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ブナ 1歳

こんばんは。森からの遣いのボジュです。

 私は、ブナの森が大好きです。実は、私も普段は人の世界で仕事をしているのですが、いつもいつも森のことを考えています。色々な森があり、樹木がありますが、私はブナが大好きです。ブナはとても大きくなれる樹木で、500歳というブナもあります。そんな大樹も実は1歳から始まります。

 1歳から始まるなんて、おかしいほど当たり前なんですが。全てがそうなんです。タネも入れると0歳からなのかな?ブナは雄花と雌花があり受粉して結実して、そして母樹から離れ(離され)地面に落ちます。雪の下で冬を越し、春になると発芽します。そんなのも当たり前って思いますか?そうなんです。当たり前なんですが、実はこれが凄いことなんです。

 発芽する前の秋に落ちた種子が全て芽を出すことはできません。なぜなら、ブナの種子は森の生き物にとってはとても大切な栄養分だからです。ブナの種子を食べたことはありますか?円錐形の小さな種子は油分が多くて、カシューナッツのような味がします。こんな美味しくて栄養がある種子を他の動物たちが見逃すはずがありません。

クマもリスもネズミも鳥たちもブナが大好きです。そして、虫も!虫も?地面に落ちたブナの種子を見ると小さな穴が空いているものがあります。これは既に虫が中身を食べて出ていった穴。だから穴の開いたブナの種子は既に中身は空っぽ!


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 ではブナにとって大切な種子を食べてしまう、リスやネズミたちはありがたくない生き物なんでしょうか?いえいえ実は大きな森が続いていくには小さな生き物たちが欠かせません。リスやネズミはブナにとって、とても大切な種子の運び手なんです。「えっ?おかしいじゃないですか。食べてしまうのに運び手なんて!」と思われるかも知れませんね。そうなんですよ。食べ手でもあり、運び手でもあるんです。

 リスやネズミはブナの種子を冬に向けて貯めておきます。なんせブナの森は冬には何メートルにもなる雪が降るのですから。リスやネズミはせっせとブナの種子を運んでは貯蔵します。それを時々忘れてしまうのです。そして、忘れてもらえた種子は春のなると無事発芽ができ1歳としてデビューを果たせます。

「あれ?これもおかしいじゃないの?ブナは沢山種子をつけたのに食べられてしまっていいの?」って思いますよね。そうなんですよ。せっかく実らせた種子が食べられてしまうのなんて、なんて勿体無い。

 実は、ブナの母樹は食べられてしまうことを計算して種子をつけていると言われています。食べてもらえるような種子でなければ、遠くへ運んでもらえないし、貯蔵してもらえない。実は、ブナの母樹は自分からなるべく遠くに種子を運んで貯蔵して貰いたいのです。発芽の為の栄養分が実は運び屋になってくれる生き物たちにとっても大切は栄養分にもなっている。だから貯蔵してくれるという仕組みを持っているのです。

春に芽を出したブナの1歳は、他の生き物の生命にはならずに冬を越し、ブナとして発芽できた奇跡の1歳なのです。

では何故母樹は種子を遠くへ運んで欲しいのか?は次のお話にしますね。


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