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100均スマホレンズでミクロの自然体験

こんにちは、ブンイチ編集部です。

全国的に梅雨入りし、じめじめした季節がやってきました。
自然観察に出かけたいけれど、雨でなかなか遠出しづらい……という方も多いことでしょう。
そんな皆さんに向けて、身近な場所でできる、ふだんとはひと味違う自然の楽しみ方を紹介します。

手軽にできる!ミクロな観察

用意するのは、100円均一ショップで販売されている、スマートフォン(スマホ)につけるタイプのマクロレンズです。

ⅮAISO スマートフォンレンズセット ¥100円 (税込110円)
魚眼レンズ、マクロレンズ、広角レンズがセットになっている。
こちらがマクロレンズ

マクロレンズで見る世界は、どんな感じなのでしょう?

身近なものを見てみる

まずは身近なもので試してみましょう。

じつは、小社の印刷物はとくに印刷にこだわっています。
生きものの細部の特徴まではっきりわかるように、高精細印刷を施しているのです。用意したマクロレンズを使うと、印刷の違いを見ることができます。ちょっと見てみましょう。

小社刊行『美しい海の浮遊生物図鑑』。
書名の通り、摩訶不思議な浮遊生物を美しい写真と共に紹介した図鑑です。
左側は繫体字版(印刷は海外の印刷所)、右側は日本語版。
こちらは拡大前の写真。
こうしてみると特に違いはないけれど、拡大して見てみるとどうでしょう……?

ということで、さっそくこの本の74ページ「スジイカ」の足の先端の部分をマクロレンズで撮影してみました。

-POINT- マクロレンズを使った撮影のポイント

①スマホをクリップではさみ、マクロレンズがスマホの外カメラのレンズにぴったり重なるよう調節します。
②スマホと撮影対象物の距離を調整し、対象物にピントを合わせます。
スマホと対象物の距離の目安は3~4センチほど。
③そのままでも撮影できますが、スマホカメラのズーム機能を使うとさらに拡大写真が撮れます。

スマホにレンズをつけてみるとこんな感じ。
横から見るとこんな感じ。
筆者のしっかりしたスマホケースも挟める丈夫なクリップ。

スマホのカメラにマクロレンズをセットし、誌面をのぞいてみると……

左側が繫体字版、右側が日本語版の比較画像。

なにやら細かい点と、さらに細かい点が見えますね。

これは網点《あみてん》という印刷の濃淡の表現方法で、マゼンタ、シアン、黄、黒の点を敷き詰めて豊かな色彩を表現するもの。網点が細かいほど色の階調が豊かになり、画像をなめらかに表現することができます。

写真は繫体字版と日本語版の同じ写真を拡大して比較したものですが、日本語版のほうが、網点がより細かいことがわかります。

青く見える生きものの写真も、拡大してみると印刷に青以外のマゼンタや黄などさまざまな色が用いられているのは驚きです!

マクロレンズの使い方を確認できたところで、いよいよ外へ出かけてみましょう。

マクロレンズを持って、さっそく外へ!

やってきたのは都内某所の緑豊かな公園。訪れたのは夕方でしたが、花の写真を撮る人たちでにぎわっていました。

なにかおもしろそうなものがないかと散策していると……

らせん状に咲きあがった花を発見。

ネジバナを見つけました。
Twitterでも大人気の、開けた草地でよく見られるかわいらしいランの仲間です。

マクロレンズをスマホにつけて、花の部分を撮影してみましょう。

小さいけれど、花はしっかりランの形で美しい。

遠くから見るとピンク色の小さな花ですが、マクロレンズで見るとしっかりランの花の形をしているのがわかります。この花がさざなみを描くように、らせん状に咲きあがっているんですね。これは感動ものです!
拡大して見てみると花の上半分は濃いピンク、下半分は淡いピンクと、濃淡のコントラストも美しい。しかも、花弁がちょっとキラキラしているようにも見えます。

身近な公園でも、マクロレンズを使うとこのようにかわいらしく、キラキラとした花が観察できるのです。

Twitterでも開花情報がハッシュタグ付きで拡散されるなど、人気の高いネジバナですが、ぜひネジバナ愛好家の皆さんもひとつひとつの花をじっくり観察してみてください。

ところで、しゃがみ込んで道ばたの花や野草を観察していると、道行く人たちから好奇の視線を浴びることがあります。「何を撮っているんですか」と聞かれたら、自分が見つけたマクロの世界を共有し、感動を分かち合いましょう!

続いて、不思議な形の野草を見つけました。


不思議な形の野草。
よく公園で見かけるという方も多いのでは?

虫のように見える黒い点々がとても気になります。
マクロレンズで撮影してみましょう。

ふわふわとした何かが……

拡大撮影してみると、ふわふわとした黒い小さな毛虫のようにも見える何かがびっしりとついているのが見えます。
思わずぎょっとしてしまいました。

なんだろうこれ……?

『身近な雑草の芽生えハンドブック1 改訂版』で調べてみると、これはシマスズメノヒエという植物で、黒いふわふわは虫ではなく、葯《やく》というおしべの一部の花粉をつくる器官であることがわかりました。
筆者は幼少期からこれが小さな虫が集まっているように見え、さわれずにいたのですが、今日やっと謎が解けてスッキリ。

少し場所を変えてみましょう。
公園や道ばたの草むらだけでなく「湿り気のある場所」も、魅力的な観察ポイントになるのです。

適度に水分を含んだ道ばたや……
コンクリートのすき間にも生えるあの植物。

そう、コケです。

マクロレンズで撮影してみると……

ゼニゴケの仲間。落ち着いた緑色。
本州以南の人家周辺や山地の土上に大きな群落をつくる。
平べったく、表面がつやつやしているように見える。

一面にコケの森が広がっていました!

これは謎のコケ。黄色みの強い緑色。
種類は図鑑で調べてもわからず……。コケって難しい。
ふわふわしているように見える。
ハマキゴケの仲間。このコケは鮮やかな黄緑色。
葉が乾くと、両側から内側に巻き込まれる性質があることが名前の由来。
遠くから見ると緑色のかたまりのようだが、細かい小さな葉が集まったものだということがわかる。

思わず時間を忘れて、コケが形づくる不思議な世界に没入!
葉が平べったくてつやつやのコケ、ふわふわとしたコケ、青のり(?)のようなコケと、身近な場所でいろいろな見た目のおもしろいコケを見つけることができました。
ぱっと見では地面を覆う、緑色のもさもさしたかたまりに見えるコケですが、マクロレンズで拡大してみるとそれぞれ葉の色や形が違うことがわかります。

このように、100円均一ショップのマクロレンズを使うだけで、公園や道ばたなどでミクロの自然観察を楽しむことができました。

ぜひ皆さんも、梅雨の季節も身近な場所で自然観察を楽しんでみてください!

都市の街中でよく見られる草花300種の図鑑。
この図鑑を持って、散歩しながら小さな花や実などを観察してみるとまた新たな発見があるはず。

持ち運びやすいハンディサイズで、散歩のお供におすすめ。
身近な雑草の芽生えから開花までが写真でわかる。


もっとコケを知りたい方向け

コケ愛好家のバイブル『コケに誘われコケ入門』のリニューアル版。
コケの体のつくりやコケ100種の図鑑、全国各地のコケの名所、コケを使ったインテリアなど、コケの「識別」から「楽しみ方」まで掲載したガイドブック。


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