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MWC2024で見たスマートフォンの新たな可能性

スマートフォンは必ずしも「『iOS』や『Android』で動く、タッチスクリーン搭載の板」でなければならないわけではない。2024年のMobile World Congress(MWC)で見たデバイスは、そのことを証明してくれた。チョコレートのスマートフォンから、超大容量バッテリー搭載のスマートフォンまで、スマートフォンの新たな可能性を示すデバイスが次々と登場したのだ。この記事では、MWC2024でお披露目された、特に注目を集めたスマートフォンについて紹介する。

食べられるスマートフォン「razr 40 Ultra」

報道関係者向けのイベントでは、デモを開催するテクノロジー企業が記者のためにスナックを用意していることがある。今回、Motorolaが用意したのはチョコレートでできたスマートフォンだ。

この食べられる「razr 40 Ultra」(米国では「razr+」)は、端末を途中まで開いた形をしており、ディスプレイは2023年末に追加された新色「ピーチファズ」でコーティングされている。

その他の仕様は、ただのチョコレートだ。つまり、「Snapdragon」シリーズのチップセットやリチウムイオンバッテリーの代わりに、ココアバターや砂糖が使用されている。文字を打とうとすれば、溶け出してしまうかもしれない。

Motorolaは、このデバイスを本気で製品化するつもりはないと明言している。しかし、チョコレートのスマートフォンは、MWCの会場で話題を呼び、記者たちの舌と心をとらえた。

超大容量バッテリー搭載スマートフォン「Energizer Hard Case P28K」

AvenirがMWCで披露したEnergizerブランドのスマートフォンは2万8000mAhのバッテリーを搭載する。一般的に、スマートフォンのバッテリーは5000mAhで大容量とされることを考えると、バッテリー切れの心配とは永遠におさらばできそうだ。

この「Energizer Hard Case P28K」は、6.78インチのディスプレイ、6000万画素のメインカメラを搭載し、IP69の防水・防塵性能と3年間の保証を備える。

MWCで見かける多くのコンセプトモデルと異なり、Avenirはこれを実際に販売すると報じられている。発売は2024年10月、価格は250ユーロ(約4万1000円)になる見込みだ。

しかし、このスマートフォンには欠点もある。その一つは、そのサイズと重さだ。このデバイスは、厚さが約3センチ、重さが約1キロもある。ポケットに入れるのは困難で、手に持っても疲れそうだ。また、充電にも時間がかかるだろう。

ウェアラブルスマートフォン「Cling Band」と「Motorola Flex」

Motorolaとサムスンはどちらも、腕時計のように手首に巻き付けられるスマートフォンを披露した。サムスンの「Cling Band」と、同様のコンセプトで開発されたMotorolaの端末は、どちらも一般的な縦長のスマートフォンとしても機能するが、見所は別にある。

この2つの端末は、ディスプレイを後方に曲げられるのだ。しかも、手首に巻きつけられるほどに。両社とも製品化の計画は発表していないが、いずれはスマートフォンにもなるスマートウォッチが登場するかもしれない。

ウェアラブルスマートフォンのメリットは、手に持たなくても操作できることや、通知を見逃さないことなどが挙げられる。しかし、ディスプレイのサイズや解像度、バッテリーの持ちなど、まだ解決すべき課題も多い。

視線追跡スマートフォン「Honor Magic 6 Pro」

栄耀(Honor)のHonor Magic 6 Proが提案するのは、スマートフォンの新たな操作方法だ。人工知能(AI)を使って視線の動きを追跡するため、ユーザーはディスプレイを触らずにアプリを起動し、操作できる。

ユーザーの視線を感知できるスマートフォンはすでに存在するものの、用途は端末のロック解除やメディアの再生、一時停止などに限られている。Honor Magic 6 Proの視線トラッキング機能はまだ試せていないが、デモ動画を見て思い出したのは、かつて「Xbox」向けに製造されていた「Kinect」のカメラだ。ディスプレイの特定の部分に視線を合わせると、数秒後に該当箇所の選択肢が選択される。

視線トラッキングがスマートフォンの実用的な操作方法となるかどうかはまだ分からない。しかし長年、モバイル機器の操作にはスクロールやスワイプくらいしかなかったことを考えると、新しい操作方法は新鮮に映る。

バービースマートフォン「HMD Barbie Phone」

HMDはNokiaブランドのシンプルなスマートフォンを刷新し、MWCで注目を集めた企業だが、2024年は「バービー」に目を付けたようだ。HMDはバービーブランドのシンプルな携帯電話を2024年に発売すると発表した。

バービーをモチーフにした、しかも最小限の機能だけを搭載した端末とは、どのようなものになるのだろうか。2000年代初頭の バービー人形が持っていたピンク色の折りたたみ携帯電話を思い出す人も多いだろう。しかし、HMDの発表によると、この「HMD Barbie Phone」は、そのようなレトロなデザインではなく、現代的なスタイルを採用しているという。

この携帯電話は、2.8インチのカラーディスプレイ、200万画素のカメラ、Bluetooth、FMラジオ、microSDカードスロットなどの基本的な機能を備える。また、バービーのロゴや壁紙、着信音、ゲームなどの専用コンテンツもプリインストールされている。バッテリーは、最大25日間の待ち受け時間と最大18時間の通話時間を提供するという。

HMDは、この携帯電話を「デジタルデトックスのためのアクセサリー」と位置づけており、スマートフォンの使い過ぎに悩む若い世代に向けて販売するとしている。価格は99ユーロ(約1万6000円)で、2024年7月に欧州で発売される予定だ。

HMDの発表に対して、ネット上ではさまざまな反応が見られた。一部の人は、バービーのブランド力やノスタルジーを評価し、購入を検討するとコメントした。一方で、他の人は、この携帯電話が時代遅れであり、スマートフォンには敵わないと批判した。また、HMDがNokiaブランドのスマートフォンの開発を放棄し、バービーの携帯電話に注力するのは間違っているという意見もあった。

HMDは、バービーの携帯電話だけでなく、モジュール式のスマートフォン「HMD Fusion」や、視線追跡機能を搭載したスマートフォン「HMD Eye」などの新製品もMWCで発表した。HMDは、これらの製品で、スマートフォン市場での存在感を高めることができるのだろうか。

1: NokiaブランドのHMD、“バービー”の携帯電話(スマホではない)を今夏発売へ - ITmedia Mobile
2: HMD teases a Barbie Flip Phone launch later this year | Android Central
3: Barbie’s pink flip phone is REAL, and it’s out this summer
4: MWC2024で見た奇抜なスマホたち--視線追跡スマホ、ウェアラブルスマホなど - CNET Japan

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