文豪乃冬目創玄

コミック小説のジャンルでデビューしました。登録のメールとPWを忘れてしまいましたので、…

文豪乃冬目創玄

コミック小説のジャンルでデビューしました。登録のメールとPWを忘れてしまいましたので、作り直しました。よろしくお願いします。 続きはコチラ https://note.com/bungo03/

最近の記事

あの頃は若かった

謙也がアパレルに入社した頃は、大卒者それほど居なく、田舎の高校を卒業して、会社が借りた部屋を2、3人でシャアしていた時代であった。丁度、大量にと言っても6、7人大卒を採用した年であった。毎年、一人二人の大卒を採用していたので、人事の採用担当は、早稲田出身の五歳くらい上の男だったし、慶応出身の営業の課長は、親分肌の男だった。 その頃の流行は、企画畑の広告とか、宣伝とかクリエイティブな仕事だった。謙也ももちろん、そっち関係の仕事を探していたが、面接が苦手で最終まで残れないタイプ

    • 童話だけど

      書棚を漁っていた謙也は、有島武郎の「一房の葡萄」を発見した。ペラペラの岩波文庫の本は、童話の美しさを知らしめる作品だった。読んだ印が丸の字でお残されていたが、50年前の記憶は、遠く彼方に行っていた。 女史の先生の配慮で、友だちの絵の具を盗んでしまったことを仲直りに持ち込んだ先生の手柄で、ことなきを得たばかりでなく、友達とも親交を熱くするという話は、素直に感動する。 有島 武郎(ありしま たけお、1878年(明治11年)3月4日 - 1923年(大正12年)6月9日)は、日

      • 純愛の中で人は強くなる

        伊藤左千夫の『野菊の墓』は、15歳の少年・斎藤政夫と2歳年上の従姉・民子との淡い恋を描いている。夏目漱石が絶賛した小説でもある。夏目漱石は左千夫あての手紙で、「自然で、淡白で、可哀想(かわいそう)で、美しくて、野趣があって」こんな小説なら「何百篇よんでもよろしい」と評したという。敦もシンクロしてしまうほど民子が好きだった。主人公政夫がまだ少年のころ、家にきていた従姉の民子との幼い恋を回想したものであり、実話に基づいていると言われた伊藤左千夫の処女小説である。周囲の無理解から清

        • クリスマスイブと不老不死の思い出と

          不老ふ死温泉のタオルが黄ばんでいるのに、タオル棚にある。「黄金崎不老ふ死温泉」は、世界自然遺産・白神山地の麓、日本海に沈む夕陽を一望できる景勝地・黄金崎に建つ一軒宿。海岸と一体化した赤褐色の露天風呂に敦は小学4年の息子と入った。流石に、女湯もあるが、まるでワイルドな露天だから、丸見えなので、瑠璃子は遠慮した。かれこれ14年前のタオルだ。 前日、青森の弘前に泊まって、弘前駅からJR奥羽本線で東能代駅でJR五能線に乗り換え、ウェスパ椿山駅で降りた。列車の到着時間に合わせて送迎バ

        あの頃は若かった

          温泉とラーメンと

          敦と瑠璃子は小田急線に乗って「鶴巻温泉」を目指して、9時48分の快速急行に乗った。車内は、比較的若い人たちで混んでいる。推測するに、学生やフレックスのサラリーマンがか多そうだ。GUの紙袋を提げた黒のワイドパンツにベージュのニットの上に黒のレザージャケットを着た女が、目の前のつり革に立っていた。愛甲石田をこえても、降りないのは、まだまだ、遠くに向かっている。 車窓は、大山を背景に、住宅地を抜けて、畑が広がる。伊勢原に着いた。大山登山の入り口だ。伊勢と付くからと言って、伊勢海老

          温泉とラーメンと

          もう風に時代に移った

          『風の時代』が今日からやってきた。金銭や、物質、権威の『土の自宅』から知性、コミュニケーション、個性の『風の時代』に変わった。2020年12月22日に起こる「グレート・コンジャンクション」と、新たな時代のスタートについて、時代の波に乗るための不可欠なルールを人気占い師の真木あかりが解説した。「風の時代を生き抜く8つの心得」をVogueで語った。 1. フットワークを軽く。 2. 自分がトレンドになる。 3. 対等な関係性をつくれる相手を選ぶ。 4. 自分にキャッチコピーをつ

          もう風に時代に移った

          遅いお歳暮を贈りに実家へ

          駅前で買った「崎陽軒」のシュウマイを持って横浜の実家を家族で訪ねた。初夏まで、腰骨を折って、介護施設に入院していた義母も笑顔で迎えてくれた。一次は深刻な話まで発展した介護治療だったが、奇跡的な回復に遂げ、病院を退院した。介護といっても、要支援2段階・要介護5段階の計8段階に分けられ、段階により使えるサービスや支給限度基準額が変わって来るので、意外に医師の思惑で変わる場合もある。 母は、介護3と認定された。介護3は、基本動作だけでなく全面的な介助が必要な状態で、思考力や理解力

          遅いお歳暮を贈りに実家へ

          キャンプの思い出あれこれ

          お笑い芸人のヒロシとバイキングの西村が、ソロキャンプの達人として、バズビデオに登場した。【極上空間】ヒロシと西村 秘境キャンプ場で極上空間を作り出す!!!と言うタイトルの映像だ。「僕、人がいないところに行きたいですね。縛りがないのが、ソロキャンプのいいところかな。最初は一人でいると動物の鳴き声などが怖かった。一人で来ていると他の人に変わり者と見られた」とYouTubeで百万人も登録者数がいるヒロシが語っていた。一方の西村は、広島テレビでキャンプの冠番組を持っているほどの達人だ

