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アイリスオーヤマ IKE-D1000T

今回分解をするのはアイリスオーヤマのケトル、IKE-D1000Tです。
ケトルとはいえ温度調節が60-100℃の範囲でできるのが特徴ですね。また一定時間は保温もできます。
とはいえ、電気ポットとは違い筐体での保温効果はないので、温度を決めてお湯を沸かすという使い方をしたい人向けの商品ということになります。

10年前のケトル

昔のケトルはシンプルでした。
・沸騰したら蒸気センサーで電源をオフにする
・倒れたらお湯が流れ出る
というものでした。
最近のものでは、温度調整ができるものや、転倒時に自動で弁が閉じてお湯が流れ出ないようになっている、という機能が付いているものがあります。
転倒時の湯流れ防止機能はもともと電気ポットのJIS規格にて定められていました。また電気ポットは電気用品安全法上の電気湯沸器に含まれているため、JIS準拠していないとPSEの表示ができません。そのため電気ポットではこの機能が付いているものでないと販売ができません。
今回のものは転倒時の湯流れ防止、はついていません。電気ケトルにはJIS規格がないので転倒時の湯流れ防止に対応する必要がないためです。

転倒時の湯流れ防止はタイガーなど一部のメーカーが対応していますね。中国のEMSからOEM品を購入してくるところはこれに対応していないところが多いです。今回のアイリスオーヤマのケトルもOEM品なのでしょう。

中国のケトルなどのEMSはほとんどがEU、USマーケット向けの商品を作っているためです。肌感覚では彼らはコンテナ単位、(ケトルだと5kくらいですかね?)でサンプル品をたいした検証もせずに買っていきます。日本の会社は半年くらい検証をしたうえで1kくらいで買えないか?という交渉をするので、EMSからするとめんどくさいと思われています。また、湯流れ防止は日本独自の機能なのでこの機能をEMSと交渉してこの機能を入れてもらうのはかなり難しいことになります。数が売れればそんなことはないのですが、実際には日本のマーケットは世界と比べるとかなり小さいものになるため日本独自の機能を安い家電に入れるというのは難しいことです。

最近は温度調節ができるケトルが出てきましたが、これはケトルの接点がサーモスタットの信号に対応したものが出てきたためです。
今まではシーズヒーターの2点のみの接点しかなかったものが、これに追加でサーモスタットの2点が追加された接点が出てきたためです。

ちなみに今までのケトルではケトル側はシーズヒーターと蒸気センサー(バイメタルを使います)という構成です。

この下にある丸い金属がバイメタルで、沸騰して蒸気が中に入り込んでくると、バイメタルがこの温度で変形してヒーターの電源を買って木に切ってくれる、という構造でした。

今回のケトルは60-100度まで、5℃刻みで温度を設定することができます。転倒時湯流れ構造はなしです。

ということで今回のケトルの分解です。

ケトル部の分解

まずはケトル部から。
まずは定格ラベルを見てみます。特定電気用品以外の電気用品向けのPSEマークがついています。


水の容量は1Lでヒーター容量は1200Wです。1200Wだと1Lの水を20℃から100℃するのにかかる時間は計算だと5分弱かかります。実際にはほかに逃げるエネルギーがあるから7分くらいはかかりそうです。
日本はAC100Vなので、ヒーター容量が大きなものを使うのが難しいですね。EUだとAC220 Vで、12A流せれば2600Wです。日本だと1200Wがいいところなので、これが日本でケトルがはやらない理由です。1200Wだとお湯を沸かすのに時間がかかってしまいます。

それでも今までは電気ポットを使っていたけど、常時電気を使うので環境に良くない、ということでケトルは売れるようになったと思います。また電気ポットと比べると簡易な構造のため価格が安い、ということも売れている理由でしょうね。

底面のビスを3本外すと簡単に底面が外れます。


アルミの鋳物に一体で成形しているのがシーズヒーターです。これに保護回路として温度ヒューズが2つついています。


温度ヒューズは192℃のものが2個、直接ヒーターに取り付けています。
なぜ2個か?というと温度ヒューズも10万個に1個くらい正常に動作しないものがあるため、です。2個つけておけば温度ヒューズ不良で温度が上昇し続けて発火する、ということはないということになります。2個とも不良の確立はかなり低くなるためです。

サーモスタットは左上のものです。ここで水の温度を検知しつつ、台座側の市の情報を流してヒーターの電源をON/OFFしています。
実際についているものはこれになります。

サーモスタット

この先端が水の中に入り、水の温度で抵抗値が変わるという構造です。

台座部の分解

次は台座部です。
台座部は操作をするためのタッチパネルがあります。また温度表示のための4桁の7セグ表示もあります。
そして裏面には定格ラベルです。
こちらは会社名と原産国、専用品です、という記載のみです。製品としての定格はケトル側に記載をしている、ということですね。

こちらもねじを外します。ゴム足の裏にもいるので合計で6本です。


トップ側には基板が付いています。これを外すと基板にはスプリングが付いています。このスプリングが天板のガラスに接触することで、静電容量のスイッチとして機能をするようになっています。

よくこの手の家電では見る構造です。黒物家電ではこの構造をとることはないですね。信頼性の問題ですかね。こんな設計したら怒られます。

ボトム側には制御基板です。15Aの電流ヒューズがありますね。
あとはケトル側との接点です。

全体ではこんな構成でした。


気になる点

ボトム側からACケーブルが出てくるところですが、ケーブルのブッシュなしで直接筐体から外に出しています。


ふつうはブッシュをつける、やケーブルの外側にチューブをかぶせています。これは屈曲の対策で、こうすることで、ケーブルが根元で左右に曲げられ続けたときにケーブルの被覆がはがれることや、中の芯線が断線することを防止します。この製品では断線の対策が取られていないので、耐久性で不安が残ります。


まとめ

温度調整機能付きのケトルの構造を見てみたくて分解をしました。
以前は接点が2点のものしかなかったのが、今では4点のものが出てきたためできた構造であることが理解できました。



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