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純愛ASMRを聴いていたかと思っていたら脳が破壊された話

嬉しいときも、悲しいときも、寂しいときも。~にゃん太と花梨の半年【CV.長江里加】


俺くんは捨て猫で、雨の日にCV.長江里加に拾われる話です。
どう考えてもこれは純愛。眠れぬ夜に、私は安眠を求めて聴きました。

初めて人のぬくもりを知る俺くんことにゃん太。彼女とお風呂に入ってシャンプーをしてもらうにゃん太。お風呂あがりに耳掃除をしてもらうにゃん太………………

これを聴き始めて一時間弱。私はすっかりCV.長江里加と結婚がしたくなりました。彼女は上京したての大学一年生。右も左もわからない彼女の孤独を埋めるのはにゃん太くん。
決意した。俺が、CV.長江里加を支える――――――

突然の寝取られ。破壊される脳。

その瞬間は突然だった。

トラック4:『にゃん太、お留守番しててね!』

その日、CV.長江里加はいつもよりも早く帰宅した。バイトがお休みだったからだ。普段よりもいっぱい構ってもらえるのだと歓喜したところに、一本の電話が鳴り響いた。
電話の主はCV.長江里加の女友達。なんだ、女友達か……とホッとしていると合わせたい男がいるという。

は????????
男?????????????

CV.長江里加はまんざらでもなさそうだ。
その男の名前は八代(やしろ)とか言うらしい。八代は学食でよくCV.長江里加に話しかけてくるらしく、CV.長江里加本人も八代からの好意には気づいていたらしい。そして、CV.長江里加はその好意が嬉しいらしい。

女友達から呼び出されたCV.長江里加は男のもとへと行ってしまう。
「にゃん太、お留守番しててね!」の言葉を残して。

おかしくないか?
俺は今日、いつもよりも早く帰ってきたCV.長江里加と一緒に遊べるんじゃないのか?せっかく俺といっしょに遊べるのに、俺よりもその男を取るのか?俺よりその男を優先するのか?
そんなにそいつと会うことが大事なのかよ。これまでCV.長江里加の孤独を埋めてきたのは誰だと思っているんだ。
信じられない。これまで全く男の陰なんてなかったじゃないか。ずっと俺と一緒にいちゃいちゃしてるんじゃなかったのか。

何よりも信じられないのは、お留守番中の演出。彼女が出かけてしまった後、聞こえてくるのは時計の音のみ。
チクッ……チクッ……チクッ……チクッ……チクッ……チクッ……チクッ……
秒針の音だけが鳴り響く部屋からは、にゃん太の孤独が、俺の孤独が、如実に伝わってくる。破壊された脳内で、秒針の音はよく響いた。

俺は――――――――

それから先は地獄だった。

彼女は八代とかいう男と付き合い始めたらしい。そこから先はただひたすらCV.長江里加の口から、八代との惚気話や痴話喧嘩で悩んでいる話などを聞かされる。

八代は真面目で優しい人間だそうだ。CV.長江里加が八代と喧嘩して帰宅したのちに、八代から謝罪の電話がかかってきて「本当は私が悪いのに、なんでそんなに優しくしてくれるの……😢」と泣き出すパートがある。俺はただその様子を見ているだけ。にゃん太がきっかけで八代と結ばれたわけでもなければ、八代と仲直りできたわけでもない。俺とは全く関係のない別の世界がある。俺の全く介入しえない別の世界がある。にゃん太の全く知らないうちに彼女は男と関係を築いていた。にゃん太と全く関係のない世界で彼女は生きていた。
俺は傍観者でしかなかった。にゃん太にとってCV.長江里加は人生の全てだったが、CV.長江里加にとってはにゃん太は人生の一部でしかなかった。

結局俺は、飼い猫でしかないのかよ。
俺は何もしなかった。ただそこにいるだけだった。嬉しいときも、悲しいときも、寂しいときも、確かに俺はずっと彼女の傍にいた。だが、彼女を喜ばせるのは、悲しませるのは、寂しくさせるのは誰だ?八代だ。俺じゃなかった。
彼女と二人きりの空間、そこに俺はいるはずだった。しかし、突然八代とかいう男が登場し、二人きりの空間は壊された。作中で直接描かれはしなかったが、普通に八代は彼女の部屋に上がり込んでいる。俺はただそこにいるだけの存在。二人きりであるとかないとかは、CV.長江里加にはどうでもいいことだった。

俺はゆっくりと、ブラウザを閉じた。







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