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サンタクロース


「恋人はサンタクロース」と松任谷由実が軽やかに歌う。昔、スーパーがサンタクロースを手配することがあった。「サティ」と言うスーパーがあった。おもちゃを買うと、サンタクロースの格好をした店員が、家まで届けてくれるシステムがあった。サンタは、約束通りトナカイで無く、軽トラックでやって来た。

息子の源太と創太は、素直に大喜びだ。サンタが家にやって来た日は、忘れられないほど喜んだ。子供という生き物が、馬鹿なのか利口なのか分からなくなる。確かに、人は信ずることで救われる。そんな単純なことでも喜んでもらえることで、満足する敦であった。

サティは、27年間経営していたが、2011年にイオンに吸収合併された。現在は、イオンかセブン&愛ホールディングスか二つしかないほど、スーパーマーケットは、寡占化している。「ネット通販の勢力拡大の中で、リアルの店舗展開だけでは無理だ。スマートフォン決済や電子マネーなどによる消費者囲い込みが進むことへの強い警戒感もある上、ドラッグストアの台頭など、流通の競争はもはや業種を超えた厳しい異種格闘技になっている。」とSankeiBizなどでも指摘していた。巨大な企業と中小の企業のせめぎ合いが続いている。

そんな中だからこそ地域密着型の店舗やサイトは伸びる要素があると敦は思う。本物のトナカイ、本物のサンタクロースを連れてくればいい。「軽トラでなく、ソリを走らせればいい。本物のサンタクロースをフィンランドのサンタクロースビレッジから招けばいい。子供たちに本物を見せることに価値がある」と敦は、妻の瑠璃子に熱弁した。虚しく聞こえるが、そうしなければ、生き残れないほど、社会はリアルを求めている。

あまりに競争ばかりに気が取られて、本来の顧客サービスに目が向かわない。AIに考えさせていれば済むと思っているマーケティング手法だが、買うのも人間、使うのも人間だ。それを忘れて、ただ、大手のやることに怯えているだけでは、突破口が開けない。顧客のニーズを探るのは、ロボットではない。人間が肌で感じ、人間に伝達することだと敦は思う。

いつか、将来、みんなで仲良く生きていける社会になれば、一番いいと思う。貧しさも豊かさも共有できると信じている。そんな社会になるはずだ。だって人間だもの。敦の未来は、永劫と輝いている。

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