          キャンプの思い出あれこれ

          文豪の香りがする思い出の道後温泉

          2006年7月23から7月25日まで四国、松山、高松に旅行道後温泉に行ったことが日記帳に記されていた。朝の6時40分に家をタクシーで出てANAで松山空港まで行った。8時30分には羽田空港に到着したので、空港内の食堂で朝飯を食べた。全員別々のカレーをたのんだ。息子はビーフ、瑠璃子は野菜、敦はポークと言った具合だ。 11時台の羽田発の飛行機に乗り、松山空港に到着した。空港からリムジンバスで松山市内まで行き、宿泊先のANAホテルで早めにチェックインして、市内見学に出掛けた。実は春

          文豪の香りがする思い出の道後温泉

          ねこ物語

          敦の家には、メスの猫とオスの猫が2匹いる。4年前の五月頃に貰ってきた。貰ってきたと言うより、掴めてもらったと言うのが本当だ。「出来れば二匹欲しいのだけれど」とお願いした。 自動車中古販売店の裏に住み着いているどら猫達がいる。野良猫だ。去勢も避妊手術もしていないので、毎春、十匹位は赤ちゃんが産まれる。「時たま、カラスに攫われるけど、大概は丈夫に生きている。それでも、全部片付くんだよ、不思議と」と店主の笹川悠介は、自慢するように言う。ということは、母猫と父猫は、店の近くで住み続

          小林多喜二の隠れ家

          福元館に泊まった敦は、朝の三時に起きた。毎日、早朝に起きるので、当たり前なことである。「24時間温泉は開いてますので、ご自由にお使いください。露天風呂は9時に閉めますが。それと夜の7時から男女の温泉が入れ替わります」と中居さんが言っていた。恐る恐る深夜の風呂場にタオルと大きめのバスタオルを持って行ってみた。10人以上入れるタイル張りの浴槽があった。毎秒何トンもの温泉が湧き出ている位の勢いで湯口から出ている。細長い浴槽にどくどくと流れる音が心臓みたいに聞こえる。ただ一人で優雅と

          小林多喜二の隠れ家

          近すぎる温泉、家族旅行

          神奈中バスに乗ってほとんど終点の広沢寺温泉を目指した。敦が通った『厚木高校前』を通った。かすかに、正門前の銀杏が見えた。息子も同じ高校だが、感慨はないようだった。バスは乗用車よりも遥かに高い座席なので、見渡せるのがいい。どんどんどん山奥に向かう。本厚木駅前の賑わいが嘘のように、小川が流れ、奥に奥にとバスは進む。途中、リハビリセンターという馬鹿でかい建物の敷地内にバスが向かった。ここで、乗っていた乗客全員が吸い込まれるように降りた。家族三人だけをのせて、バスは、かすかに唸りを上

          近すぎる温泉、家族旅行

          自然公園散歩

          谷戸山という神奈川県立公園が座間にある。座間と聞くとアパートで若い女性など9人の遺体が見つかった残虐な事件を思い出す。そんな事件を思い出すこともないほど、自然がいっぱいな公園だ。敦も瑠璃子も大好きな公園の一つだ。「鴨が今年もいっぱい来ているね。鴨は裏切らない」「なんだか、アマチュアカメラマンがやたら多いんだけど。多すぎじゃねえ」確かに、アマチュアカメラマンが日曜日とあって望遠レンズを持って、押し寄せて来ていた。「今、この公園はちょっとしたバードブームなんですよ」と歩いていた人

          自然公園散歩

          ワクチン騒動

          敦はこんな夢をみた。コロナで窮地に立たされた国民がワクチン投与を望んでいる。保健所や病院にワクチンを求める群衆が大量に押し寄せた。われ先にと、求めるあまり、全ての施設が破壊され、病院などが絶滅の危機に瀕してしまった。まるでゾンビと化した群集は、ワクチンを求めて、闘い始めてしまう。それをテレビやマスメディアが煽る。地獄絵を見ているような光景だ。羅生門の再来のような飢餓と絶望の民が集まる。 そんな時、東京新聞のWEBニュースに『コロナワクチン、歴代の米大統領3氏が接種を表明 国

          ワクチン騒動

          中学生の恋の行方

          濱野京子の小説家「ウィズユー」を読み終えた。中学生の淡い恋愛を通して、重い「ヤングケアラー」の話がメインのお話だ。途中、もっと不幸になるのではないかと心配したが、豈図らんやスムーズに事が運んだので、敦は胸を撫で下ろした。話はこうだ。夜の公園でブランコにぽつんと座っている少女を見た中学三年生の男子、柏木悠人と中学二年生の富沢朱音(トミザワアカネ)が徐々に仲良くなっていくという話だが、高級マンションに住む朱音は、母親が突然病気になってしまい、家事全般や小学2年生の妹の面倒を見るこ

          中学生の恋の行方

          スマホの先の世界

          朝起きると、右手の親指でスマホを開けている敦。「指で認証して、スマホを開く方がいいよ」とソフトバンクの中国人スタッフからスマホを買う時に、しつこいくらい指認証を勧められた。ソフトバンクと言っても、看板だけで、ノジマの社員だと言う。「ノジマのソフトバンクなの」「ノジマからお給料もらってます」なんとも正直な女性からだろうかと、感心した敦であった。その強引な勧めで、重宝している。 敦の家には、スマホが敦の1台しかない。息子は、朝帰りの日に排水溝に落としたまま、契約を解除した。妻の

          スマホの先の世界