ブラインド

 定食屋に入ると、奥のテーブル席に案内された。空いているカウンター席を横目で見ながら奥へと進む。
 この店では、カウンター席以外の窓はブラインドが常に下ろされていて、壁のようになっている。窓に面したカウンター席の窓だけが、外の風景をそのまま映していた。

 テーブル席に座った途端、窮屈さを感じた。空いていたのだし、こちらは一人客なのだから、一声掛けてでもカウンター席にしてもらった方がお互いにとってよかったのではないか。
 私はカウンター席から見える風景を思い浮かべた。広々とした駅前広場の傍を、人を散らしながら都電が走ってきた瞬間、背中合わせのブラインドから線路の軋む音が聞こえた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?