみたいな流れだったそうです。
英国と違って、グレインにもこだわる感じ。

「ロンバード派」に、SavinelliやBrebbiaなどの大規模工場が含まれたりすることもあって、前者が工場的、後者は職人的、という風に対比されたりするみたい。
Caminetto、Radiceとか、小規模工房的なとこも「ロンバード派」に含まれちゃうので、厳密には分類できないみたいですが。
Radiceとか、「ペーザロ派」の影響受けたシェイプも作ってるし。

で、Don Carlos。
ドン・カルロスさんではないです。
ブルート・ソルディーニさんが奥さんと2人で1990年に立ち上げたブランドです。
太陽マークのMastro de Pajaでキャリアをスタートして、そこで一緒に働いてたジャンカルロ・グイディと共にSer Jacopoを設立しました。
が、自身の扱いに満足できなかったらしく、5年で脱退。
その後、2年間いろんな工房を訪ねてまわり、その中の一つ、il Ceppoで大いに学んだのち、Don Carlosを立ち上げました。

ドン・カルロスって名前はイタリアが誇るヴェルディのオペラからとったらしい。
ほとんど適当に。
割と黒歴史っぽい。

そうやって始まったDon Carlosですが、イタリアのディーラーとうまくいかなかったらしく、イタリアなんかで売るかってことで、アメリカに販路を移して成功したらしい。
が、2008年にバイクで事故って休業。
数年後、体が動くようになってからは、入院中に閃いた独創的なパイプを時間かけて少数製作してるらしい。

もう、なんか色々アヴァンギャルドです。

個人的に、Mastro de PajaとかSer Jacopoの、シルバーのアクセントを使ったゴテゴテデコラティブな感じはあんまり好みじゃないですが、「ペーザロ派」の中でもDon Carlosと L'anatraは好き。
それぞれ音符とアヒルでキャッチーだし。
両者とも、ゴテゴテした変なシェイプはもちろんあるけど、ゴテゴテしてなくてちょっと個性的くらいのやつも多い。
あと、il Ceppoも一本欲しい。

以前安く手に入れたDon Carlosのスムースがすごく出来が良くて、ラスティックも一本欲しかった。
どんぐり型っぽいボウルで、プリンス型みたいに細めのシャンクで長めのステムがほんの少しだけベントしてる。
いいね。
デザインのためのデザインまではいかなくて、実用的でちょっとだけ個性的。
ちょっと優雅。
クレイパイプも意識してんのかな?
気持ちボウルが外側に向いてる。

写真見た時は小ぶりかなあと思ってたけど、意外にボウル内広くて容量多め。

ラスティックは、カステロ系みたいなボコボコラスティックだけど、カステロ系よりちょっと鋭角なイメージ。
硬い木を彫ってる感。
色味は多分、元々はダンヒルのタンシェルみたいな明るいオレンジのタンカラー。
経年で茶色くなってるんだと思う。
写真じゃ分かりにくいけど、結構白い汚れが彫りの中に詰まってて、全体的に薄汚れた印象。

Don Carlosは、音符の数でグレーティングを行っています。
♪の数が多いほどハイグレード。
三連符(変換に出てこなかった)が最高。
こちらのパイプは♫なので真ん中。
ラスティックだからグレーディングも何もって感じがするけど。

ステムには水平に一本線。
カステロの横バージョン。
音符的な何かの記号のイメージにも見える。
これ、2000年以降はマークが変わって、ト音記号になりました。
個人的にはこっちの方がオシャレ。

テノンの根っこがシャンク側の穴に合わせて、少し山型になってるのが好感持てる。
フィット感。
でも、ややステムルーズ。

細かい傷はあるけど大きなティースマークは無し。
アクリルは手入れが楽で好き。


ボウルのお掃除

ボウルトップは汚れてるけど、ボウル内はリーミングされてて意外にも綺麗。
あんまりカーボンついてない。

なので、軽くリーミングしたらアルコールメソッド。
コットン詰めてエタノールヒタヒタに。
数時間おきに注ぎ足して一晩放置。

一晩経つと、汚れが浮いてくるので、コットン取り出してリーミング。
シャンクはストローブラシとモールで色がつかなくなるまでゴシゴシ。

内部が綺麗になったら外側のお掃除。
洗いがいのある汚れ感。
キッチンペーパーとモールを詰めて、マーフィーのオイルソープを原液のまま歯ブラシでゴシゴシ。
ぬるま湯流水で洗い流し。

乾いたら、椿油で潤いプラス。
歯ブラシで溝の中までしっかり。
ラスティックが鋭角で、細かいけど深い溝が多い。

椿油を拭き取ったら、ルネッサンスワックスとカルナバワックスがけ。
ルネッサンスワックスを歯ブラシで溝にもしっかり。
綺麗に拭き取って、カルナバをバフ掛け。
バフ掛けでカスまみれになったボウルを、カルナバ布で馴染ませて、歯ブラシと豚毛の靴ブラシでゴシゴシ。
細かいカスを溶かしたりかき出したり。

が、細かいけど深い溝にカスが残って取れない。
レストア前の白っぽい汚れ、ワックスカスかも。
爪楊枝とかでほじくってたけど、こないだ買ったヒートガンを思い出す。

こりゃいいわ。
みるみるワックスカスが溶けてく。
ピカピカに。
気持ちい。
ラスティックのワックス掛け、ヒートガン追加だ。
今後。

仕上げに、エタノールで薄めた蜂蜜をボウル内に塗ってボウル保護。
底の方に溜まった余分な蜂蜜は綿棒とかで拭き取り、一晩経ってある程度乾いたらシガリロ一本吸って灰を擦り付け。
これでひとまずおしまい。


ステムのお掃除

いきなりエタノールにドボン。
アクリル製だから長時間漬けると溶けちゃうかもなので、ちょっとだけ。
漬けるってより、潜らせてストローブラシで内部を洗う感じ。
モールに色がつかなくなるまで。

吸い口付近は400から、それ以外は800くらいからヤスリ掛け。
軽くでいい。
アクリルは楽。

あとは白棒バフとコンパウンドかけておしまい。
最後にボウルと合体して、つやふきんで磨いて完成です。

シャンクにヒートガン当てたからか、ステムルーズも解消してる。
アルコールレトルトメソッドっていう、熱したエタノールでボウルを洗う方法だったり、ヤカンの蒸気をシャンク側煙道に当てる方法だったりで、ステムルーズを解消することもあるんだけど、それと同じような効果が得られてるっぽい。
木の収縮率がどうのってやつ。
ヒートガン楽でいいな。


完成

ツヤツヤピカピカです。
薄汚れてたカスもなくなりました。
ボコボコラスティックは使いやすくて良いね。
熱放射的に。

ステムもピカピカ。

以前手に入れたスムースと一緒に。
ベントダブリン、というか、キャラバッシュみたいなシェイプ。
少しデンマークぽい。
マグナム。
ボウルが分厚くて、グレインも綺麗。
♪(1Note)。
一番グレード低いけど、同時期に激安で買ってレストアしたTALAMONAの4つ星(ハイグレード)よりグレインが綺麗。
作りも精巧で、フルベントな角度なのにモールが底までスッと入る。
素晴らしい。

やっぱりイタリアものは陽気な感じで好き。
イングリッシュは曇り空、イタリアものは晴天。
屋内のパブと屋外のカフェって感じ。
(偏見)

以上でレストア終了です。
おつかれさまでした。



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